秩父札所観音霊場九番ものがたり
『その昔、明智の郷に御堂あり。
小さな寺の近くには、母と息子がひっそりと人目をしのんで、暮らしていた。母は貧しく目も見えず、一人息子も小さくて外で働くことができず。
三度の食事もままならぬそんな苦しい生活に、ひたすら耐えていた。
そんな貧しい母子でも武甲山に手をあわせ、春夏秋冬それぞれの自然の恵みを頂いて、静かに暮らす姿には豊かな心を和ませる。
母は息子に手をひかれ、毎朝寺にお参りし、阿弥陀如来に手を合わせ、息子のどうぞ幸あれと心静かに祈る。
息子は今日も山郷の幸を求めて