生きるとは?~映画『生きる LIVING』~
先日、やっとのことでチケットを入手し観た映画『生きる LIVING』(2022年 イギリス映画)。
これは、ヘッダー画像の日本映画『生きる』(1952年)をリメイクしたもの。
日本版を見たことがある人には、きっと懐かしい作品。
判で押したような決まりきった毎日を30年間過ごしてきた主人公が、余命半年と知って初めて、『生きる』とは何かを模索していく物語。
お役所という組織の中に長くいるうちに、夢も希望もすり減らし、残された時間を知って『生きているうちに何かしたい!』と急に思っても、どうして良いか分からない主人公。
酒場で出会った小説家に連れられ、コツコツ貯めた貯金を使って夜の街に繰り出すが、そこに彼が求めるものはない。
早くに妻を亡くし、男手一つで育て上げた息子も、今では家庭を持って遠い存在。
相談できる人もなく、昼間の街をただ彷徨っていると、役所の同じ課で働いている若い女性に偶然出会う。
転職希望で、屈託のない彼女の中に、『生きる』ヒントを見つけ出そうとするが…
年齢が高くなるにつれ、教えられることは少なくなる。
時に嫌われても、自分から進んで学びにいく姿勢の大切さ。
そして、自分よりずっと年下の人から学ぶことは、往々にしてある。
「課長さんも、何か作ってみたら?」
若い彼女の何気ない一言が、主人公の背中を押す。
その言葉にヒントを得た主人公。
最後の仕事として、子どもたちや地域住民のための公園建設にすべてを捧げる。
ストーリーは単純だが、物語を彩る登場人物たちの個性豊かな表情、言葉で表せない複雑な感情等、画面を見るだけで伝わってくる多くのシーンが印象的な旧バージョン。
そして、旧バージョンを現代風に上品に仕上げたリメイク版。
比較して観ると、より作品の奥深さが見えてくる映画史に残る名作。
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