burode

果たして男性同士の必然性はあるのか、なぜポーランドでなくアイルランドなのか、暗中模索、右往左往しながら書いています。

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果たして男性同士の必然性はあるのか、なぜポーランドでなくアイルランドなのか、暗中模索、右往左往しながら書いています。

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  • アンジー。はな。

    誰かに会いたいって気持ちってなんだろう、というところから始まったお話です。

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思い出というか。

アイルランドは昔見た映画の風景が美しかったこと。風と共に去りぬ、の続編で文化と歴史に触れたこと。ぐらいの思いしかないのですが、この度アイルランド語の勉強をはじめました。 それにしても、民族を特定しない名前というのは難しい。Luanだけはアイルランド語で月曜という意味ですが。 とにかく、最後のピースをぱちんとはめるまでは頑張ろうと思います。 拙い文章にスキをいただきましてまことにありがとうございます💜

    • アンジー。daichead a cúig

      いびつな形の狭い空間だった。アンジーの衣装とメイク道具が置いてあっても楽屋とは呼べないよなあ。木箱がいくつも置かれていて、ルーの座ったソファーなんて置いてあるというか、捨てるのを忘れてたみたいな古び方をしている。ドアに付いている金具は鍵というには簡単すぎだ。 それなのにルーったら、 僕、ここで寝泊まりしてもいいよねえ? だって。 フイッシュ&チップスとミルクティーを持ってきてくれたおにーさんもびっくりしてる。 ここでかあ?うちは構わないけど、こんな吹っ飛ぶようなドアしかないし

      • アンジー。daichead a ceathair

        運命も粉々に割れてしまうくらいの大きなノックの音が響いた。 ショーンだ。 ルーは僕の顎に頭をぶつけてから勢いよく入り口まで走った。 痛いです。 ああー、すまん、今日は大事な弟くんがいるんだったー。 ショーンの酔っ払ったダミ声が聞こえた。ルーに支えられてやっと立ってる。お酒は強いはずのショーンがぐてんぐてんというかでろんでろんというか、こんなになるまで呑むなんてどういう。 ルーが潰れそうになって慌ててかけ寄った。 悪いな。あんたがいるならこんなに呑む必要なかったなあ。すまんすま

        • アンジー。daichead a trÍ

          僕の肩に頭を寄せて僕の腕の中にいるのにルーはぼんやりとしていて心ここにあらず。 そんなにショーンのことが気になるの? うん。うーん、ショーンはいつも違う女の人とどっか行っちゃうんだ。 そりゃショーンだもん、女の人の方がほっておかないでしょ。 うん。でもしばらくすると結構酔っ払って帰ってくるの。 じゃあ、今夜はここでルーと二人きりってわけじゃないんだね、残念だなあ。 部屋にはセミダブルサイズのベッドとソファーにキャビネットにテレビぐらいしかない。 三人でどうやって寝ますかね。

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        思い出というか。

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        • アンジー。はな。
          2本

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          アンジー。 daichead a dó

          上に部屋とってあるから、とショーンに鍵を渡された。もっと色っぽいシチュエーションなら嬉しいんですけどね。 アンジーはどこ行っちゃったんだ。歌い終わると、アイリッシュダンスが始まって、無理矢理ステップを教え込まれてる間にいなくなっちゃった。 じゃあねえ、って頭の横で手をひらひらさせて女の人とどこかへ行ってしまうショーンを見送ってから入口の横の狭い階段をのぼった。鍵のナンバーは302。 ドアを開けると、ルーがベッドに座ってテレビを見ていた。 え、え、え、どういうこと。なんなの、ね

          アンジー。 daichead a dó

          アンジー。daichead a haon

          あと2時間ほどでルーのペンション、という時に、ショーンは寄りたい店があると言い出した。少しでも早くルーに会いたいとは思ったけど、まあ、ひと休みもしないといけないし、わざわざ送ってくれるショーンのお願いを断ることもできない。 なんだ、前にアンジーのことを聞きに来たパブじゃないか。 アンジーのことを教えてくれた女性も、ビールをおごってくれたおじいさんも写真を貼り付けておいたみたいに全然変わってなかった。 ショーンが馴染んだ感じで指で合図をするとライトビールが一杯出てきた。 え、僕

          アンジー。daichead a haon

          アンジー。daichead

          ルーは床に落ちていたパジャマを拾い上げるとゆっくりとした仕草で身につけ始めた。あいかわらずやせてるなあ。いや、前よりやせたような気がする。 仕事、忙しいの? んー。 自分のマグカップに口をつけ、こふこふと変な咳をしてから、クッションを引き寄せて枕にするとソファーに丸まって横になった。 ルー? もう寝てる。早いってば。 僕は自分の服を直してルーの傍に座り、残っていたお茶を飲みほした。 耳をすませてもルーの寝息しか聞こえない。でも、これが僕の欲しかったものだ。 おやすみ、ルー、い

          アンジー。daichead

          アンジー。tríocha a naoi

          ルーが冷蔵庫を開けたりやかんを火にかけたりするのを、ソファーに座ってぼんやりと眺めた。シャツと帽子が置きっぱなしのソファーには二人の生活感が出てる。僕とルー、お互いに別々の時間を過ごしてきたんだ。 はいお茶どうぞ。ミルクかなり多め、アルコールちょっとたらしちゃった。 ルーは自分の分のマグカップをテーブルに置くと僕の目をのぞき込んだ。 後悔してたの。セジュのこと考えるのやめれなくて。結婚したのも子どもができたのもずっと見てた。見ずにいられなかった。ここで働き始めて、イーニエ、じ

          アンジー。tríocha a naoi

          アンジー。tríocha a hocht

          写真を見始めると止まらなくなった。予定より少し早く小さく生まれてしまったふたり。こんなに小さかったのに最近はおしゃべりが本当に上手になった。不思議と母親を恋しがって泣くようなことはほとんどないんだけど、それはそれで物わかりが良すぎて心配。 僕の奥さん、だった人は、月に一度娘たちに会いに来る。それでいいんだって私、お母さんには向いてないみたいって寂しそうな顔して言ってた。そんこと言ったら僕だって親には向いてない。やっと取れた休みなのに子供を置いて、こんな遠くまで忘れられない人の

          アンジー。tríocha a hocht

          アンジー。tríocha a seacht

          食事の片付けをしてから、サーランに分けてもらったアップルパイを食べた。残りはルーが全部食べちゃってた。ちゃんと頬にパイ生地のかけらを付けてるし。ルーはさっきよりゆったりした顔になってるみたいだ。 明日の夜の便で帰るから、明日はここを昼前には出るよ。 そっか、忙しいんだもんね、ゆっくり休んでね。朝早く起こしたほうがいいの? そこまで急がなくても大丈夫だと思う。ありがとう。 部屋に引き上げてテラスの椅子に座って庭を眺めた。すぐには眠れそうにない。 サーランと二人で戻った時、ルーは

          アンジー。tríocha a seacht

          アンジー。triocha a sé

          まったくもう、ルーってば変わったようで変わってなくて、そこに安心したりして。 ルー、疲れてるんじゃないの。とりあえずアップルパイ食べながらテレビでも見てなよ。後片付けは僕がサーランを探してきて二人でやるから。 残りのアップルパイを渡してリビングのソファーに座らせた。 サーランはどこに行ったかわかる? んー、たぶんね、セジュの部屋の近くの石垣のとこ。古い家具とか置いてあるの。 わかった。行ってみる。まーゆっくりしてて。 遠くまでなだらかに続いている牧草地の上に大きな月が出ていた

          アンジー。triocha a sé

          アンジー。tríocha a cúig

          イーニエもよく喋ったが負けないくらいルーはよく歌っていた。僕の泊まる部屋に案内してくれた時はステップまで踏んでた。 ねえ、セジュ、夕ごはん、僕たちのところで一緒に食べない?今日のお客様はセジュだけなんだ。正直に言うと、そうしてもらえると僕の手間がはぶけるの。 最初に通された部屋から家族エリアに入った。 小さなキッチンとリビング、それと広くはない寝室。寝室にはベッドが二つ並んでいた。 ここも改築したかったんだけど予算が尽きちゃって。頑張って稼がなきゃ。イーニエの部屋がないもんね

          アンジー。tríocha a cúig

          ただ今日の海。

          ただ今日の海。

          アンジー。tríocha a ceathair

          イーニエが戻ってくるまでずっと、ルーは僕の手を取って話を聞いてくれた。時折、鳥の声が聞こえるだけだった。 ただいまー。お腹へったー。たぶん、スナップも。 そのスナップとやらは定位置とでも言うように僕の足元に走りきて座りこみぱたぱたと尻尾を振っている。 ひ、人懐こい犬だね。 セジュのこと覚えてたんだ。ね。 え? 前はころころのおちびちゃんだったの。覚えてる? あー! おっきくなったしわかんないよね。すっかり僕みたいなおじさんになりました。 そう言って笑うルーは全然おじさんじゃな

          アンジー。tríocha a ceathair

          アンジー。tríocha a trí

          ふう、びっくりしたー。セジュがお客様として来るなんて。 僕だってびっくりしたよ。前にここにいた女の人はどうしたの?ずいぶん雰囲気が変わったよね。ショーンと三人で食事に来た時は、もっとレトロな感じだった。 彼女は腰を傷めちゃって調子がいい時は様子を見に来てくれるの。僕がここ買い取ったんだよ。すごーいローンが残ってるんだから。 子供っぽい話し方はあい変わらずで誇らしげな笑顔が、かわいい。 セジュは覚えている?アンジーの通訳の女の人。僕ね、ほんとは彼女と結婚するつもりであの国に帰っ

          アンジー。tríocha a trí

          アンジー。tríocha a dó

          見学者用の送迎バスに乗り込んだ。 ルアンと来たことがある競走馬育成の牧場。二人で二時間かけて歩いてきた思い出がよみがえってくる。景色はほとんど変わっていない。 急に動いた馬にびっくりして僕の腕にしがみついてきたルー。その時のルーの髪の匂いが鼻先をかすめたような気がした。 同じバスで来た人たちは次の観光地に行くようだ。僕は手をあげて軽く挨拶をしてから牧場近くのペンションに向かった。 庭にあるバラのアーチには見覚えがあるけど全体のイメージが違って見える。 勢いよく入口のドアが開い

          アンジー。tríocha a dó