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異性の友達と一緒にサウナに入るか。

よく一緒に温泉に行く女友達がいる。

いくつか年下のその女友達とはもう何年も友達をしている。いつも温泉の入口で「じゃあ」と言って私は男湯に、友達は女湯とそれぞれ別の湯に入り2時間後に集合する。

それはもちろん楽しくもあったのだけれど、お互い雑談好きなのでせっかく温泉に行くのに数年間ずっと別行動というのがもったいなく思い始めていた。そんな矢先、彼女から「〇〇市にプライベートサウナができたから一緒に入りに行かない?」と言われた。私は二つ返事で頷いた。

プライベートサウナとは平たく言うと「貸切サウナ」のことで、サウナだけでなく小さな浴槽やTV、そしてリラクゼーションスペースがあったり飲食可だったりする温泉版グランピング施設のようなものだ。

受付でバスタオルなどなど各種アメニティをもらい、私達は2人で一緒に大きなコンテナのようなサウナ室に入った。

数年間ずっと友達をしているとはいえ、どちらも異性愛者の男女が、2人きりで、密室で、謎のポンチョで、3時間サウナと温泉に入るのだ。何もないほうがおかしい。

が、私たちはきっちり3時間、ただただ純粋にサウナを楽しんだ。たくさん話し、テレビを見ながら話し、サウナで心身を整えた。お互いをただとても仲の良い友達とだけ思いあっているのがすごくうれしかった。友達っていいなと思った。

部屋を出た私達は「ここのプライベートサウナ最大4人までみたいだから、男の人同士はちょっと手狭だけど女の子4人だったら楽しめそうだね」などと言いながらお会計に向かった。

お会計を済ませ、エントランスを出る間際に彼女が「あの受付の人、ぜったい私達のことカップルだと思っていたよね。あいつら、ぜったい何かしてやがったと思ってそうだよね」と言い、私も「まぁ普通はそう思うよね」と言って笑った。世の中は日々アップデートしていて、男女の友情も色々な形が体現しやすくなった。

そう思ってお店のドアを開けようと思った直前、次の時間帯の人たちと鉢合わせした。

女の子2人に、男の人1人の3人組だった。男の人は、なんというか、とてもギラギラしていた。上手く言えないのだけれど、「やってやるよ!」という雰囲気がギラギラ出ていた。

私達は彼らとすれ違いながら「あの3人、ぜったい何かするな」という、受付の人と同じことを思った。

先程まで「男女でサウナに入る=何かあるわけではない」だとか、世の中は日々アップデートしているだとかのたまっていたのに、2人とも、あの3人は絶対何かあんなと思った。

「3人とはとんだ強者達だね」と女の子が言った。

そんなことはない、あの3人はただの友達の可能性もある。と言いたいところだが、2人ともそうではないと確信していた。実際に対峙してみないとわからない雰囲気というものがこの世には確かに存在するのだ。

後日私たちはまたプライベートサウナに行き、Netflixを見ながら笑い、たくさん話した。世界は今日も平和だった。

ーー余談だが、「アップデート」とか「ローンチ」とか元々わかりやすい日本語があるものをわざわざ英語に変換する世の中の風潮にも置いていかれないようにしよう。今回はダイバーシティ&インクルージョンのエッセイを書いたのだから。インクルージョンのほうは、なぜだかもうあまり誰も使っていないけれど。かわいそうに。

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