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書店パトロール59 美しき歌集たちよ、結婚してくれないか。

アウト・オブ・眼中はよく聞いたが、『アウト・オブ・民藝』は初見だった。民藝絡みの本である。

私は、民藝に関して明るくないのでよく識らないのだが、この本は、トークをまとめた本であり、非常に読みやすく、また、紙質がざらついているのが非常に良い。
民藝、柳宗悦、つまりは、『美の壺』などを観ているとよく聞く名前でありワードであるが、これを気に読んでみようかな、と思ったが諦める。
何故ならば、お金がないからである。

そして、その傍らには『アウト・オブ・民藝』の続編的なエッセイが。この薄いZINE感が堪らない。セットで買おうかと再び逡巡するも、戻す。

で、その横には、可愛らしい、まるで、リサ・ラーソンの動物のような生き物の姿が。

これはメキシコのオアハカ州の民藝品ということで、是非、メキシコに立ち寄った際には欲しいところである品々だ。

で、他に何かいい本はないかな〜と物色していると、良き写真集が。

『廃墟』×『ゲーム』である。まぁ、ゲーム、というのは、ゲームっぽい、というか、つまりは、ゲームの舞台を聯想させるような現実を切り取っているわけだが、つまりは、ゲームというもの、ファンタジー、というものは、ある種、我々が視ている夢を形にしているわけなので、これはもう、幻視を改めてカメラに収めて写真集にした、そのような本である。

で、そのままスライドしていくと美術の本が立ち並ぶ。

『洞窟壁画考』。壁画、というものも、ある種、幻想と地続きではあるまいか、そのように考えてしまう。然し、濃厚な本だ。分厚い本だ。購入したら間違いなく積読にしてしまいそうだ。でも、本、と、いう、オブジェに触れていると、こう、どうしても、それを持ちそのままレジに吸い寄せられてしまう。これは悪い癖だ。駄目だ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!え、よくわからない。買うのから逃げるのが駄目なのか、買わないのから逃げるのか、よくわからない。

で、やはり逃げるようにして隣に眼をやると、あゝ、中原淳一。

111年目の、ってこれはさて、キリが良いのか悪いのか。
よく、生誕75年、とか、生誕110年、とかあるけれども、ぶっちゃけキリが悪いだろ、と思いつつも、やはり、人間は数字に縛られている。ANNIVERSARY、という魔法の言葉に、ついつい踊らされているわけだ。
内容は、これまた濃厚だ。特濃だ。中原淳一の絵で溢れている。値段もお手頃だし、買いだな、と思うものも、買わない。
まぁ、これはどうやら図録のようだ。美術本コーナーは大量の美術展の図録で溢れている。

そして、その横には麗しい蘭が咲き誇っていた。

まぁ、これも図録のようなものだろう。大山崎山荘美術館、というのは、私も一度だけ訪れたことがあるが、誠に美しい美術館であり、館内の椅子に座っているうちに、はて、ここは確か私の別荘では……、と、妄想と現実が入り交じり、正気ではいられなくなる、そのような場所である。

おお、今なんとなしに調べると、来年の1月に松本竣介展をやるようだ!松本竣介。早逝の天才画家。松本竣介の絵も素晴らしいよねー。

松本竣介は耳が聞こえなかった。それは確実に絵の中に根ざしているように思う。


さて、そんな楽しい妄想ばかり囚われていると、眼の前に美しい本が顕れる。

うぉい、函入かい。いいなぁ、と本を出すと、まぁ瀟洒。白と青。色なんていらないよ。だって、詩の色があるじゃないの。それを読んで感じて視てみなさい、ってことでしょーよ。にしても、この絵、めちゃくちゃいいなぁ。マティス感もあるし、今年観た本の中で一番美しいよ。買おうか迷ったが、然し、これはまた今度にしよう。今は手持ちが少ないからな。でも美しいよ。
著者の人を識らなかったが、アルチュール・ランボーの全訳をしていたり、しかも、この本、装画が羽良多平吉か。やはり私は天才だ。良いものがすぐわかる。いや、私のような無能にこそ圧倒的な光輝を持ち吸い寄せる羽良多平吉が天才なのか。

その横に、これもまた港の人から出版されている本だよ。

うぉい!なんてぇきれいな本なんだい。これは実際手にとって頂かないとわからないだろうな。まじで美しいし、いい匂いもするよ、このオブジェ。
こんな美しい人はそうはいまいよ。結婚、その二文字が私の脳内でスパークして、いや、それよりも、この隣り合った詩集たちが結婚するほうが、よほどきれいじゃないか、そう思えたものだ。詩集の結婚。いや、『幸福の王子』さんも『オレンジ月夜』さんは歌集なんだよ、雪雪さん。なにぃ?するってぇと、歌集の結婚か。そうしたら、詩集が産まれるかもしれねぇな。

で、この2冊にノックアウトされて、ふらふらと倒れた所に、以前、詩人の素潜り旬さんがつぶやいていた北尾修一さんの本が。『調子悪くて当たり前日記』。いや、これの前作かな。
これはとても気になっていたので、手に取り、購入を決意。

では、あの歌集たちはどうするか。まぁ、私が割って入ることはあるまい。
なぜか、こう、頭の中で弄んでいたい、そんな本、というものはあるものだ。あの2冊はそんな本だ。
ああ、眼福だなぁ。あの二冊、夢みたいにきれいだった……。

で、『調子悪くて当たり前日記』に加えて、だ~いすきな『HUNTER×HUNTER』の最新38巻、『あかね噺』13巻を加えて、レジにてお会計。
どんどん金が無くなるなぁ……。







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