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四十を過ぎて生き抜く術を探る/ドラマ『その女、ジルバ』

初回から泣きっぱなしのドラマがある。
オトナの土ドラ枠で放送中の『その女、ジルバ』


バイト募集の条件には「40歳以上」。まさか。しかし、そこは酸いも甘いも経験した熟女たちがもてなすバー。

アパレル会社の物流倉庫(通称・姥捨て)で働く主人公・新(あらた)を池脇千鶴さんが演じ、バイト先のバー「オールドジャック&ローズ」のくじらママを草笛光子さん、マスターを品川徹さん、同僚ホステスを草村礼子さん、中田喜子さん、久本雅美さんが演じている。

新と後に友達となる職場のリーダー・スミレは、江口のりこさん。今期は他局のドラマ『俺の家の話』にも出演中だ。同じ顔なのに前者は天涯孤独度MAXな倉庫勤めの独身女性、後者は伝統芸能一家の長女で一児の母。当たり前だが、たたずまいが違う。第6話では、恋して表情が一変するスミレがとってもキュートだった。

同じく新と友達になる同僚のみかは、真飛聖さん。元宝塚でダンス能力は抜群なのに、バーでダサ下手くそに踊る姿が可愛くて上手い! 会社を辞めて故郷へ帰るみかの送別会後、3人がこたつで語り合う姿に泣いた。

40歳を過ぎて本音を言い合える友達をつくるのは、そう容易ではない。特に職場では、仲良くなっても程よい距離を保つ場合が多い。物語では彼女らが自分と向き合い、自分を認めていく過程で相手のやさしさに触れ、友情を育んでいく。それがとても眩しかった。

バー「オールドジャック&ローズ」で、もっとも凛としているのがくじらママ。草笛さんの立ち姿、本当に美しい。しかし、微笑みながらも一番芯の強そうなひなぎくを演じる草村さんも素敵だ。第6話で描かれた、ひなぎくの初恋物語に涙した。今これを書いていても、初恋相手とひなぎくが見上げた桜を思い出してウルッとする。そして、男に翻弄されながらも逞しく生きるエリーを演じるのは中田さん。いつも周囲を和ませるけれど、実は親に捨てられた過去を持つ繊細なナマコ役には久本さん。このキャスティングは個人的に好み。笑いを届ける人は繊細な役が妙にハマる。実際繊細なのではないだろうか。

バーの女性たちは人生をエネルギッシュに楽しみ、訪れる人々を勇気づける。客としてここに通いたいし、願わくば働かせてほしいと馳せ参じたいぐらいだ。「歳を取ることは諦めること」と溜め息をついていた新たちが、ママやバーに集う人たちと出会い、変わっていくさまは実に清々しい。彼女たちのポジティブさは、すべて“やさしさ”に由来するものだと思う。だからドラマを観ると背中を押され、時にさすられているような気になる。

40歳を過ぎたら向かい風。ついそんな風に思いがち。職場や仕事での立ち位置、自身の健康、親の介護など問題が山積みだから、実際そうではあるんだけど。老後をぼんやり思い浮かべてしまう日もある。でもバーの面々を見ていると、向かい風の中をまだまだ颯爽と歩いたり楽しんだりできるんじゃないかと思えてくる。彼女たちからすれば、40歳なんてまだピチピチのギャルである。このドラマによって、人生の見え方が変わる。

あっ、忘れてた、やましげ(山崎樹範さん)パート。取って付けたような紹介になるが仕方ない(笑)。やましげさんが演じるのは、倉庫に出向中の前園課長。昔、婚約していた新を捨てた男。彼女のトラウマになった元カレだ。悪い奴じゃないけれど、だいたい間が悪い。こういう役のやましげさんは輝いている。新やスミレとの距離感も可笑しくて、彼の出演シーンはいつも笑ってる。

物語はそろそろ終盤へ突入する。新には出会いが訪れ、バーの初代ママ・ジルバ(池脇さん2役)の過去が掘り下げられる。

今なら1話~6話まで期間限定(2/20まで)無料配信中なので、ぜひ。



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