たった一度の訪問マッサージ
初めてマッサージを受けたのは、小学校低学年の時。
真夏の昼下がりのこと。
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毎年のことだが、寒くなってくると、足をつったりすることがある。
夏にも1ヶ月ほど、左肩から二の腕にかけて痺れたことがあった。
処方された薬を服用しつつ、様子をみているうちに、いつの間にか完治していた。
それは、帯状疱疹とも違う鈍痛。
初めてのマッサージ体験は、小学校が夏休みの時の、祖母の自宅での施術。
私の両足のO脚の治療にと、いつの間にか祖母が訪問マッサージを依頼したのだ。
そのマッサージ師は、祖母世代のおばあさんだったが、腕が良いと評判だったらしい。
マッサージを依頼すると、自宅まで来てくれる訪問マッサージ師だった。
出勤時にいつも履いていた靴で足を痛めた祖母が、そのマッサージ師を自宅に招いたのがお世話になるきっかけだったそうだ。
ネットのない時代、祖母がどういう伝手でその人を知ったのかは不明。
とにかく、祖母自身が何度か施術を受けるうちに、足が徐々に回復していったとの事で、私にも施術を受けさせる事にしたらしい。
因みに、父と叔父も、そのマッサージ師の施術を体験済である。とにかく悲鳴を上げるほど痛かったとの事。
一度の施術で懲りた叔父に至っては、それ以来「今日、あのマッサージ師が来る。」と聞くや否や、お帰りになるまで物置に籠っていたそうだ。
そして迎えた施術の日。
南九州の真夏の昼下がり。
やって来た訪問マッサージ師のおばあさんは、私にお菓子の箱を下さった。その日は子どもの施術という事で、わざわざ用意してくれたのかも知れない。
祖母がスイカを切り、しばらく談笑した後、いよいよ施術が始まった。
時間にして30分程度だったと思われる。特に痛くはなかった。足のすべての指を引っ張られたことだけは憶えている。子ども相手だったから、手加減してくれたのかも知れない。
果たして効いたのかどうか、たった1回の施術では良く分からない。
とにかくそれが、断片的に記憶の片隅に残っている初めてのマッサージ体験だ。
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それから数年後、突然訃報が届いた。そのマッサージ師のおばあさんは、交通事故で亡くなったという。
多くの人の身体をほぐし、癒してきたであろう施術。
大人になった今こそ、もう一度受けてみたい。
その人の施術を受けることはもう出来ないけれど、寒くなったきたこの頃、急に思い出したあの夏の、初めての施術のこと。