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『THE GREATS 美の巨匠たち』と辿る西洋絵画【art】


先日、母と東京都美術館で行われている『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』に行ってきました。

母は美術が好きだった時期もあって、鑑賞しながらいろいろ感想を述べてくれるのでなかなか面白かったです(笑)

展覧会の概要としては、以下の通りです。

 スコットランド国立美術館は、上質で幅広い、世界でも指折りの西洋絵画コレクションを有する美の殿堂です。そんなスコットランドが誇る至宝の中から、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、レノルズ、ルノワール、モネ、ゴーガンなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示します。さらに、同館を特徴づけるイングランドやスコットランド絵画の珠玉の名品も多数出品。それらを西洋美術の流れの中でご紹介します。
<展覧会HP より>

ルネサンス、バロック、ロココと、時代の流れを辿りながら、沢山の作品に出会いました。その中でも、私がハッと足を止めた絵を3つ紹介させていただきます。


①『ファルクホフ城の見えるネイメーヘンの風景』アールベルト・カイプ
Landscape with a View of the Valkhof, Nijmegen ( About 1655-60) ;  
Aelbert Cuyp , Dutch 


この作品は、オランダのネイメーヘンにあるファルクホフ城を描いたものです。ファルクホフ城は、ネーデルラントがスペインに抵抗しもがいた中での、勇気と強さを象徴する存在だそうです。1568年から1648年まで、現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルクに相当するネーデルラントの17州が、スペインに対して起こした「オランダ独立戦争」の時のことですね。カイプは、ファルクホフ城を黄金の光で包み込むことで、この国家運動を理想化しようとしました。
<参照:www.nationalgalleries.org


美術作品を深く学ぼうとすると、世界史が絡んでくるのが面白いですね。

私がこの作品に惹かれた理由は、かつてベルサイユ宮殿の庭園で見上げた、ヨーロッパの広大な空を思い出してしまったからです。

どこまでも続く、柔らかい水色の空と、差し込む黄金の光。

黄緑の芝生がしげる牧場に、羊と牛がいるその風景は絵画のようだった。

見ているだけで、心がのどかになるヨーロッパの空が、とても好きだった。

時間と共に、鮮やかな色彩に色を変える空に、何度も心を奪われた。

特に夕焼けは本当に幻想的なんです。

振り返った瞬間


きっと昔の人たちも、そんな空を絵に残したくなったんだろうな、なんて思いました。日本にいるのにヨーロッパの空を思い出すことが出来る、絵画ってやっぱりすごいなって思います。


②『卵を料理する老婆』ディエゴ・ベラスケス
An Old Woman Cooking Eggs (1618) ;
Diego Velázquez, Spanish 

展覧会の目玉の作品です。ベラスケスがこの絵を描いたときは、まだ18~19歳だったそうです(衝撃)。この作品は、実際の生活から人物と日用品をまさにそのまま絵に写し出す彼の才能を見事に表したものです。道具と織地の質感の対比、光と影の対比の素晴らしい技法はとりわけ、調理されている半熟の卵と数々の家庭用品に活かされています。ベラスケスは、初期時代はこのような台所や宿屋の場面を描いていました。スペイン語では『厨房画』'bodegones'と呼ばれています。<参照:www.nationalgalleries.org


あらゆる物質に、まるで生命が宿っているようでした。特に少年が持つガラスのフラスコの写実性と、老婆が持つ卵と手の丸みに圧倒されました。金属の道具の光の反射が、道具がそこにあることを訴えてきて、たしかに「もの」がそこに存在したのだと伝わってくるようでした。
光と影のコントラストが美しすぎる。ベラスケス恐るべし…


ベラスケスと言えば、『ラス・メニーナス』Las Meninas( 1656) も有名ですね。私もこの絵は何度も見たことがあります。

https://www.museodelprado.es/en/the-collection/art-work/las-meninas/9fdc7800-9ade-48b0-ab8b-edee94ea877f
 この絵は、少し不思議です。中央にいる幼い王女マルゲリータや女官たちはまるで見られているのを意識しているようです。この絵を描いたベラスケス自身も、絵の中から見つめてきます。そして、部屋の奥の鏡にはスペイン国王フェリペ4世夫妻の姿が映っています。つまり、これは国王夫妻の肖像を描いているベラスケスのアトリエに王女と女官たちが訪れた情景であり、わたしたちは国王夫妻の目を通して絵を見ているそうです。ベラスケスは光と影や、人物の視線などの技法を使うことで、不思議な錯覚を生み出しました。
 ゴヤも、「あの絵の前ではわたしたちはまったくの無知だ」と言ったほどの、ベラスケスの最高傑作です。
<高階秀爾『まんが西洋美術史2』p22より 一部言い回しを変えています>


③『田園の情景「愛すべきパストラル」』フランソワ・ブーシェ
A Pastoral Scene ('L'Aimable Pastorale') (1762)  ;
François Boucher,  French

青年が、美しい庭園で眠る女性をこっそり見つめています。まるで古典詩から現れた羊飼いと妖精が、現代的の楽園に連れてこられたようです。ブーシェの田園の作品は、愛らしいカップルが動物と戯れる、牧歌的なシーンを描いたものが多かったです。
<参照:www.nationalgalleries.org


ひたすら甘い…青年の、女性を見つめる優しい愛おしいまなざしも、女性が手に抱える華やかな花束も、のどかな田園も。まるで世界に2人だけ、時間が止まったような穏やかで甘美な作品だと思います。

この作品はまさにロココ時代の作品です。

 前時代の荘厳な芸術に対して、親しみやすく気ままで感覚的なものを重んじているのが、ロココ時代の芸術の特徴です。
 「ロココ」と聞くと、甘く華やかな時代を彷彿しますが、実際はそれだけではありませんでした。貴族が生きる喜びを追い求め、快楽にふけったこの時代は、一般市民の反発と力が強まっていった時代でもありました。(イメージとしては、フランス革命前夜くらいですかね。)
 このように、「ロココ」という言葉の中には、相反する性格の美術や文化が含まれてしまっていることも忘れてはいけないです。

<高階秀爾『まんが西洋美術史2』p72より 一部言い回しを変えています>

なるほど~。私は幼い頃マリー・アントワネットの話がとても好きで、『ベルサイユのばら』は多分100回以上読み返したし、マリーアントワネットの小説はあらゆる本を探して読んで、フランス革命の流れも大体思い出せます(笑)
あの時代の、華やかなドレスや宮殿、装飾、花々は見ているだけで楽しくて、心が躍って、その世界に浸るだけで夢見ることが出来ました。
でも同時に、パンもろくに買えないような市民階級の人々の怒りが水面下で日に日に増していったのは事実で。階級差から生じた対極的な感情と生活を抱えた複雑な時代、それがロココ時代だそうです。


以上、私が気になった作品でした!

鑑賞中、母が「写真があったら絵画なんてなかったんだろうね〜」と呟いていました。たしかにそうかもしれないけど、やっぱり絵画は写真と同じものを映し出すとしても温かくて、想いが込められたものだからこそ、伝わってくる時代背景や当時の人々の訴えも読み取れるのだと思います。


最後まで読んでくださりありがとうございます😊



PS: そういえば、遅ればせながら母の日に弟とピザを生地から作りました😳手順は母に聞きまくりました(笑)いつもありがとうです!🌷


あこ


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