それぞれの忘れえぬ人/大河ドラマ『光る君へ』第23回・第24回
ついに本格的に松下洸平さんが登場しはじめたと喜んでいたら、周明よ、急ぎすぎだよ。
(以下、ドラマの内容を含みます)
このままあっさり退場とは、いささか消化不良なんだが。
道長とのことに区切りをつけたまひろ。越前で新しい自分を探す彼女(と見守る私たち)が、周明に救われるのだと想像していた。でもそれはちょっと違っていた。
ダークやん!周明!!
周明の過去は過酷なものだった。人減らしのために海に捨てられた男。宋人に助けられて生き延びたものの、宋では蔑まれて生きてきた。利用できるものは利用しなければ、自分の道は拓けない。だが必死の彼も、恋愛に関してはまひろの方が何枚も上手。そんなん、すぐバレるわ!!
左大臣(道長)に宋との交易について文を書くよう脅す周明。
「お前を殺して俺も死ぬ」
まひろにとって「死」はトラウマである。あまりにあっけなく命を奪われた母や友を思い、周明のことばに強く拒否反応を示す。
利用しようと近づいたのに、いつからかまひろに魅かれていた彼は、二度と姿を現さないだろう。朱様がいい人でよかった。兼家だったら始末されてもおかしくない。
人の弱さを表現する松下洸平ほど、輝く人はいない。妻の才能に嫉妬する八さんも(朝ドラ『スカーレット』)、殺人犯の加々見も(一話のみの出演なのにボロ泣きした『MIU404』第2話)、彼が演じたからいつまでも心に残っている。
願わくば、もう少し長く、そして掘り下げた周明を観たかった。
さて、モテ期がやってきたまひろだが、越前で暮らしても結局心にあるのは道長。遠い地で、互いに同じ月を眺めるふたり。まひろが都を離れている間に、道長の周辺ではさまざまなことが起き、彼の心労は増すばかりだ。道長が今回やけに細く感じる。痩せた? 詮子、てっきり仮病だと思っていたら本当の病だった。帝は定子に夢中になり、政務を疎かにする日々が続く。
道長くんの心中お察しします……。推しに挟まれて頭を悩ます行成も、つらい。
終盤にはもうひとつ、あまりに早い別れが待っていた。妹のようにかわいがっていた、さわが亡くなった。人生とは儚いものだ。
「ありのままのお前を丸ごと引き受ける。それができるのはわしだけだ。さすればお前も楽になろう」。これぞ大人の求婚。ちなみに宣孝には正妻も妾もいるので、まひろは妾のひとりに過ぎない。彼は心にも財にも余裕があるし、道長と違ってまひろとは考え方も似ていない。何より、結婚すれば道長のことを考えなくてよい!
いや、違う。
道長のことを考えていてもよい!!
それも全部引き受けるぞと、宣孝は言っているのだ。そりゃ、確かに楽に暮らせる。
私の周りには、長い春の彼と別れて1~2ヵ月で別の人との結婚を決めた友達が多い。当時みんな口々に、「楽だから」と言っていた。恋愛と結婚は別モノ(笑)。一部を除いて、どこもうまくいっているので、やはり別モノなんだろうなあ。
歳を重ねた男が娘ほどの女を欲しがる。一部でバッシングされそうな宣孝を、「包容力のある男」として演じ、色気を醸し出した蔵之介さん。最初はただの父親の友達として出てきたのに、ここのところギラギラしていたもんね(笑)。ラストに、文でもうひと押し。それを読んで思わず笑ってしまうまひろ。案外うまくいくのかもしれない。
次回予告で、宣孝が「為時の娘、結婚!」と報告するシーンが映し出された。どうなるの道長。ますます心労がたたりそうで心配だ。
そして乙丸。そんな風に思っていたのか、君は。この先もすこやかでいてくれ。
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