目を閉じて、街をさまよっていた。こう言うと人は嗤うが、確かに歩き回っていたのだ。足は街であり、腕は空であった。星は薄い布団をかけて、まばたきすることなく眠っていた。雨のにおいがした。雨。濡れたいと思いながら、靴底をぐちゅぐちゅ言わせていたが、しずくが落ちてくることはなかった。月が遠くで布団を濡らしていた。人々はうつむいていた。あるいは光る手元を見つめていた。喋っていた。誰も彼も、足が速かった。私だけが一人、ひどくのろのろしていた。積もっていた大気は生ぬるかった。何度も何度も、足首に風を感じた。剥げたガードレールの向こうの枯れた水路には、ビニール傘の持ち手が、持ち手だけが潜んでいた。だが、街灯を浴びながら密やかに天を仰いでいたのはそれだけではなかった。そう。私もまた、枯れた水路を行きながら、あごを上げていたのだ。それから、車のホイール。私の頭は傘の持ち手であり、私の肺は車のホイールであった。白と銀。私は街を漂っていた。声をかけられることを怖れながら、声をかけられることを希いながら。私は街を、街としてさまよっていた。そのうち、あふれ出る汗で震えが止まらなくなった。耐え切れずにまぶたを開けば、私は街ではなくなり、うろつくこともやめていた。まったく歩けなくなったのだ。

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