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『たのしかったよー』

家の近くの高校の前を通り過ぎたとき、
高らかに響いた憂いと喜びと照れに満ちた声。

先週末は多くの学校で卒業式が行われていたようだった。
胸に刺した花。

学校の周りの空気はやわらかくあたたかな空気にふくらんでいてね。

私が通った道すがらに、声が聞こえたのだ。

『楽しかったよー』

って。

同時に、高校時代の友達の声が私にも聞こえた。
駅のホームのこっち側とあっち側で

「愛してるよー!」

って叫び合ったあの時。
一緒にいてくれてありがとう。
お前がいてくれたから、
なんとか生き延びれたぞ。

ありがとうと、ごめんねと、
どうしようもない淋しさを絞り出した言葉がそれだった。
駅のホームとホームの向かい側。
あちらとこちら。
次いつ会えるのかなんて、あの時は想像もつかなかった。

この日のために、

彼らも「旅立ちの日に」を練習したんだろうな。


飛び立とう。
未来信じて。



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