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#36 立花隆から考える庶民の品格

私はプロレスというのは、品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが熱中できる低劣なゲームだと思っている。

立花隆

これを言ったのは作家・ジャーナリストの立花隆です。
「知の巨人」の異名を持ち、2021年に亡くなりました。
私は武満徹を取材した資料を纏めた「武満徹 音楽創造の旅」という本で立花隆という人物をはっきりと認識するようになりました。
件の引用ですが、私はとても共感します。というか、単なる事実だと思います。
プロレスファンの連中からすれば、面白くない発言だとは思うのですが。
立花隆には「わかりやすい形をもった慈悲」が無かったのかもしれませんね。
でも、よく読むと、立花はプロレスファンを直接攻撃はしていませんね。「プロレスは」低劣なゲームである。ですから。しかも低劣と言うことは必ずしも攻撃だとは限らない。うーむ、でも「低劣」という単語は些か強烈過ぎる気もしますね。伝え方が直接的過ぎたのではないですかね。立花よ。
ま、それは置いておきましょう。
ともかく、私は立花の意見はその通りだと思っているわけです。
しかし、蓼食う虫もなんとやら、といいますから、嗜好は人それぞれで、他人にとやかく言われる筋合いも無ければ、言う筋合いも無いです。
私も卑俗な人間です。そういうところから湧いて出て来たような人間です。
高尚でもないし、ハイブローな人間でもないんです。英語どころか、母語の文法すら知りません。それは本文にも滲み出ているでしょうから、言うまでもありませんね。
ですが、だからといって自分が愛するカルチャー(非ハイカルチャ―)を立派なものだ、とは思っていません。
くだらない、しょうもない、垢抜けない、瑣末、そんなものだと思っています。そう思いながらも、愛しているのです。
これが、庶民の矜持であり、品格です。
例えば、好きになった人がブスであったとしましょうか。
あなたはその人が好きなんですから、徹底的に愛します。これ、普通ですよね。
しかし、自分の愛する人はブスである、という事実を歪曲してはなりません。これではただの阿呆であり、傲慢な愚か者です。
事実を知りながら、「それがどうした!」と胸を張って愛の道を行くのが真っ当です。これ、格好よくないですか。まぁ、普通のことなんですけど。
盲目ではない愛もあるのです。
庶民の品格とは、そのようなものです。
もう一つ、喩えをしましょうか。
庶民の品格とは、
「駄菓子を書斎で貪るおじさん」
のようなものです。
彼の好きな食べ物は、年甲斐もなく、駄菓子です。
彼は一見、立派な教養人なんです。齢40-50程度に見えます。
まぁ、実際に教養豊かで知的な人ではあるんです。
でも、好きなものに関しては、寿司とかフレンチじゃないんですね。ラーメンとかハンバーガーですらないんです。
それでも彼は駄菓子のすばらしさを他人に啓蒙などしません。とりわけ自分の子供に対しては。だから書斎に隠れるようにして駄菓子を貪るのです。なんと謙虚な人なのでしょうか。隠れキリシタンのような健気さですね。
それは自分の愛するものが、サブカルチャーだと解っているからです。
サブカルの地位向上を図るなど、愚の骨頂です。下品です。俗物です。
それらは権威から離れたところにあるからこそ良いのです。
身軽なんです。しがらみがないから。それが庶民の武器です。
アングラ気質なのにメジャーに出て、苦しむ人、いるでしょ。あれが典型ですね。目先の利益に目がくらんだ挙句、身を滅ぼすのです。
さて、駄菓子おじさんの話に戻りましょう。
彼は月に一回、駄菓子好きな友達(愛好家仲間)に会って気楽におしゃべりします。情報交換もしているようです。
そうやって彼は自分の嗜好と上手く付き合っています。なんと奥ゆかしく、出来た人なのでしょう。蓼食う虫の品格もここまでくれば高貴の領域に到達している気もします。リスペクト。
いいですか、決してサブカル側の者は権威を欲してはいけません。
権威など持ったら最後です。保守化してつまらなくなって、じきに朽ちます。(昨今では、漫画やアニメが国家とか教育機関に取り込まれていますよね。しっかりと行く末を見届けたいものです。)
それはハイカルチャ―に任せましょう。
我々庶民は、ハイカルチャ―を享受しつつ、そこから受けた影響を庶民のフィールドで展開するのです。
私のnoteでも何度か言っていることですが、身の丈に合っていることが肝要です。
ドビュッシーだって上流に憧れた挙句、いざ上流社会に出入りするようになると、幻滅しているじゃありませんか。
彼が好きなのはファンタジーとしての貴族文化なのではないかと思います。

プロレスの話から随分と遠いところまで来てしまいました。
何故ドビュッシーに行きついたのでしょう。錨を下ろさないとこうなりますね。
私はよく漂流してしまいます。少し気を付けた方が良いのかもしれません。
それで、プロレスは庶民のカルチャーですよね。そこがいい。
私は「くだらないけど、でも、それでも好きなんじゃ!」の精神で徹底的に愛してほしいと思うのです。
だから、立花隆に何を言われようが目くじらを立てずに放っておきなさい。彼の言うことは事実です。しかし、自分のプロレス愛を曲げる必要は一切ないのです。マイペースに行くのが大事ですよね。
そして、ハイカルチャ―よりの物事も立ててあげましょう。彼らを下手に攻撃するといずれ駆逐されますよ。基本的に庶民の方がずっと弱いのですから気をつけましょう。
ゆとりが大事です。大人の風格です。粋ですね。

先述した立花隆の引用は、個人的に結構気に入ってまして、これからも時折引用するかもしれません。あれ、結構使えるんですよ。
とまあ、毎度脱線の連続ですが、今回はこれにて終了。ほなね。

※本記事は個人の感想です。

偉そうなことを言うだけ言って、保険をかけておくこの浅ましさよ。

記事の作成に結構時間が掛かりました。ふぅ。

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