チャリンチャリン太郎の一生。#毎週ショートショートnote
僕のほんとうの名前は
茶 倫太郎だ。
なのにみんな苗字と名前を
ごちゃまぜにしてフルネームで呼ぶ。
チャリンタロウって。
茶君とか、なぁ倫太郎とか呼ばれた
試しがない。
ある日、乗り捨てられた古い自転車に
乗っていた。
タイヤが軋んで、金属系のチャリンって
音が二度ばかりした。
すると、そこらへんにいる人たちが
ほとんど一斉に振り返ってみた。
すごい形相だった。
Twitterではちょっと都市伝説のように
#チャリンチャリン太郎 が人気になっていた
らしい。
ぼくはいっさいSNSをやらないので
なにも知らなかった。
太郎という名の人がとある自転車に乗ると
車輪から金目の音がする。
その水琴窟のような音を偶然聞いた人には
幸福が訪れるとかなんとか。
いつしかチャリン系と呼ばれた。
そしてぼくが辿った運命はなにかと
いうと。
おしりからサドルが離れなくなって、
街から街へと走り続ける羽目になっていた。
幸せの音を奏でるチャリンチャリン太郎
としてなぜか一生を過ごした。
(409文字)
🚵今週もショートショートに挑戦してみました。
楽しんで書いてみました。
お題は「チャリンチャリン太郎」でした🚵
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