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エッセイ

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#眠れない夜に

「幸せですか?アナタ、今」~何かの勧誘とのバトル~

 駅前でスーツの男に話しかけられた。 僕はイヤホンで音楽を聞いていたので奴が何を言っているか聞こえなかったし、それでなくても無視を決め込んでいたのだが、あまりにもしつこいので足と音楽を止めた。  「アナタ、今幸せですか?」 という趣旨のことを聞かれ、金銭的な話と宗教的な話を散々された。基本的にある程度の幸せはお金で買えると思っているので、幸せとお金の関連性はそうそう否定する気も無いが、それに宗教のエッセンスをプラスするなど言語道断。  僕が相当不幸そうに見えたのか、相当

低価格チェーン店の老フードファイター

 先日、昼に安いラーメンチェーンに行った。 そのお店は、無駄に安いので(無駄かどうかは知らないが)、変な人もたくさん来る。 そんなお昼の1コマ。  4人席のテーブルが3つ並んでいて、一番手前は既にヒトがいたので僕はその隣、真ん中の4人席に座る。しばらくすると見た感じ50歳位のおっさんと、その母(おっさんが「お母さん」と呼んでいたので間違いない)が来店した。50歳くらいのおっさんの母親なので見た目は80歳くらいで、もういいお婆さんだ。  二人は、四人席を二人で使うのをためらっ

納豆と男の子

 “近くのコンビニを探しても見つからない。いつもそばにあるのが当たり前過ぎて、いつの間にか失っていたことにすら気付かない。切なくて、悲しくて、僕はこぼれる涙を眩しすぎるコンビニの蛍光灯のせいにした。”  …納豆の話です…。 無性に食べたくなって、先日、ご飯を炊いてからいざコンビニへ。 がしかし、近所にある二軒のコンビニどちらも品切れ・・・。 凹みますよね・・・。自宅でふっくら炊き上がっているであろう長野県産コシヒカリになんて詫びればいいのか。  仕方がないのでお惣菜を物

月明かりに照らされて 【中華屋のおっさんの考察】

 先日、お昼ご飯を食べに近所の中華屋に行った。  店内のテレビではモノマネ番組の再放送がやっていて、ボリュームもそれほど大きくないので店内にいる客も注文した品が来るまでの時間つぶし程度に眺めるくらい。  程なくしてオッサンが入店した。   60歳前後だろうか。小柄で入店時から若干笑みを浮かべた髪の薄いオッサン。  彼は席に着くなり定食を注文し、テレビに目をやる。テレビで流れるモノマネのそれを観て、オッサンは「似てんなぁ・・・。」と呟きながらケタケタと笑い始めた。おそら

キングサーモン

 午前中に都電荒川線に乗った。 都電はお年寄りの乗車率が多いので普段は席が空いていても座らずに、次もしくはその次に乗ってくるであろうお年寄りのために空けておく。  その日は徹夜明けで疲れていて、席もガラガラだったので座っていた。  そもそもなぜ都電がお年寄りの乗車率が高いかというと庚申塚という駅があるからで(たぶん)、その駅は巣鴨の地蔵通り商店街と直結している。巣鴨は言わずと知れたおばぁちゃんの原宿で、地蔵通り商店街と言えばとげぬき地蔵があるお寺の前を通る商店街だ。  おばぁ

その女、ヴィトンにつき

 朝の通勤ラッシュもひと段落つき、乗車率で言うと70%程の電車の中。僕の向かいの席に座り、ルイ・ヴィトンのトートバッグを持った70歳前後であろう女性の話。  年配なりに着飾ってはいるがくたびれた服。ほぼ白髪で手入れのされていない髪はやつれた感があり、靴も古く薄汚れたパンプス。その風貌とピッカピカのルイ・ヴィトンが相まってなんともいえない荒廃感が漂う。何が彼女を突き動かすのか、髪や服装はどうでもよくても、バッグだけはということなのだろうか。まさに究極の一点豪華主義。もはやその