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【今日コレ受けvol.111】シワシワの成人式
7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」を読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。
そう言えば、昔この人と交換日記をしていたんだった! Facebookのイイネを見て思い出した。
相手は、大学生になって入った小劇団の演出家兼座長。1つ上の先輩で、豊富な知識と鋭い視点、そしてコテコテのユーモアで、学生劇団ながらチャレンジングな舞台を創っていた人だ。戯曲も書いていた。
一方で料理が上手で、よくみんなで彼の6畳1間の下宿に集まって飲み会をしていた。
そんな彼が舞台上で表現があまりにもできない私に、「ノートになんでもいいから文章を書いてきてみぃ」と勧めてくれたのだ。
「ううう、何を書けばいいか分からない」
水色の大学ノートを前に悩みに悩んだ私は、そのとき読んでいた椎名誠さんの『アド・バード』の読書感想文を書いた。
「ハードボイルドですごいと思いました」
0点!!!
もっと他に言うことあるやろ!!!
お肌ツヤツヤだけれども、ノーテンキだった当時の自分をハリセンではたきたい。今の私が読んだら赤入れどころか、燃やしたくなる内容だったと思う。
座長もさぞやあきれたに違いない。
でも、「そうか、そこが面白かったんか。でも、ここもオモロいねんで」「この本も読んだらいいで」などと、丁寧に感想を返してくれていた。
ううう感謝。
プロダクト・ライフサイクルとは、ある商品やサービスの寿命を、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階で説明する理論である。
~中略~
このプロダクト・ライフサイクルと企画の関係については、『本を出したい』に詳しく書いたのだが、その話から発展して、担当編集者のりり子さんが先日言及していた「著者(書き手・発信者)のプロダクト・ライフサイクル」についての考察が面白かった。
この文と、続くりり子さんの考察を読んで、
「書き手としてのプロダクト・ライフサイクルではなく、ライフサイクルがあるとしたら、あのノートで産声を上げたのかもしれない」と、ふと。
SNSのない時代。大学のレポート以外で書いたものに、感想をもらったはじめての文章だったからだ。返ってくる言葉がうれしかった。
あれから20数年。
紆余曲折を経てライターになった私は、書き手としては高校生くらいには成長できただろうか。
まだまだ成長しなければならないが、残念ながら本物のライフサイクルは衰退期。無理がきかなくなってきた。身体は重く老眼も進む。
まてまて。書き手として成熟する前にナミアムダブツするんじゃないか?
……。
落ち着こう。きっと大丈夫。大丈夫だ。
幸い、読むも書くも、指と頭がそれなりに動く限りは続けられる行為だ。パソコンが無理になっても、スマホでも書けるじゃないか。
本当のライフサイクルに追いつかれる前に、書き手としてのライフサイクルで成人式を目指したい。
シワシワの指で。最後の1文字まで。