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データベーススペシャリスト試験についてまとめてみた

分析屋の中田(ナカタ)です。
今回は情報処理技術者試験のデータベーススペシャリスト試験について紹介します。
合格までに3年かかった体験をもとに執筆しています。




データベーススペシャリスト試験とは

情報セキュリティでお馴染みのIPAが運営するIT試験の1つです。

ITパスポート、基本情報、応用情報、高度区分のうち高度区分に分類される国家試験です。
※以降、データベーススペシャリスト試験を「デスペ」と略します。


本記事の内容

デスペで問われるものや勉強方法、学習を通して得られるものをまとめます。
対象読者は、受験を検討している方・学習方法で困っている方です。


メリット

データベースについて体系的に学習できる、これに尽きます。
ですので、テキストと過去問で勉強だけして、試験は受けないのもありです。
既に実務経験を積んでいるなら、わざわざデスペの勉強をしなくてもいいかもしれません。

人によっては以下のようなメリットもあるのかもしれません。
①転職活動で「高度区分に挑戦できる勉強熱心な人」と評価してもらえる
②会社で資格手当が出る
③資格を通じて高単価案件が受けられる

ただし、たいていの場合は
資格<<実務 ですし、そもそもデスぺの認知度も微妙なので
試験合格が年収に直結することは多分ありません。


デメリット

学習時間がかなりかかります。
SQL未経験のレベルからだと1年で一発合格は現実的ではないです。
私の場合は他の勉強をほとんどストップして丸3年かかりました。

また、Oracleの資格のように具体的な製品の話は出てこないので
得た知識を実務ですぐ活かしにくいかもしれません。
最後に、IT資格全般がそうですが、デスぺも業務独占資格ではありません。

ということで、ここまでで「かけた時間と労力の割に、金銭的な見返りが合わない」と感じた方も多いかと思います。全くもってその通りです。
「合格を目標にしたら学習のモチベーションが上がる」
「実務未経験だから、少しでもアピールする材料が欲しい」
「とにかくインフラ周りにステータス全振りしたい」
という方は引き続きお読みください。


試験概要

年1回、10月頃の日曜日開催です。
受験費用は約8千円、ベンダー資格に比べるとお得な方ではあります。
+テキスト代と交通費で費用合計1万円くらいです。
更新制度はないので、合格したら効果は永久です。

DB試験は4つの試験(午前1、午前2、午後1、午後2)で構成されています。
具体的な製品の操作ではなく、データベース関連全体の知識が問われます。正規化、トランザクション、インデックス、ロック、ロールとユーザー、SQL・・・
過去問は以下のサイトで無料公開されています。


午前1

4択問題(マークシート)
時間50分
問題数30問
合格点18問(60%)

同日の応用情報技術者試験の午前問題80問のうち、30問が問われます。

応用情報技術者試験や高度区分に合格している方、もしくは
直近2年以内に午前1を通過していれば免除されます。

応用情報全範囲が対象なので、先に応用情報技術者試験に合格しておくとかなり楽です。というより、応用情報全範囲+データベースの学習というのが大変すぎます。
私の場合は応用情報合格をすっ飛ばして、初年度は全力で午前1だけは通過しようと勉強しました(あわよくばストレート合格したらいいな~と思ってました)。

過去問の流用が多いので、以下の便利サイトで繰り返せば十分です。
2,880問ありますが・・・。


午前2

4択問題(マークシート)
時間40分
問題数25問
合格点15問(60%)

応用情報レベルのうち、データベース分野20問+セキュリティ等が5問です。
こちらも過去問の流用が多いので、以下の便利サイトで繰り返せば十分です。
350問です。応用情報の2,880問と比較すると少なく感じますね!

「データベーススペシャリスト試験過去問道場」


午後1

論述問題
時間90分
問題数3問(2問選択)
合格点60%(配点非公開)

1時間のお昼休憩をはさんで、ここからがデスぺの本番です。午前問題は、過去問をひたすら積み上げるだけで80%以上は安定できるのですが
午後問題は安定しづらく、苦手なテーマだと全滅しかねません。

3問の内訳は
・設計
・実装
・SQL
になっていることが最近の傾向です。

それぞれ、仮想の会社での事例を用いた出題になっています。
設計で毎度のパターンなのは、業務要件を元に概念データモデルを完成させるという

いわゆる「お絵描き」問題です。
参考:以下PDFの10ページ目

https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/gmcbt80000008smf-att/2022r04a_db_pm1_qs.pdf

頻出の出題形式ということで好まれがちな問題ですが
業務要件を理解できなければ適当に線を引くしかない問題です。

午後問題はどれも長ったらしい業務要件を読んで理解、設問に正しく回答するところから
「データベースじゃなくて国語の試験だ」と揶揄されがちです。

90分で大問2問は結構時間ギリギリなので、捨てる問題の判断力も必要です。


午後2

論述問題
時間120分
問題数2問(1問選択)
合格点60%(配点非公開)

午後1で戦意喪失した受験生が退席し、やや人数が少なくなる試験です。
10ページを超える業務要件やER図、テーブル定義資料を読んで理解し
設問に回答していきます。
参考までに昨年の午後2の問題を貼っておきます。

https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/gmcbt80000008smf-att/2022r04a_db_pm2_qs.pdf

選択問題2問の内訳は
・概念設計
・物理設計
で分かれています。

120分で全容を理解し、完答するというのは無理無理の無理なので
先に問題を読んでから資料を読んでいき、得点できるところだけ取っていくスタイルになります。

実際に解いてみると痛感するのですが、120分という時間はあっという間に過ぎていきます。


勉強方法

■まずは午前1を突破!

午後問題の勉強に集中したいのに、応用情報全範囲の対策は並行してやってられません。
先に応用情報を合格しておく1~2年計画か
1年目は午前1を通過することをノルマにして3年以内に合格する計画か
どちらかを推奨します。

■テキストの通読

初学者の場合、いきなり過去問を解いてもそもそも文章を読めないと思います。
まずはテキストを一通り眺めて、用語に慣れるところから入りましょう。
1ページ目から最後までじっくり理解しようとすると一生終わらないので
何となく読み進めて、細かいところは後から復習するくらいでOKです。
テキストは情報処理教科書、通称「三好本」がオススメです。

おすすめ参考書・問題集|データベーススペシャリスト.com

■午後の過去問題を反復

午前問題は過去問の流用が多いので何とでもなります。
とにかく早い段階から、午後1と午後2の過去問を反復します。
時間を計って解きますが、時間が過ぎても全問解ききりましょう。

三好本付属の解説を読んで理解するところまで含めて、1問1時間~3時間くらいかかるかと思います。
ということで解く問題は厳選したいところですが、個人的には過去10年以上の午後全問(午後1の3問+午後2の2問)を2~3周反復を推奨します。

私は設計分野がどうしても苦手だったので実装分野に全振りしましたが
昨年は傾向が大きく変わったこともあり今後どうなるかは分かりません。
あまり好き嫌いせず、いろんな問題に慣れておくと良いと思います。

また、本質は同じような問題でも業種が変わると理解しづらいこともありますので、同じような問題は解かない!最低限の時間と労力で合格しよう!というよりは、惜しみなくリソースを突っ込んだ方がいいと思います。

また、「RDBMSの主な仕様」については毎年似た内容なので
事前にある程度覚えておくと楽です。


■午前問題の過去問反復

過去問道場を繰り返します。

「データベーススペシャリスト試験過去問道場」

1問1問じっくり考えて解くと非効率なので
ぱっと見で分からない知識問題・方針が浮かばない計算問題は
すぐ解答解説を読みましょう。

アカウント登録しておくと、間違えた問題の履歴が残ります。
3周しても間違えた問題は、まとめて印刷しておくと試験直前に見直せます。

問題数がかなり多いので、時間もかかり大変な作業ですが
逆に言えば、やりさえすれば誰でも午前は通過できると言えます。


■データベースやSQLの技術書籍を読む

午後問題の対策です。
以下のおすすめ書籍を読んでおけば十分です。

おすすめ参考書・問題集|データベーススペシャリスト.com

午後問題で登場する現行システムが典型的なアンチパターンになっていることがあります。
このテーブル構成のままだとどういう不整合があるか?
対応策は何か?について記述する必要があります。
事前に、データベースの設計方針やアンチパターンを知っておくと
ピンとくることがあります。

特にインデックスについては
「なんかWHERE句でよく使う列に設定したら早くなるんじゃん?」くらいの認識だと太刀打ちできないので、理解を深めておく必要があります(リレーショナルデータベース入門がおすすめ)。

■実際に実装してみる

実務未経験の場合は、postgresやMySQLなど何でもいいので
実際に環境構築してテキストに書いている内容を実装してみましょう。
主キーや外部キーの制約を設定してみるとか
ロールやユーザーを作ってみるとか
トランザクション処理を書いてみるとか
インデックスを設定して実行計画を見てみるとか
一通り慣れておきましょう。
午後問題ではデータベースの仕組みについては十分理解している前提で
踏み込んだ質問をしてきます。
実際に触ったことがないと、問題にスピーディーに回答できないだけでなく、解答解説を読んでも理解が難しいかと思います。


■掲示板でのアウトプット

試験が近くなると、デスぺの掲示板で過去問についての質問が多くなります。

データベーススペシャリスト掲示板 スレッド一覧

これらに回答すると、自身の理解があいまいだったところが明確になります。
また、認識が間違っていた部分を他の回答者から指摘してもらえることもあります。
「自分の理解が合っているか自信がなくて回答しづらい」という気持ちもありますが
掲示板に出てくる質問に答えられないようでは合格率15%の試験は通過できないと思って
バンバン投稿してみましょう。
以下は私が実際に回答したスレッドですが、スムーズに回答しているように見えて
実際はいろいろ調べながらまとめ直しながら格闘しています。

[0306] H31設問3 (2)

■業種ごとのビジネス理解

けっこう見落としがちですが、物流や製造や小売など
各業種の仕組みを知っておく必要があります。
各業種の基本用語については常識として説明されないことが多いので
「検品して受領して入庫、ピッカーがどうのこうので受注して在庫引当をして棚卸では・・・何言ってんだ??」
とならないようにしましょう。
具体的には、通称三好本で各業種の背景もまとめられています。

おすすめ参考書・問題集|データベーススペシャリスト.com

注意点

■途中退席

巷では、合格率が15%程度になるように午後問題は点数調整が入っているという噂があります。ですので、体感60%には全然届いていないのに合格していたケースもあります。3回受験してみて、いずれの回でも途中退席者が目立ちましたがもったいないので最後までがんばりましょう。仮に直前の試験で埋めた回答欄が1問だけで、絶対不合格だと思ったとしても
来年の試験対策のために過去問を早めに解いているんだと思って気楽に挑戦しましょう。

■昼休憩

昼休みは近くのコンビニや飲食店が激混みします。
事前に用意しておいて、公園などで済ませられるようにしておきましょう。午後は難解な長文を読み解くので、がっつりお腹いっぱい食べて眠くならないように抑えましょう。

■出題内容

午後問題は傾向が急に変わったり、せっかく勉強したテーマが出題されなかったり報われない勉強も多いです。
万全を期すためには、直近数年の傾向だけでヤマを張らずに
広い範囲を勉強する・過去問を全部解くくらいのコストをかける必要があります。



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