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なぜあの本はベストセラーになったのか。

ビジネス数学教育家・深沢真太郎です。珍しく読書感想など書き綴ってみようと思います。3分もあれば全文お読みいただけるでしょう。

知人でもある浅田すぐる氏の最新刊『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク文庫)を書店で購入し拝読しました。

数年前にベストセラーになった作品の文庫化だそうです。実際にお会いしたこともありますが、私に似て(?)清潔感ある爽やかな好青年です。以下、浅田さんとお呼びします。


先に結論を伝えます

この記事における「結論」を先に伝えておきます。

世の中の指導者と呼ばれる人たちはぜひ『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』を読んでみて欲しい

です。


現象には必ず理由がある

私の口癖です。現象には必ず理由がある。ビジネス人としての私をよく知っている方は「またか」と思われるでしょう。それほどよく使う言葉です。

企業の業績が落ちていることも、人材が育っていないことも、退職者が増えてきたことも、これらすべて必ず理由があります。

お腹が空くことも、最近シンプルな服をよく着るようになったことも、顔に吹き出物ができたことも、これらすべて必ず理由があります。

そしてビジネス系の本が売れることやビジネスセミナーが存在することにも、必ず理由があるのです。原因と結果を結びつける論理を構築する。これもまた立派な数学的思考であり、数学を使うという動作であろうと思います。この記事はそのような構造になっていることをあらかじめお伝えしておきます。


2人の共通点

ところで、私と浅田さんには共通点が3つあります。

①ビジネス系の教育活動をなさっていること
私が登壇してきた研修やビジネスセミナーの主催者に「これまでどんな研修をやってきましたか?」とお尋ねすると、かなりの確率で「浅田すぐるさんの紙一枚」という返答がきます。ああやっぱり、というくらいに(笑) 活動領域が近く、かつやっている内容も近いものがあるのだろうなと思います。

②著作で「整理」について言及していること
これはどうでもいいことですが、私も今月『そもそも「論理的に考える」ってどうすればできるの?』(三笠書房)という文庫を出版しました。ほぼ同時期に出版し、書店でも近いところに置かれているようです。それ自体は本当にどうでもいいことですが、重要なのはどちらも「整理」がキーワードになっていること。実際に拝読したうえで、「ああやはり近い領域の方だな」と思いました。

③「動作」にこだわっていること
教育者にもいろんなタイプがいます。理論を大事にする人。教え方にこだわりがある人。実務経験を語ることに価値を置いている人。どれも存在していい。しかし私は「動作に落とし込む」ことにこだわる教育者です。ましてビジネスパーソンは、どれだけ物事を知っていても、どれが実際にできるようにならなければ意味がない。そういう価値観で教育活動をしています。そして今回の浅田さんの著作を拝読したところ、やはり同じような感覚をお持ちであることがわかりました。キーワードは「動作」です。

前提はこれくらいにして、『トヨタで学んだ「紙一枚!」にまとめる技術』(サンマーク文庫)の感想を少しばかり綴ることにします。

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「動作」に落とし込むこと

印象的だったのが「動作」という言葉です。具体的に身体のどこをどう動かすのか。そこまでしっかり落とし込み、「知っているだけではなくできるようにさせる」教育手法をとられていると感じました。

例えば「健康に気をつけましょう」という言葉があります。この主張に意義を唱える人は少ないのではないでしょうか。誰もが「そうだね」と頷きます。しかしこの言葉を知っているだけで人は健康を維持できるでしょうか。もちろんNOです。具体的に何をどうすることが健康に気をつけることなのか、そこまで落とし込まないと健康は維持できません。いま私は当たり前のことを言っていると思います。

例えば「頭の中を整理しましょう」という言葉があります。この主張に意義を唱える人は少ないのではないでしょうか。誰もが「そうだね」と頷きます。しかしこの言葉を知っているだけで人は頭の中を整理できるでしょうか。もちろんNOです。具体的に何をどうすることが頭の中を整理することになるのか、そこまで落とし込まないと頭の中は整理されません。いま私は当たり前のことを言っていると思います。

そう、当たり前のこと。でもこの当たり前のことが実はとても難しかったりします。なぜなら、誰もが当たり前のことだと思っているが故に、そもそもどうやって行う動作なのかを誰も体系だてていなかったり、ちゃんと教えられる人がいないからです。今回の浅田さんのご著書ではその点がしっかりカバーされていました。これが数年前にベストセラーになった理由だと思います。

この記事を読まれている方はおそらく優秀なビジネスパーソンでしょう。だからこそお伝えしたいのは、「知っていること」と「できること」は天地の差があるということです。ビジネス系の研修や教育をしている立場から申し上げると、「知っていること」ばかりで退屈そうにしている人ほど実際にやらせてみるとできない、そんなことが少なくありません。それは少しばかりカッコ悪い姿だと思います。でもそのような「自称デキる人」は自ら「実はできない」と言い出せません。プライドもあります。だから彼らはさりげなく、こっそり、「実は身体のここをこう使ってこの通りにやればいいんですよ」と教えてくれるコンテンツを求めています。これが数年前にベストセラーになった理由だと思います。

動作に落とし込む。動作を指導する。

私のビジネス数学教育における根幹の部分。浅田さんの「紙1枚」は教育的な観点でとても素晴らしいコンテンツだと思います。


整理したものをしゃべってみること

「紙1枚」は整理するツールとして役立ちます。それは本書を読んでいない方でもおそらく感じることができることでしょう。でも本来の目的は「整理」ではありません。それを伝える、説明する、主張する。つまりコミュニケーションに使う。これが本来の目的です。

例えば部屋の整理。この「整理」そのものが目的なのでしょうか。NOです。整理することによって快適な生活を営むことが目的です。どこに何があるかわからない。嫌な気分になる空間で生活する。友人を家に招くことに抵抗がある。これらは決してその人の幸福度を高めることにはならないものでしょう。快適や幸福。それが目的であり、整理はそのための手段。そういうことだと思います。

ですからビジネスにおける「頭の中を整理する」という行為も、それ自体が目的ではありません。そこから導かれる、私たちがすべき動作はたったひとつしかありません。そうです。もうおわかりですよね。

整理した内容を実際にしゃべってみる

しゃべってみるとわかることがあります。自分の身体(あるいは頭)がしっくりきているか、自分の価値観とFITしているか、必ず感じることがあります。しっくりきているのであれば、あなたはそれをはっきりと力強く、自信を持って話すことができるでしょう。その「強さ」は必ず相手に伝わります。人間同士のコミュニケーションにおいて「伝わる」とは、こういう瞬間のことを指すものでしょう。内容よりも、正しさよりも、それを伝えるあなたに「強さ」があるかどうか。それが最も大事です。ではその「強さ」はどのようにして手に入れるか。自分の身体(あるいは頭)がしっくりくるような整理を事前にすることです。ビジネスコミュニケーションの9割は、実際に伝える前に終わっています。それほどに整理するという動作は私たちにとって重要なのでしょう。これが数年前にベストセラーになった理由だと思います。


指導者にも読んで欲しい

私は自ら講師としてビジネス人の育成をしていますが、同時に同じような内容を指導できる「ビジネス数学インストラクター」の育成にも力を注いでいます。制度を立ち上げたのは3年前ですが、少しずつ認定者も増えてきたところです。

教育は指導者で決まる。

私はそう思っています。おそらくこの記事を読んでくださったあなたもそう思うでしょう。数学に苦手意識やアレルギーを持ったまま大人になった方は、数学そのものが嫌いだったのではありません。その数学を伝えた指導者(あるいはその人物がした授業)が嫌いだったのです。実際、数学が好きだった・楽しかったとおっしゃる大人にその理由を尋ねると、たいていこのような答えをしてくださいます。

「授業が楽しかった」「先生が面白かった」

教育は指導者で決まる。だから私はビジネス数学を指導できる優れた人を増やしたいのです。私の活動に少しでも興味を持ってくださったら、ぜひチェックしてみてください(宣伝)

何が申し上げたかったと言いますと、世の中の指導者と呼ばれる人たちはぜひ『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』を読んでみて欲しいということです。

学校の先生はもちろん、企業で社内講師をするような人、あるいは管理職や経営者、スポーツの世界でアスリートを指導する監督やコーチ、他にも様々な世界に「指導者」と呼ばれる人がいるはずです。そんな人たちに勧めたい。そう思います。その理由は、以下の3点です。

・「動作に落とし込む」とはどういうことかを理解できるから

・「頭の中を整理する」という動作が実際にできるようになるから

・結果、あなたの指導は相手に伝わり、その相手は実際に動作をし、そして(おそらく)結果を出すことができるから

悪くないだろう。そう思うのは私だけではないはずです。是非とも。


基本動作ほど、実は奥深く難しい

一般論ですが、人は「疑い」をきっかけにして変化や成長をもたらします。

今の会社にいていいのだろうか? 
この人とこのまま付き合っていていいいのだろうか? 
自分は本当に部下から信頼されているだろうか? 
現状に満足していていいのだろうか? 
・・・・・・・

そんな「疑い」をすることで、人は前進します。

考える。整理する。説明する。そんなビジネスの基本動作。あなたもすでにできていることかもしれません。でもそれは本当に正しい動作なのか、疑ったことはあるでしょうか。

自分は本当にちゃんと考えるができているか。
整理が上手なのだろうか。
誰よりもわかりやすく説明できているだろうか。

疑ったことのない人は、ぜひこの機会に疑ってみてください。このような基本動作ほど、実は奥深く難しいものです。繰り返しますが、当たり前のことが実はとても難しかったりするのです。実は私の最新刊もタイトルが「疑い」になっています。そもそも自分は基本動作がちゃんとできているだろうか? そんな問いを立てた人に読まれる1冊だと思います。浅田さんの新刊と併せて、ぜひどうぞ。

『そもそも「論理的に考える」ってどうすればできるの?』(三笠書房)


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深沢真太郎 ビジネス数学・教育家 作家(35冊/小説・ビジネス書・教育書)
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