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ラマダン期間中のおすすめ料理 by ニューヨークタイムズ紙

世界のクオリティーペーパーとして名高い米ニューヨークを拠点とするニューヨークタイムズ(NYT)紙。デジタル対応でも新聞業界の先端を走っており、世界じゅうでデジタル版の読者が増え続けている。

読者の地域的拡大で、コンテンツのバラエティーも加速しているようだ。私が注目したのは、イスラム教徒向けの料理レシピコンテンツの拡充だ。今月はじめから始まったイスラム教の断食月ラマダンに合わせ、一日の断食終了後の食事(イフタール)や、断食を開始する日の出の前の食事(スフール)向けのレシピ記事を多く掲載している。当然、イスラム教徒の現読者あるいは将来の読者に向けて発信されているコンテンツだ。

私はイスラム教徒ではないし、料理は得意ではないが、写真を見ているだけで楽しい。今やイスラム教徒が暮らす地域は欧米も含め、世界中に広がっている。伝統的にイスラム教徒が多く暮らす、いわゆる「イスラム圏」は、東はインドネシアやマレーシア、西はモロッコや西アフリカまで広大な地域だ。そうしたさまざまな地域で、他文化とも混ざりあいながら、育まれてきた料理は多彩だ。

そのNYTラマダン食レシピに掲載されている料理の中から、5皿を抜粋して紹介する。イスラム圏の食文化の多様性を知っていもらいたい、というのが、この記事の主な趣旨である。

①羊肉のミートボールとコラードのドルマ

コラードはキャベツの一種。羊肉やブルグルに、ニンニク、クミン、ミントなどのスパイス・ハーブを加えて成形、フライパンで焼く。一部はゆでたコラードの葉で巻き、一部はミートボールのままで、交互に串刺しにする。

ドルマは、中東で広く食べられている料理。地域によってはマハシとも呼ばれる。ナスやズッキーニの中身をくりぬいて、中にご飯やブルグル(ひきわり小麦)などの具を詰めて蒸すなどして食べる。

②ブロッコリーやきのこを乗せたラバーシュのピザ

ラヴァーシュは西アジア地域で食べられている薄焼きパン。上のレシピは、まるでピザのようにトッピングしてある。ゆでたブロッコリーをマッシュルームとともにオーブンで焼き、緑野菜も加えて一緒にをラバーシュにのせる、というもの。

もはや、伝統的な食べ方とは一線を画している。ちなみに下の写真は、イランで食べた「アーブグーシュト」という料理と一緒に供されたラヴァーシュ。こちらが伝統的な食べ方。要するに西アジアで食事に必ずといっていいほどついてくる、あの「ナン」である。

イランでラヴァーシュは朝飯で食べることが多く、そのままはちみつやバターなどをつけて食べた。のしイカのようでもある独特な食感で、繊細な味だった。アルメニアが本場という説もあるようだ。

③羊のタジン

タジンは、北アフリカでよく食べられる、三角すい形のふたを持つ鍋で、さまざまな食材を蒸し焼きにしたもの。野菜と肉の水分封じ込めることで、両者のうまみの相乗効果を生み出されるという素晴らしい料理。

NYTのレシピは、子羊を玉ねぎとともにオーブンで焼き、さらにレモン汁やトマトペーストなどで作ったジュースを加えてタジン鍋などで蒸し焼きにするというものだ。

④焼きナス、ヒヨコ豆添え

似た料理をアルジェリアの首都アルジェのレストランで食べたことがある。メニューには、「タジン」の一種と書かれていた。

NYT掲載のレシピでは、薄切りにしたナスにオリーブオイルなどをぬってオーブンで焼く。よく炒めた玉ねぎにトマト、ひよこ豆などを加えて煮込み、ナスにはさみ、さらに松の実をふりかける。

⑤イラク風レンズ豆スープ、ミートボール入り

羊ひき肉に玉ねぎ、パセリ、パン粉を加えてくるみ大に成形したミートボールをオーブンで焼く。レンズ豆をやわらかくなるまで煮込んだスープに極細パスタを加え、さらに煮込み、レモン汁をかけて仕上げる。

1960年代に米国に移住したイラク人一家のレシピだそうで、首都ワシントンのイラク系レストランで供されていたこともある料理だという。イラクの家庭の味なのだろう。

以上、5皿を紹介した。どんな印象ですか? イスラム教徒のしかも、断食月のメニューだけに限定しては惜しい、すばらしい料理だったと思います。NYTには、他にもさまざまなラマダンメニューが掲載されている。

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この記事が収録されているマガジン「この広い世界を知るための10皿」は、世界のさなざまな地域の多様な食文化を、「10皿」で紹介するのがコンセプトです。

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