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三姉弟が織りなす令和のホームドラマ/新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』

野木亜紀子さんが脚本を出がけ、松たか子さん、多部未華子さん、松坂桃李さんが三姉弟を演じた新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』を観た。

長女の葉子はフリーの編集者。早くに両親と祖母を交通事故で亡くし、次女の都子、幼かった末っ子・潮と三人で、喧嘩しながらも支え合って生きてきた。今は江ノ電の保線員として働く潮と、鎌倉の実家で二人暮らしをしている。二十三回忌の法要の帰り、何事も長続きせず葉子の悩みの種でもある都子が、突然韓国に住むと言い出し、改めて家族と向き合うことになる。

ある程度年齢を過ぎた独身の三人姉弟。今では珍しくないが、家族というくくりではシビアな問題がけっこうある。観ていてちょっと考えさせられる。自分に置き換えるとほっこりできないんじゃないかなあと一瞬ひるんだが、そうではなかった。なんだろう、こういう家族のあり方でいいんだよなと思える内容だった。

彼らには一度に家族を失うというヘビーな背景があり、これまで気を遣ったり我慢したりしてきたことだってたくさんあったんじゃないかと想像するが、そのあたりを軽やかに描いているので入り込みやすかった。

私は、家族で本音を語ることを避けて生きてきた気がする。今もそうだ。墓や実家どうする問題など、具体的にどうにかしなければならない話はするけれど、「この先自分がどう生きたいか」という話は、私も含めて誰も話さない。誰かがそれを言ってしまえば、たちまちこの家族は終了するのではないか。そんな気持ちになるからだ。

この物語の三姉弟も、互いになんとなく濁したまま進むのだが、それぞれの事情をきっかけに「三人」という枠から飛び立ち、人生を生きる選択をする。でも三人には、たとえ反発しても支え合ってきたという軸がちゃんとある。根があるから、自分らしく生きていこうと言い合えるんじゃないだろうか。こんな姉弟、いいなあ。自分も堂々と、「こんな風に生きていきたい」「生きたいように生きればいいじゃない?」と家族に言えたらいいけど、そうはなかなかいかない。

物語の舞台が、鎌倉や釜山であることも効いている。いい具合に心に溶けていってくれた。多部ちゃんと鎌倉といえばNHKの『ツバキ文具店』だし、極楽寺駅を見れば吉野千明と長倉和平(フジ『最後から二番目の恋』より)を思い出すし、鎌倉は多くの物語を彩ってきたまちだ。釜山の鉄道って、あんなに江ノ電の沿線に似ているのか。釜山は九州から近いけど、一度も訪れたことがない。福岡の友達は「焼肉食べに行く」と言って、昔よく船で行ってたっけ。

それにしても、葉子、都子、潮が抱えていた小さな秘密が公になったときの反応が、いかにも長女、次女、末っ子長男で笑ってしまった。その辺の描き方も秀逸で、それまでの三人がどんな風に家族として接してきたか想像できて面白かった。うちは兄弟そんなに仲良しではないけど(あのお兄ちゃんは相変わらずです)、ただ向き合ってこなかっただけなのかもしれない。

ところで、劇中に登場した盆石。初めて見た。「無」になれそうで興味がある。思わず、近くで教えてくれるところがないか調べてしまった。

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(おまけ)
今年のお正月休みは、地上波で映画『ミステリと言う勿れ』を観て、松下洸平さんがあまりに見事に朝ちゃんを演じていたためか、2日連続夢に出てきた。録画していたしろくまピースの25年間の特集を見ながら、「この軌跡がドラマ化されるなら飼育員の高市さんは松下くんか中村倫也さんだわ」なんて思ったことも含むのか(笑)。

そして今年の『さんま・玉緒の夢かなえたろかスペシャル』は、とっても温かい涙をこぼした。101歳のパワーとキムタクの気遣い、ミセス大好きな小学生たちの純粋な気持ちとそれに応えるメンバーなどなど、とてもよかった。絶頂期(世間的に)のGLAYを見てきた私は、ハードなスケジュールをこなしているであろうミセスの皆さんを勝手に心配していたので、小さなファンとこんな温もりの時間を過ごせて良かったなあと思った。

正月から負の連鎖爆走中の私の鬱屈した気持ちを、すべて浄化してくれた。ありがとう。


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ぶんぶんどー
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