はじめて鬼になった夜は更けて。
場所は運河沿いの倉庫だという。
かなり近づいているはずなのに、
近づけないのだ。
辿り着きたいのに辿り着けない場所。
もしかしたらずっとそこに行きたかった
はずなのに、たどり着けないことでまるで
存在していなかったかのように、幻になる。
倉庫では、彼が待っているらしい。
情報はひとつだけ。
左眼だけになった<初めての鬼>
右眼はいつかの戦いでなくしてしまって
いまは左の眼だけが頼りらしい。
逢魔が時が時を進めて、ほとんど黒い闇に
包まれる。
デーモン笹ケ瀬は、<初めての桃太郎>が
今日こそは訪れてくれることを信じて
じっと待っていた。
倉庫の窓からは運河が見える。
さっきそこに、桃が流れ着いた。
なにかの予兆のように流れ着いた。
その桃を彼は大事にとっておいた。
まだあたらしいから、彼と分け合えるかも
しれないと思いつつ。
デーモン笹ケ瀬は外の気配に耳を澄ませて
いた。
アイパッチがずれていないかを確かめる
ために久しぶりに鏡の前に立っていた。
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