アンダーグラウンドに恋してた。
地下って、聞くとなんだかわくわくする。
ほんとうは、日陰とか選んで歩きたいタイプなので、階段をのぼって、
のぼって、おひさまの近くへ🌞っていうよりも。
階段をおそるおそる降りていってくだってくだって。
湿ったひんやりとした空気が漂う地下にこころ惹かれてしまう。
昨日、トンネルのことについて書いたばっかりなのに。
舌の根も乾かぬうちに!
だから、いつだったかイタリアでワインセラーを案内された時も、
ここに住んでしまいたいって思ったし。
ワインセラーの入り口が我が家の玄関だったら面白いのにと、
夢想した。ばかですね!
後、地下都市であるカッパドキアも大好きです。
あの住居は最終的に住みたいぐらいです。
じめじめはどきどき。
あらゆる風にさらされていない、通気のなさみたいな物の持つ
風情に、とことことこっと、ついてしまいたくなる。
大阪に暮らしていた頃は、夜になると好きな人とふたりで、キタや
ミナミにある地下にあるお店ばっかりを巡っていた。
地続きの時間の延長線上にある空間じゃなくて。
ちょっと次元の違った錯覚に陥りそうな地下の世界に佇んでいるお店を、
贔屓にしていた。
見知らぬ階段をくだるところから、そのお店全体へのアプローチは、
始まっているから。
扉をあけるよりももっと前からドキドキは、カウントされていたりする。
その頃好きだった人が教えてくれた。
パリかどこかの地下の話。
旅番組で紹介されていたらしいのだけれど。
酔っている最中だった彼は、どこの街だったか忘れたよって言いながら、
とてもそのことを伝えたい熱意が伝わってきて、わたしも酔った頭で
聞いていた。
その町では、地下を探検できるようになっているらしく。
階段を下ってゆくと、地下で見知らぬ人に逢うこともしばしばなのだとか。
地下深くで、見知らぬ誰かと出会うってどんな感覚なんだろうと、思いを巡らしたりした、その時の印象がどこか頭の隅に残っている。
楽しい気持ちで地下に潜っていたら、やぁって感じだろうし。
悲しい気持ちの時だったら、もしくは寂しい気持ちなら。
ちょっと心が微動してしまうかもしれない。
それで。
その人が酔ったまま教えてくれたのは。
地下でばったり、向こうから歩いてくる人と会うとね、すれ違う時に、自分の持っているものを何でもいいから、分け合うっていうのがマナーなんだって。
そして、彼はまだうれしそうに話す。
テレビで見ていたら、地下の探検ツアーの案内役の男の人と、探検していた女の人もお互いの持っているものを交換してたんだよ。
って。答えを早く聞いてほしそうだった。
男の人がランプ、ちいさな灯りがついていたものと、女の人はサンドウィッチを分け合ってたよ。
って。
その話、わたし好きって思ったし。
その話をしたくなってるTさんのこともすっきゃわ~ってなった。
じぶんの持っているものを、分け合う。
今でいうシェアですね。
地下で何かをシェアするっていう精神が。
地下という閉ざされた闇に近い場所で、シェアしたいものが、静かに放たれて受け止められるっていうことに、密やかなまっとうさを感じた。
Tさんの話を聞いていた地下にあるお気に入りのピアノバーで。
あの空間でわたしはなにを彼と分け合っていたんだろうって。
広告の仕事などで、その人から教えられたり叱られたりすることが多くて、
とにかく吸収することに夢中になっていた日々だった。
たぶん分けあう分量はわたしのほうがもらってばかりだったかもしれない。
どこか見知らぬ地下の中に、みえないシーソーが一台あったとして。
その右端の板と左端の板が揺れている。
やがて左端の板が地下の底につきそうになる映像が浮かぶ。
左端の板に乗っているのはTさん。
Tさんがわけてくれた、時間や思いや言葉の重さのせいで床すれすれに、
板が地下ちかくに触れそうになってるそんな情景。
わたしはあのバーで、Tさんの話を聞きながらそんなことを思っていた。
薄暗い地下にほのかな光が灯ったみたいな感覚に包まれていたことだけを
今思い出している。
旅したいです。あの日訪れた旅した場所をまた旅したいです。そんな気分になってきました。わ、秋ですね🍂
今日は、
MY FIRST STORYさんのアンダーグラウンドです♬
ではどうぞお聞きくださいませ。
地下の道 壁の冷たさ知る あの夜は
手のひらに わけあうなにか ぽつりぽつりと