トマト仕事

 青いトマトを、赤く熟させる仕事をしていた。

 手にしたトマトは硬くって、指が青ざめるほどひんやりとしていた。それを地面に落とし、拾い上げてはまた落とす。砂や緑やコンクリートに触れた部分は、少しずつ少しずつ、色の温度が上がっては、まぶしくやわやわになっていく。

 あっちのもお願いと言われて、やせた水の流れに肌を浸し、両手で持ち上げれば、今にも形がなくなってしまうんじゃないかってほど、ぶよぶよに熟していた。

 トマトの数は少なかった。トマトを扱っている人はもっと少なかった。

 熟したトマトがどうなるかは知らなかった。赤くなれば、手からふっと消えるから。

 自分の仕事はただ、青いトマトを落としたり、水に浸したりして、赤く熟させることだった。

                               (了)

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