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【社会派玩具販促アニメ】Get Ride!アムドライバーを知っているか?

今回は今年で20周年を迎える社会派玩具販促アニメ「Get Ride!アムドライバー」を紹介したい。

「Get Ride!アムドライバー」

どんなアニメ?

コナミが展開していたメディアミックス作品。玩具や漫画、ゲームも発売されており、TVアニメは2004年4月〜2005年3月まで放送されていた。
最大の特徴は玩具展開である。13cm程のアクションフィギュアとそれに装着するバイザーと呼ばれる武装を組み合わせて遊べる玩具となっている。
子供向けの玩具販促アニメに思われがちだが、政府の陰謀へ立ち向かう若者たちの骨太な人間ドラマが描かれるシリアスな作風となっている。
放送前のキャッチコピーは「僕らの問題作が、始まる」

商品展開されていた玩具の一例

あらすじ

連邦評議会という統一政体が地球を支配している未来、数年前から「バグシーン」と呼ばれる未知の機械生命体から人類は襲撃を受けていた。バグシーンには従来のどの兵器も歯が立たず、市民は怯えながら過ごしていた。

バグシーン

そこで人類はバグシーンに対抗するべく最新工学を完成させ、それを利用した強化服アムジャケットを開発した。そして、アムジャケットを纏った戦士「アムドライバー」がバグシーンと日夜戦いを繰り広げていた。

アムジャケットを纏った戦士「アムドライバー」

単なるヒーロー物では終わらない!

物語は主人公の「ジェナス」「ラグナ」「セラ」の新人3名がアムドライバーとしてデビューするところから始まる。基本的にアムドライバーは2~3名でチームを組んでおり、連邦評議会からバグシーン出現を受けて各地に派遣される。

「ジェナス・ディラ」
「ラグナ・ラウレリア」
「セラ・メイナード」

アムドライバーがバグシーンを撃破する様は、ある種のプロパガンダや興行に近い形で報道され民衆からの支持を受けている。そのため、アムドライバーの中には人類を守るというよりも人気取りの為に戦っている者も少なくない。

アムドライバーを一目観るために訪れたファン
民衆から支持を集めるアムドライバー

人類の敵であるバグシーンとの戦いがどこか緊張感なく描かれ、前述した通りバグシーンとアムドライバーが戦う様は興行のようなエンタメと化している。どこか作られたようなヒーローvs人類の敵という構図…
それもそのはず、バグシーンは連邦評議会が世界を一つにまとめる為に生み出した架空の悪だったのだ!

工場で生産されるバグシーン

十数年前、未だ人類同士の争いが続く中で人類共通の敵バグシーンを登場させ、それを撃破するアムドライバーという仮初めのヒーローを作り出し、世界中の争いを終結に導いたのだ。これこそが作中の「アムドライバー計画」と呼ばれるものの真相である。
元々、アムドライバー計画は連邦評議会の副議長ジノベゼ率いる強硬派が提案したものであり、それに議長のウィルコットが乗った形である。
それにもかかわらず、野心に狂い世界の掌握を目論むジノベゼによってバグシーンの真実は暴露されてしまう。

連邦評議会議長「バーロック・ウィルコット」
副議長「ジャン・ピエール・ジノベゼ」

そして、アムドライバーはウィルコット派とジノベゼ派に分かれて争うことになってしまう。主人公たちはそのいずれにも属さないアムドライバーとして、陰謀や様々な勢力の思惑に翻弄されながら成長していく。

正義の味方として戦っていたアムドライバーたちが自らもマッチポンプの一部だと知り、それでも正義のために戦う者や力に溺れる者、正義とは何かヒーローとは何かを苦悩しながら若者が成長していくシリアスながら熱いストーリーとなっている。

子供向けと侮れない人間ドラマ

物語の中盤、セラは敵対するアムドライバーを殺めてしまう。

絶体絶命のセラ
偶然の悲劇

今までアムドライバーvsアムドライバーという構図で争ってきていたが、あくまで戦争という様相でどちらかが不利になれば引くような形で収まっていた。政治的な理由で対立しているだけで、憎しみ合うような争いではなかったのである。
しかし、今回は破れかぶれとなった敵のアムドライバーが命を奪おうと行動してきた。セラも自らを守るため、正当防衛とはいえ敵に弾丸を放ってしまった。
正義の味方として行動してきた主人公たちであったが、人殺しの業を背負うことになってしまったのである…

また、ラグナは「シシー」という女性と恋仲になる。とある縁で主人公たちと行動を共にするのだが…

「シシー・クロフト」

戦いの最中、シシーはラグナを庇い敵対するアムドライバーの放ったビームにより目の前で殺されてしまう。シシーの死に打ちひしがれるラグナ、実はシシーという名前は本名ではなかったのである。
本名は「シルヴィア・クラフトン」愛する女性について何も知らなかったとラグナはひどく落胆する。
一人、思い出を振り返っていたラグナであったが、シシーを撃ったアムドライバーへの憎悪が募り無断出撃を犯してしまう…

凶弾に倒れるシシー

このように子供向けのアニメとは思えないシリアスな展開がアムドライバーの特徴だ。特にセラの件に関しては殺された敵の仲間が、その死によって狂っていく様まで描かれていく。単純な勧善懲悪ではなく、正義と正義のぶつかり合いという構図で人々が争う姿が生々しく描写されるのは子供向けアニメの域を超えている。

まとめ・余談

テレ東夕方18時台のホビーアニメとは思えないような、シリアスな展開が繰り広げられるキャッチコピー通りの問題作である。
正義のヒーローと人類の敵という構図から、人間同士の対立へと物語が転換していき、争い合う中で避けて通れない「死」という重いテーマもぼかさずに描ききった子供向けの皮を被った名作アニメである。

惜しむらくは、メインターゲット層の子供に当時ヒットしなかったことであろうか。筆者も小学生当時、アムドライバーの話をしている同級生はいなかったと記憶している。玩具展開も奮わなかったようで、発売予定の物が中止となったり商業的には失敗という評価になっている。
アニメ内の販促がダメだったかというとそういう訳でもないと思われる。
バイザー(武装)毎に見せ場があり、子供向けホビーアニメとしての訴求力は十分であったと言える。そもそも、2004年当時は既にTVゲームやカードゲームなど子供向け娯楽の強いライバルが存在しており、単純な玩具自体がアムドライバーに限らず冬の時代であった。
しかし、アムドライバーの遺伝子は後の「スカイガールズ」や「武装神姫」というシリーズに受け継がれ形を変えて生き残ったのである。











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