見出し画像

タイムラインにあなたは、いない。

「大きなカゴをひとつ用意して、そこに好きな物を入れておくといいよ。
じぶんの好きなものがわかるから」

それは彼の言葉なのかなって思って、わたしは気に入りましたこの言葉。

そんなふうに手紙に書いて送ったら、それは吉田昌太郎さんの言葉だよって教えてくれた。

吉田さんの言葉が載っている雑誌を教えてもらった。

古い雑貨屋さんのような不思議なお店を営んでいるらしい彼のファンの方からの手紙の束がページに掲載されていた。

色とりどりの異国のスタンプも押してあって、知らない人の顔写真みたいに見えた。

無造作にガラスの中でひしめきあっている、むきだしの手紙をみていたら、
その店主である彼が、ていねいに労わるように時間を過ごされている日常を
垣間見たみたいで、ちょっと反省した。

そしてなぜか、手紙と共に酒井駒子さんの特集されていた絵本雑誌の『MOE』と、
『くまとやまねこ』が送られてきた。


酒井駒子さんのことを嫌いなひとはいないんじゃないかっていうぐらい、彼女の描く線はあたたかい。

『MOE』酒井駒子さんの特集ページをめくると、プライベートの部屋が写し出されていて、リビングなどにも箱が置いてあった。

それは、靴の入っていた四角い箱みたいで、たくさんのレースがひとつずつ帯リボンをかけられていた。

<レースって道というか、地図みたいにみえませんか?>

ってインタビュアーの方に投げかけられた言葉にわたしも、はっとする。

そして、もう一度箱の中のレースをじっくり見てみる。

画像1

細編み、長編みの道や、フラワーモチーフの道がみえてくるみたいで、おもしろかった。

箱の中。

行き止まりがあるから安心していられる世界。

あの箱の中が果てしなかったら、どうしていいかわからなくて、海の中に潜ったみたいな気持ちになりそうだ。

あの頃、わたしはそんな気持ちでいたんだと思う。

時折、縦も横も高さもちゃんと限りあることをまっすぐ求めてしまうのは、
たぶん心が弱っていたんだろう。

言えなかった言葉がひしめいていて、

言いたいことはじぶんの口ではっきり言いなさい!

って叱られていた母の言葉が甦ったりする。

雑誌のページを読み進めていたら、酒井駒子さんが小学5年生まで住んでいたのは、その頃わたしが暮らしていた関西の北摂あたりだったことを知って、ふしぎな親近感を覚えた。

彼がどうしてこの本と雑誌を送ってっくれたのかわからないけれど。

それからほんとうに、彼と会いましょうってことになっていたのだけれど。

彼と会う少し前に彼の身にあまりうれしくない検査結果が出たことを知った。

そして、そのことはずいぶん後になって彼のブログからも知ったのだけれど。

あの頃ほんとうにみなさんには不義理をしてしまいましたって、綴られていた。

そしてわたしは家庭の事情で引っ越しをして、おのずと音信は途絶えてしまった。

わたしたちは、恋人同士でもなかったし師弟関係でもなくて。

いきさつはこんな感じだ。
まだ弟と仲が良かった頃、弟の愛読書は彼の本のファンだったこともあって、思い余ってわたしは彼に手紙を書いた。

そうしたら、嘘みたいに返事がきたのだ。

とても好きですあなたの手紙って言われて、こういうやりとりしていきましょうって言ってくれた。そしてそのことは弟には秘密にしていた。

それからなんどもなんども手紙を交わすそんな関係がつづいていた。

実際に会ってしまったらなにかが、崩れ落ちてしまいそうだったから、わたしにとっては、その関係だけが続くことが心地よかった。

あれからずいぶんと時間が経った。

そしてついひと月まえぐらいのこと。

ほんの出来心だった。

まさかね、いないよね。

って、彼の名前をこのnoteで検索してみた。

いた。いるよ。いてはるよ。

ってなって、思わずフォローのところをポチっとしてしまった。

彼のnoteのホームをみると、その更新頻度は恐ろしく間遠かった。

それでも、いつか読んでくれるかもしれないとかってちょっとだけそんな思いに駆られていたのも事実。

ある日、フォロワーさんの投稿がいつものようにタイムラインに流れてきた。

その中に彼のがあった。

今は病気も癒えたのか、元気そうな顔写真が写っていた。

すこし年齢は重ねたかもしれないけれど、とてもすてきなおじ様になっていた。

海外や日本を行ったり来たりコロナまでは、していたらしいことが綴られていた。

読んでみた。

紛れもなく彼の言葉だったけれど。

あの頃手紙を交わしていたころみたいには、なにも感じられなくて。

あの熱はとくべつな時期にしか与えられなかったものなのだと知った。

そして、彼の隣には。

自分の好きな物が何かを知っているようなすてきにカッコイイ女の人が一緒に写っていた。

恋していたのかどうかもわからないのに、ひとつ恋を失ったみたいな気分になって、わたしはその人のフォローをそっと外した。

フォローをはずすとき、なんともいえないちりちりした思いになるんだなってことをその時知った。

うわ!書いてしまいましたわ。

今日も長い長いひとりごとにお付き合いいただきありがとうございました!

今日の

#聞きながら書いてみた

は、MONGOL800の「小さな恋のうた」です。ではどうぞお聞きくださいませ♬

箱の中 消えてゆく声 いれておくから
水際から そっと離れて ゆれてしんじて

いいなと思ったら応援しよう!

ゼロの紙 糸で綴る言葉のお店うわの空さんと始めました。
いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊

この記事が参加している募集