介護職に職業病はある?身体的・精神的な5つの症状と予防法を解説!
介護職の職業病1:腰痛
2016年に公表された「介護福祉士の腰痛に関する研究」によると、介護福祉士174名のうち、130名(74.7%)が腰痛の自覚症状があることが分かりました。
業務の性質上、以下のような腰に負担がかかる動作が多く、腰痛が発生しやすいのです。
・長時間同じ姿勢をとる
・前屈や中腰など無理のある体勢をとる
・入居者の体を持ち上げて車椅子に移す
対処法
速やかに医療機関を受診しましょう。症状を把握し、対策方法の指導を受けます。足の痛み・しびれに加えて「足の力が入りづらい」「安静にしているのに痛い」などの症状がある場合は、深刻な疾患の可能性があります。
完全に治るまでは養生し、無理して業務を続けないようにすることが重要です。
予防法
同一姿勢を長時間続けない
介護労働では前かがみ・中腰での作業や、腰のひねりを長く保つ作業が頻繁にあります。適宜休憩をとる、他の作業と組み合わせるなど、同一姿勢を続けないようにしましょう。
立ったまま入居者を抱えるシーンでは、なるべく体の近くで支え、腰の高さより上に持ち上げないようにしてください。
背筋を伸ばしたり後ろに反らすと悪化する恐れがあります。
ストレッチを習慣にする
休憩時間などに、一定のポーズでゆっくりを体を伸ばし続けてみましょう。
腰痛予防には簡単な運動が効果的です。体を動かすことで筋肉の強化や柔軟性の向上に繋がります。
介護職の職業病2:肩こり
自分よりも体格の良い入居者を抱え上げて移動させたり、入浴介助をしたりと、肩にも過剰な負荷がかかりやすいです。
入居者の日々の記録を残すなど、長時間のデスクワークも一因になります。
肩こりが重症化すると慢性的な痛みだけでなく、頭痛や吐き気を引き起こし、仕事に支障をきたす可能性があるのです。
対処法
■なるべく毎日湯船につかる
温熱療法は慢性の肩こりに有効です。
患部に熱を加えることで血行が促進され、筋肉の緊張を緩めてコリや痛みを和らげます。
ゆっくりと肩まで温まれば、疲労回復や精神的なリラックス効果も得られるでしょう。
■ラジオ体操を取り入れる
ポイントを意識しながら行うことで、肩こりや腰痛の解消に繋がります。
ラジオ体操第一の3番目の「腕をまわす運動」で肘をしっかり伸ばし、手で大きな円を描くように回してください。肩周辺の筋肉を動かすことがポイントです。
予防法
ウォーキングやヨガを習慣化しましょう。1日20分間程度、週に2~3回が目安です。
肩こりは体を動かさないでいると悪化していきます。運動することで、緊張で収縮した肩関節の可動域が拡大し、血行不良が改善されるのです。
特に、酸素を取り込みながら行う有酸素運動をおすすめします。血流が良くなり、体の隅々まで栄養が行き渡るようになるでしょう。
介護職の職業病3:腱鞘炎
腱鞘炎とは、指の動作に深く関わる腱鞘(けんしょう)に炎症が起き、指や手首に強い痛みや熱感が発生する症状のことです。
介護職や美容師など、手先をよく使う職業の人がかかりやすいと言われています。
悪化すると、以下のような深刻な症状が出る恐れがあります。
・親指側の手首が腫れ、強い痛みが出て力が入らなくなる
・指の曲げ伸ばしに違和感が生じ、動かなくなる
対処法
■テーピングする
テープで手を固定し、指や手首をなるべく動かさないようにして炎症を抑えます。手を使わなければならないときは、反対の手で行う、適度に休憩を挟むなどを心掛けましょう。
■外用鎮痛消炎薬を使用する
薬局などで腱鞘炎の症状を伝え、部位や状態に合わせた薬剤を選んでもらいましょう。特にシップやテープ剤が貼りにくい部位なら塗り薬がおすすめです。
予防法
■指のマッサージやストレッチ
手の甲に向かって、指を一本ずつゆっくり反らします。
反らしすぎないようにし、2セット行いましょう。日頃からコリを溜めないようにすることが重要です。
■1~2時間に一度は手を休ませる
腱鞘炎の主な原因は指や手の酷使です。
こまめに休憩を取り、安静にさせることで未然に防げます。
介護職の職業病4:不眠症
夜寝つきが悪くなかなか眠れない、眠りが浅く疲れが取れない、朝早くに目が覚めてしまうなどです。
不眠が続くと、日中の眠気・注意力散漫・疲労蓄積・体調不良などが起こります。特に介護施設で働く職員は、夜勤・早出・遅出などの不規則な勤務形態により、生活リズムが乱れやすいです。
対処法
■太陽光を浴びる
光を浴びてから14時間後に眠気が生じてくるため、起きてすぐに浴びましょう。
太陽光などの強い光を受けると、メラトニンというホルモンが分泌され、体内時計を調整してくれます。
■寝る前にリラックスする
ぬるめの湯船につかり、好きな音楽をかけてリラックスしながら入浴します。
心身の緊張がほぐれるうえ、半身浴は副交感神経を活発にさせ、睡眠の質を向上させるのです。
予防法
■休憩時間を利用して昼寝をする
10~15分程度でも大丈夫です。
前日の晩に眠れず仕事に集中できない、眠くて注意力が疎かになっている場合、短時間でも眠ると脳の疲労解消に効果があります。
■就寝1時間前に入浴する
睡眠障害の原因の一つが、体温が高い時間帯に眠ることです。
体温が下がってくるタイミングで深い眠りにつきやすくなるため、入浴で体温を高め、低下する頃に就寝しましょう。
■寝る前にスマホを触らない
就寝2時間前には触るのをやめて、寝る準備に入りましょう。
パソコンやスマートフォンのブルーライトは、体内時計を狂わせて睡眠の質を落とします。
介護職の職業病5:意欲の低下
「燃え尽き症候群」など、一生懸命熱意を持って仕事に励んでいた人が突然意欲が低下してしまう状態です。
次のように献身的な介護職員ほどエネルギーが切れてしまい、燃え尽きる恐れがあります。
・業務時間外でも入居者の生活について考えてしまう
・いつも親身になって入居者の声に耳を傾けている
・誰にでも笑顔を欠かさない
働く意欲が低下すると仕事にやりがいを感じられなくなるため、離職の可能性が高まります。
対処法
自分の役割を明確にすることです。
真面目で一生懸命に働く人ほど、入居者の苦悩や生活、対人関係などを自分のことのように考え、強く思い入れしすぎる傾向があります。
その結果、心的ストレスを増加させてしまうのです。
介護職員の本来の仕事は、入居者の生活のサポートです。
気持ちに寄り添う姿勢は大切ですが、直接問題を解決できる立場ではありません。
仕事の範囲や役割を線引きするよう心掛けましょう。
予防法
心身を休める時間を増やします。
十分な休息をとる、趣味に夢中になるなど、リフレッシュして仕事のことを考える時間を減らしていくようにしましょう。
働く意欲が著しく低下している場合は、自己判断で体調を悪化させないためにも、医療機関の受診がおすすめです。
まとめ
介護職には腰痛や肩こり、意欲低下など、さまざまな身体的・精神的な職業病が存在します。
兆候を感じたら無理をせず、適切に対処することが大切です。
一生懸命仕事に励むのは良いことですが、長く仕事を続けていくには働き方の改善や自身の体への思いやりも欠かせません。
ぜひこの記事を参考にして、職業病を未然に防げるようにしましょう。