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外資系企業HRBPのリアルなタスクリスト

人的資本経営の一環として、最適配置・サクセションプランニングや人材開発・キャリア開発支援、中途(キャリア)採用&オンボーディングなどタレントマネジメントやポジションマネジメントを実行しようとするとビジネス現場でのHRBPの必要性が高まるため、最近、HRBP導入についてご相談を頂く機会も多くなりました。
その際に、検討材料の1つとして、外資系企業(日本法人)のHRBPについて、その役割・業務・組織体制や会議体・育成方法等を紹介することが多々あるため、今回は役割・業務に焦点を当てて改めて整理してみました。
以下は、自身の複数者での実経験や現在の外資顧客企業のHRBP皆様の役割・業務をベースとしています。

1.タレントストラテジー策定・実行管理
・担当事業部の事業部長&リーダーシップチームとビジネスプラン実現のための事業部の課題分析とタレントストラテジー(*)を策定
・事業部のタレントストラテジーもベースとして、事業部内の各部署や職種の課題分析とタレントストラテジーを策定 (例: 営業部門の人材戦略)
・上記タレントストラテジー実行のためのアクションの詳細設計と実行・管理
(*)タレントストラテジーの構成要素には、最適配置や(キー)ポジションマネジメント、組織設計、人材開発、サクセションプランニング、人材獲得、組織カルチャー醸成、DE&I、エンゲージメント向上等を含む

<以下についても同様に、担当事業部について、事業部長・リーダーシップチーム、担当事業部の管理職と共に策定や実行します。また、本社の各CoEと連携して実行します。>

2.ワークフォースプランニング(人員計画) / ヘッドカウント管理
・担当事業部の人員計画 (予算HC) の策定
・グローバル本社へのHC増の交渉・HC獲得/HC削減への対応
・計画と現実の人材ギャップ (質・量) に対するアクションの設計と実行・管理
・HCの予実ギャップの定点確認と更新 (入社・退職・休職・復職予定を加味したHC動向の確認)

3.組織変更対応
・現状組織の課題整理/新組織構造の設計 (*)
・社員の異動案の作成
・社員へのコミュニケーションプランの作成・実行
(*)グローバルルールでスパンオブコントロール (管理職1人当りの部下人数) や組織の階層数に制限がある場合には留意

4.ポジションマネジメント
・ポジション新設・廃止の管理 (*)
・各ポジションのJD管理 (特にポジションの新設・変更時)
・キーポジションの設定
(*)ポジションの新設・廃止については、グローバルでの承認が必要 (専用の申請・承認プロセス/ワークフローがあるケースあり)

5.タレントプールマネジメント
・各種のタレントプール (人材プール*) への人材の追加・削除等の管理
・プール人材の育成加速やフォローアップ
(*)タレントプールの種類には例えば、後継者候補、ハイポテンシャル/ファストトラック人材、若手の有望人材、ポジション別の異動候補者・異動希望者、保有スキル別の人材、社外の採用候補者等あり

6.サクセションプランニング / タレントレビュー
・サクセションプランニング/サクセションマネジメントの制度設計・実行
・タレントレビュー(*)の調整・参加
・後継者候補の育成策の設計・実行 (優先配置・研修・メンタリング等)
・後継者候補の育成・配置状況のモニタリング
(*)評価調整会議と同様に、各部署(最小)単位・部門単位、そして事業部全体と段階的に実施するケースあり

7.タレントアクイジション (採用・オンボーディング)
・人材獲得プランの作成 (採用か異動か外部リソース活用か等を検討)
・求人票の作成支援 (*)
・書類選考・面接選考の実施 (面接官の1人として参加) (*)
・他事業部からの人材獲得の調整
・オンボーディングプログラムの設計・実行
・入社準備・入社後のフォローアップ
(*) 採用業務そのものはHRBPではなくタレントアクイジションチームが実施

8.異動・配置
・定期異動案の作成・調整・申請
・個別異動案の作成・調整・申請
・社員への異動コミュニケーションのフォロー
・事業部内の社内公募の企画・募集支援・実施(*)・異動調整
・事業部横断の社内公募の実施支援・異動調整
・社内兼業等の施策の企画・実行
(*) 事業部横断の社内公募については本社人事にて実行

9.パフォーマンスマネジメント (評価)
・事業部独自の評価項目・基準の設定 (グローバル/全社制度の範囲内で)
・評価プロセスの進捗管理・督促等
・評価調整会議の調整・参加
・最終評価の確定
・管理職に対する評価者研修やガイド作成・提供

10.人材開発・キャリア開発支援
・事業部独自の人材開発・キャリア開発支援施策の設計・実行
・グローバル・日本法人全社の人材開発プログラムへの事業部社員の参加調整
・上司・部下による1on1 (育成面談・キャリア面談)のサポート
・キャリアプラン内容の分析

11.従業員エンゲージメント向上/EX向上
・エンゲージメントサーベイの進捗確認・督促
・エンゲージメントサーベイ結果のフィードバック・分析
・事業部としてのエンゲージメント向上アクションの設計・実行
・各部署のエンゲージメント向上アクションの設計支援・実行支援
・事業部のパーパスや組織ビジョン・ミッションの策定 (ワークショップ等)
・各部署のパーパスや組織ビジョン・ミッションの策定支援 (ワークショップ等)

12.DE&I推進
・グローバル/日本法人全社のDE&Iアクションの事業部展開
・事業部独自のDE&Iアクションの設計・実行 (*)
(*) アクションの1つとして、上記タレントレビュー時に、女性タレントについて選定・育成方法のディスカッションを行う場合あり

13.事業統合・売却
・事業部に関係する事業統合や売却・分社化等がある場合は、日本法人の人事領域の責任者として実行
(*)事業売却の場合、契約条件によっては対象事業部のHRBP自らも売却先に移ることになる場合あり

14.事業部内個別プロジェクトへの参画
・その他、事業部内の組織横断の個別プロジェクトに参加 (例: 営業力強化プロジェクト等)(*)
(*) 例えば営業力強化であれば、営業プロセス再構築や営業ツール開発・データ活用等の中で、HRBPは人事領域を担当し「営業担当者の最適配置方法」や「評価基準」「育成体系」「将来の営業マネジャー候補の選定・育成方法」の設計・構築等を担当

15.全社施策の展開/提案
・グローバルや日本法人人事による制度・施策の担当事業部内への展開
・グローバルや日本法人本社人事への担当事業部の状況・課題・希望等の情報提供や提案
・グローバルや日本法人本社の人事プロジェクトや全社プロジェクトへの参画

16.グローバル・本社人事からの問合せ対応・提出依頼対応
・グローバルや日本法人本社人事からの各種問合せ・指示への対応

17.事業部トップの相談相手
・事業部トップからの人事・組織領域に関する相談対応
・事業部トップへの人事・組織領域に関する相談・提案

18.マネジャー個別サポート
・マネジャーからの各種の問合せ・相談対応
・マネジャーによるチームマネジメントのサポート
・マネジャー自身のキャリア等に関する相談対応

19.社員問合せ対応
・各種の人事制度・ルール等に関する問合せ・相談対応 (*)
・キャリアやその他労務関連に関する相談対応 (*)
(*) 社員からの問合せは本社人事で設置された人事制度等に関する「問合せ専用窓口」の活用が原則 / またはマネジャー経由での問合せ

20.労務対応
・各種の労務問題への対応

HRBPのリアルな課題

上記に記載した20の主要業務について、理想で言えば戦略的な業務に注力すべきなのですが 、現実にはNo.18-20の個別対応に非常に多くの時間を取られているのが実態と言えます。
ただ、そのNo.18-20を通じて現場をサポートしているからこそ、現場からの信頼を得られ、かつマネジャーや社員の"生の課題"を把握できるという側面もあります。

また他には、個別事業部最適にならないようにHRBP間の連携方法や、担当事業部に関する全ての課題対応はHRBPが独力で対応せざる得ない中でのHRBPの組織的なサポート体制、本社人事CoEとの連携方法 (CoE側の意識含む)、HRBPの人選やキャリアパス設計、HRBPの労働時間適正化等も課題となることが多くあり、HRBPの組織体制など各社で対策の工夫がなされています。

HRBPを導入する際は、役割・業務だけでなく、これら課題への対応方法についても十分に検討の上で設計することが必要となります。

続編「HRBPを活かす組織になるために 〜自社へのHRBP導入のための6つのデザイン〜」に続く


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