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『設計者』 キム・オンス

何と壮絶で、哀しく、かっこいい男だろう。

レセン(来世)という名を持つ主人公は、韓国の裏社会に生きる暗殺者。本書は、この暗殺者レセンを主人公にした連作短編集である。
飄々としてユーモラス、そしてハードボイルド。
ぐいぐいと読む者を引き込み、読後には熱い余韻を残す。

暗殺者、そして国家や企業から秘密裏の暗殺を請負う設計者。登場するのはいずれも計り知れない闇を抱えて孤独に生きる、裏社会の住人である。
図書館は暗殺者の拠点地であり、ペット火葬場では密かに暗殺された遺体を処分している。
修道院前のゴミ箱の中に捨てられていたレセンは、図書館の「狸おやじ」に引き取られて、暗殺者として育てられた。

11の短編小説が、レセンの過去と現在を物語る。

自分が殺されることを知りつつレセンをもてなす老人との静かな一夜、かわいらしい女工との束の間の幸せな暮らし、「床屋」と向き合う場面での固唾を飲む緊張感。
どのドラマも、鮮烈なイメージに満ち、悲しくも美しい。

一つ一つの物語をそれぞれ忘れがたいドラマに仕上げながら、連作による一つの大きなドラマに練り上げているのは、作者の手腕である。

ストーリーテリングの素晴らしさに加えて特筆すべきは、人物を魅力的に描き出す筆の見事さだ。
心を封じ込めた狸おやじ。
恐れられる刺客である床屋。
美しくあわれな幼い娼婦。
強い意志を持つ天才ミト。
皆、孤独であり、皆哀しい。
強大でいまわしいうねりの中で、あるいは強硬に、あるいは諦観して、生の火を灯しきる彼らの姿は、一人残らず光っている。

我々はどんなに不快で胸クソ悪くとも、自分が足を踏み入れている土地から結局は離れられない。金もなく、食べていく道が他にないからでもあるが、それだけが理由ではない。我々がこの胸クソ悪い場所に戻ってくるのは、その不快さに慣れているからだ。あの荒涼とした世界に一人で投げ出される恐怖より、恐怖の大きさほどに深く広がる孤独より、不快さに耐える方が簡単だからだ。
どうして世の中がこんなザマか知ってる?狸おやじやハンザみたいな悪人のせいで?彼らに仕事を頼む黒幕のボスのせいで?違う。数人の悪人だけで、世の中を動かすことはできない。世の中がこんなありさまなのは、私たちがおとなしすぎるからよ。何をしても世の中は変わらないと思い込んでいる、あんたみたいなしらけた人間のせいさ。

彼らの言葉と生き様には、飾りも言い訳もない。
まさにハードボイルドである。