スタンダップコメディは文化人類学であり、地政学。- 笑いながら学ぶ
経験に勝るものはないのではないか。
そう思いながら今、自分は広告という仕事をしています。
どんなに才能があっても、それは経験以上のものは絞り出すことはできない。
基礎、下地があってこそ、アイデアや発見を生かすことができる。
脳の仕組みでいうと、知識でいうところの前頭葉と後頭葉の関係性みたいなものです。
前頭葉=アイデア、クリエイティブ性
後頭葉=知識、記憶の学術
この2つが組み合わされることで人間はクリエイティブになれる。なぜなら、後頭葉の中に蓄えられた知識を前頭葉が「いかに使っていくのか」操っていくから。
そこからふと、感じました。それって、とてもスタンダップコメディに近いのではないか・・・。と。
例。突然ですが、実際にニュースで国内で目にすることと、実際の現地のギャップ、どれくらい感じたことがありますか?
普段、何気なくテレビでのニュースや、インターネット、Twitterで報道というものを見ていると、あたかもそれが世界の全てであると思いがちです。
特に、日本国内では。
しかし、世界では「体験してみないとわからない」「この目で見ないとわからない」ことがたくさんあるんです。
海外の有名フェスティバルに日本のアーティストが出演し、盛り上がっ悪という報道がされていても、実際には1部の「外に目を向けた音楽好き」だけが熱狂していたり、
誰も知らなかったアジアのラッパーが、同じ土俵で世界と勝負していて、現地のティーネイジャーを熱狂的に支持していたり。
TwitterなどのSNSを追いかけていると、実際にはたくさんの現地のつぶやきがタイムラインに流れてきたりして、あたかもそれが全てなのではないか。
と、情報の正確性を確認せずに「いいね」を押してしまったり、RTして拡散してしまいがちです。
最近なんて、来年のフジロックフェスティバルに再結成するRage Against The Machine が出演するのではないかというフェイクポスターで湧き上がりましたね。
やっぱり、人間その瞬間のパッションには負けてしまうのかなぁ。と。
それでも、自分で全てを見に行くことは、時間的にも、金銭的にも難しい。
ここ数年でいいな、と思った本で、「世界まちかど地政学 90カ国弾丸旅行記」という本がありました。
これは、作者の藻谷 浩介さんが、「実際の現場はどうなのか?」ということを、自分の足を使って現地に赴き、報道されていることと、自信が現地を歩いてみて体感し、目撃した現実のギャップを
1冊の本にまとめたものです。
とにかく行動されている物量の数が凄まじい。90以上の国を訪れ、歴史的な観点から地理上を分析し、そこで行われている「今の生活」を語り尽くす。
自分の足を使って、経験的に語ること。そのリアルさをあたかも自分がその土地を訪れたかのように語るここ最近での自分的名著だったりします。
日本のスタンダップコメディアンに清水宏という演者がいます。
彼は、スコットランド、ロシア、メキシコなど、実際に現地に赴き、現地の言葉で1人、壇上に立ち、「笑い」で勝負をする。
そこまでなら、ただの海外ツアーで終わることでしょう。
しかし、そこはスタンダップコメディ。旅行記とも、日記とも、フリートークとも異なります。
きちんとした「ネタ」として成立し、劇場まで見に来た観客に「現地の様子、人々の暮らし」を感じさせながら、笑いに昇華することで2時間の公演として成立させる。
でも、それだけであれば、普通の思い出話で終わることでしょう。
しかし、スタンダップコメディというお客様からお金を頂き、何かを持ち帰ってもらう作品に変えるには、大切なことがあるとここ数年自分はスタンダップコメディの世界に触れて思いました。
「社会で起きている出来事を、演者の視点のフィルターを通じて、ありのままに話しつつも、観客が知らないことを発見してもらい、新しい視点を持つことができる時間」。
これってとても高度なことなんです。
アメリカで人気のスタンダップコメディアンによる「アジズ・アンサリの“今”をブッタ斬り!」なんてまさにそう。
SNS社会、現在のアメリカや不穏に感じる世界を軽快な笑いで伝えながら風刺していく。
11/25の月曜日に彼は下北沢で、メキシコに公演に行き、スペイン語で現地の学生やレストランの観客とぶつかる体当たりの公演を行なった報告会を開催しました。
ここで、驚いたことがあります。まず、道中で遭遇した出来事だけでも、普通ではいかない異国の地です。当たり前だけど、面白い。
しかし、「より、自分が現地の姿をイメージできると、1つ1つのエピソードは面白くなる」のです。
落語を例え話にしてみると、古典落語でも噺家の話術で、自分たちは江戸の街中の出来事を想像しながら笑うことができますよね。脳内イメージ。
彼が公演の最初に行なったことは、「慣れ親しんでいる英語や日本語とスペイン語の言葉の作りの違い」でした。
例えば、日本語は、「私は●●をしました」で終わります。英語も「私は●●をします」となります。
しかし、スペイン語は「それが私に●●をさせます」と表現するのです!
簡単な例でいうと、「私はパンが好きです。」
英語では、
I like bread.
そのまんまですね。だって、「私はパンが好きなんですから」
しかし・・・スペイン語では少し違う。
A mi me gusta el pan.
意味は「パンが私に好きを与えます」
これって、自分じゃなく相手じゃんか!!!と率直に感じました。
彼は公演の冒頭で、その慣れ親しんでいる英語や日本語との違いから「なんとなくイメージしているスペイン人の性格、特性ってこの言葉の違いからくるのでは?」という印象を観客に与えることで、その後現地で起きる数々のエピソードをより「ああ、そんな言葉の文化に触れていればこうなるよね!わかる!」と観客自身にまるで現地に行ったように「自分化」させてしまったのです。
そうしたら後は、独壇場です。現地で起こる信じられないようなエピソード、人々との出会いをまるで僕たちは「自分が清水宏になってその公演旅行をしているかのような」体験をさせてくれるのです。
大体の意見や感想は、語り手のバイアスが入るので、「誰かの感想を聴いている」ことになりがちです。
しかし、頭でこの言語の作りからの国民性の違いを植え込まれることで、圧倒的なリアリティを持ちながらエピソードを想像することができる体験をさせてくれる。
これが単なる旅行記ではなく、「表現としてのスタンダップコメディ」なのではないかと感じることができました。
もちろん、道中、ありえない出来事がガンガン起きるので、そのエピソード1つ1つを取っても面白すぎた。
そうなんですよ。自分がディレクターとして参加しているインコさんのスタンダップコメディでも、同じで、
ただ話を聞くのではなく、笑いながら新しい発見を持ち帰ることができる。しかも、教養があればなおさら面白い。
例えば上記のインコさんの場合は、「日常で誰でも<あるよね!>という出来事を彼自身の特殊フィルター」によって「確かに!」「気がつかなかった!」という新しい視点を与えてくれます。
それがスタンダップコメディが知的な笑いとして海外のエリートも楽しんでいる理由の1つなのではないかと感じました。
もし、そんな世界を体験してたければ今後、日本スタンダップコメディ協会では年末、年明けにかけていくつか公演があります。
忖度なくそれぞれの視点で語る、「大人の本音」で笑いながら年を越して、少しだけ知識をもらって、新年も笑い始めてみませんか?
12/30,31
『年忘れ!スタンダップコメディ・ネクスト Fes.』
会場:下北沢楽園
2019年12月30日(月)
1st. 開場13:30 / 開演14:00
2st. 開場17:30 / 開演18:00
2019年12月31日(火)
1st. 開場11:30 / 開演12:00
2st. 開場15:30 / 開演16:00
司会:清水宏
<30日(月)1st.>
ウエストランド井口浩之
居島一平
藤田記子
ぜんじろう
清水宏
<30日(月)2st.>
入江雅人
ナナオ
たかまつなな
シュガーのり
ラサール石井
<31日(火)1st.>
中津川弦
小心ズ・ヤノミ
レ・ロマネスクTOBI
かもめんたる槙尾
ぜんじろう
<31日(火)2st.>
コラアゲンはいごうまん
長井秀和
与座よしあき
永田正行
清水宏
料金
【全席自由席】
前売:4,000円/当日:4,500円
※11/15(金)10:00~
チケット取扱
【チケットぴあ】
Web:https://w.pia.jp/t/standupcomedy-shimokitazawa/
(Pコード:498-866)
【ローソンチケット】
Web:https://l-tike.com/standupfes/ (Lコード:35148)
Tel:0570-000-407 (オペレーター対応10:00~18:00)
店頭:ローソン・ミニストップ店頭Loppi
【イープラス】
Web:https://eplus.jp/standupcomedy-next/
お問合せ
【ニッポン放送
エンターテインメント開発部】
Tel:03-3287-1111 (平日11:00~17:00)
「笑門!スタンダップコメディ五福星」
2020年1月6日(月) 紀伊國屋ホール
18時半
松村邦洋・茂木健一郎・中村 中・ぜんじろう・清水宏
キノチケットカウンター
店頭販売10:00~18:30(新宿駅東口・紀伊國屋書店新宿本店5F)
https://www.kinokuniya.co.jp/
チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/supc20200106/
Pコード 498-627
ローソンチケット
https://l-tike.com/standup/
Lコード:33820
0570-000-407(オペレーター対応10:00~18:00)
ローソン・ミニストップ店頭Loppi
イープラス
https://eplus.jp/standupcomedy16/
Confetti(カンフェティ)
http://confetti-web.com/standupcomedy202001