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東京の人が優しすぎて怖い。
東京が優しすぎて怖い。初めて観光に来たけどみんな親切すぎる。と三鷹駅から井の頭公園への夜道の散歩中、隣で東京案内をしてくれている、昨日知り合ったばかりの女の人と話しながら戦慄していた。
私は近場以外の旅行回数が少ない。地方に住んでいるので今回の3連休の東京旅行が、実質初めての東京観光だった。
東京に引っ越した友達やメディアや色んな人の体験談などで、東京はとにかく怖いって聞いていたけれど、真逆でびっくりした。かなり混雑した電車内では席を譲り合っていたし、駐輪場ではやさしい気遣いを見た。落とした物を拾ったらちゃんとお礼を言ってくれるし、道を譲ったら、ひょこっと頭を下げてくれる。
特に新宿駅は、行く前は多くの人に「絶対に道に迷うよ」と言われていたので身構えていたら、おや?と思わず来た場所を間違えたと思うくらい普通にわかった。案内が壁に書いてあるし。
でも途中から、ちょっと怖くなってきた。あれ、話に聞いていた場所と全然違う。ここって本当に東京だよね?
極めつけは、初日の夜にひょんなことから知り合った女の人に東京に来たわけを話すとーーゆくゆくは東京に住もうと思っているのでどのあたりが住みやすいか下見しに来たーー案内しますよと言ってもらえた。全く機能していないインスタだけ交換して半信半疑で翌日とても安全そうな集合場所に行ったら普通にいた。えっ、怖い。
ぼったくりの可能性もあると気をつけていたのに、その人は(その人自身の安全もたぶん考慮して)大通りや某スタバのような道や場所にしてくれた。そして、私が行こうと思っていた場所場所をけっこう丁寧に案内してくれた。
夜になり、安全面を考慮し三鷹駅前のなんてことのないチェーン店で夕食を食べた。私が「折角なので井の頭公園付近を散歩しながら吉祥寺駅に行って、そこから新宿のホテルに帰ります」みたいに言うと、「わたし吉祥寺付近に住んでいるのでそこまで一緒に歩いてもいいですか?」と言われた。
ついに怖いことが起こるかもしれない!と身構え、Googleマップで念のため、井の頭公園を通る一番安全なルートを検索したが、その人は普通にその道を通ってくれた。怖い。
駅に着く間際、その人は「あおさんがよければ、あおさんに安心できそうなお店を決めもらって、そこでちらっとだけ何か食べて解散しませんか?」と言った。
私は夜も遅いからと言い、とてもとても丁寧にお礼を言って別れた。
ーー多分だけど、もしそこでご飯を食べる選択をしていても怖い何かは起きなかった気がする。単純に「東京は魑魅魍魎がはびこるとても怖いところ」とそこここで聞いていたから、何かひとつくらい怖いことが起きないと安心できない謎の心理状態になっていて断ったのだった。
最終日、新宿から山手線に乗って浜松町でモノレールに乗り換えたときも、みんながちょこんと座ってくれたおかげで席に余裕ができて途中から座れた(下手な地方のほうが、遠慮したり大股で座る人が多かったりで案外座りにくいのだ)。
推測というかほぼ事実に近い確信として、平日のラッシュ時とか怖い場所にいけば普通に何かあるのだろう、性差も絶対ある。それに、わかりやすく怖い部分を出さない高次な悪があるのかもしれない。だけど今回は見なかったし気づかなかった。
「東の都」と特別視していたが、〇〇県✕✕県みたく、そこにいるのは匿名化されていない豊かな人たちだった。そして優しかった。めずらしくとても住んでみたくなった。
あと、これは本当に余談なのだけれど、「ひょんなことから知り合った人と〇〇へ行く」みたいな「ひょん」って実際に起こるんだなぁと思った。初日の私の格好はライトグレーのスウェットのパンツに黒の丈の長いTEATORAのアウターで、その人はライトグレーのスエットの上にHYKEの黒のレインコートで他人なのにカップルみたいだった。たったそれだけのことで、距離が近づくのが面白かった。
何にせよ、楽しい下見だった。みなに幸あれ。