【小説】みずうみ ①
あるみずうみの畔に、少年がひとりで住む小さな小屋がありました。その近くには、ひとが住む建物はまったくありませんでしたから、少年は「ぼくがこのみずうみに沈んで消えてしまったら、だれが気づいてくれるだろう?」などと、ある晩に想像したりもするのでした。
一昨年に育ての母親がゆくえをくらませてから、少年はムラを追われて身寄りはなく、毎日連絡をとるような相手もいませんでした。ただ少年は週にいちどほど、林を越えた先にあるムラの商店に、卵や干し肉やコーヒー豆を買いに出ていますから、買い出