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噛み砕いて
あと1ヶ月足らずで、同じ街に住み毎日のように遊んでいる友達と、国さえも離れてしまう。早く日本に帰りたかったはずなのに、正直今は自分自身が帰りたいのか帰りたくないのかよく分からない。日本の友達に早く会いたいし家に帰りたいという気持ちが偽りでないからこそ、なおさらイタリアでできた友達との別れが悲しいし悔しい。留学1ヶ月目の辛かった時期くらい、気持ちがグラグラしてる。
昨日、友達とGenovaという海辺の街へ行った。旅行中はずっと楽しかったはずなのに、帰りの電車の中で本当に唐突に、悲しくなった。
私たちはこの1年、すぐにとは言わないけれど時間をかけて仲良くなった。でもあと1ヶ月もすれば私たちは別々の国で別々の人生を歩むんだ。今後会うことだってできるけれど、明日遊ぼうよって言って遊べる関係にはきっと戻れない。彼の人生から私の居場所は無くなり、私の人生からも彼の存在は少しずつ薄れていってしまうのだろうか。今後もう会う機会が無くなる友達との1年を、私は私の中でどう落とし込めば良いのかが分からない。
この一年で築き上げた関係は良くも悪くもこの一年で終わり。あと1ヶ月で、みんなそれぞれの国に帰るんだ。あと1ヶ月で、留学前の環境にみんな戻る。まるでイタリアで築いたものが嘘だったかのように。友達も、家族も、全部留学前に戻る。この留学期間がまるで私の人生の延長線上から外れた位置に存在していたような気持ちになる。
でもこのイタリア留学は確かに存在していたし、そこで色々悩んで考えたのも私だ。この1年間で感じたこと考えたことは少しずつ咀嚼していければ十分なのかな。今はまだ飲み込みきれないから。
イタリア留学で、自分が自分であることを認められたし、人と違う行動をすることに対する恐れが少なくなった。私にとってこのイタリアでの1年は、予想していたよりも大切で温かい思い出に溢れたものになったと思う。派手な留学ではなかったけれど、何十年後かに思い返して、ちょっと懐かしくなって泣くくらいの温かい記憶。これから先の人生でちょっとずつ噛み砕いて、その意味を見出していこうと思う。