報われなくても
振り向いてくれない相手を想い続ける。
王の妃として、夫を陰で支える愛されることのない王妃。
主人公の名前がタイトルの短編漫画『イシス』。
灼熱の国の恩恵を受けられない体質、白髪に赤い眼をしたアルビノの白い娘。
口から白い精気を吐き出し、死者を蘇らせる不思議な能力を持つ。
その能力を誰にも知られることはない、形だけの王妃。
寝所にやって来ることのない王を待ち続けるイシス。
時は1万2000年前。
その国には謎の疫病が流行っていた。
王に、イシスはアドバイスをする。
国中のネズミを捕え、焼き殺すようにと。ネズミの異常発生のため、国中に疫病が流行っていることを知っていたイシスからの忠告。
この忠告のお陰で、国中の疫病がピタリと止み、王への称賛が高まる。
イシスにお礼を言う王。
イシスの人生で、ただ一度、王が振り向いてくれた瞬間だった。
生きている間、王にすべてを捧げたイシス。
彼女は持てる不思議な能力を、王に知られることなく、王のために使う。
その不思議な能力を宿す髪の毛を、イシスは切らず、染めることもしない。
王の命令でも、これだけは従わないイシス。
しかし、この能力を使うたび、髪は抜け、若さを失っていく。能力は若さと引き換えに与えられたもの。
イシスの最期。
最も印象的な、彼女の姿が若返っていくシーン。
最期まで、振り向いてくれない夫の名前を呼び続け、報われない愛を生涯貫いたイシス。
秋の夜長に読みたくなる、切ない恋の物語。