見出し画像

低価格チェーン店の老フードファイター

 先日、昼に安いラーメンチェーンに行った。
そのお店は、無駄に安いので(無駄かどうかは知らないが)、変な人もたくさん来る。
そんなお昼の1コマ。

 4人席のテーブルが3つ並んでいて、一番手前は既にヒトがいたので僕はその隣、真ん中の4人席に座る。しばらくすると見た感じ50歳位のおっさんと、その母(おっさんが「お母さん」と呼んでいたので間違いない)が来店した。50歳くらいのおっさんの母親なので見た目は80歳くらいで、もういいお婆さんだ。
 二人は、四人席を二人で使うのをためらったのか、僕の隣に座った。店員としてはありがたいのだろうが、僕としては気まずい。そんなこちらの感情には気付く筈もなくゴリゴリ隣に座るもんだから、傍から見れば親子三世代のテーブルみたいになっていてすげぇイヤだ。
 着席するとすぐに息子はトイレに行ってしまい、母は店員を呼んで勝手に注文を始める。

「ラーメンの大盛り2つと、チャーハンと、餃子」

80代(であろう)の女性が大盛りを喰らうのかと度肝を抜かれ変な顔をしていると、オーダーを受けている店員も僕とおんなじ顔をしていて、「お二つとも大盛りでよろしいですか?」と、僕の聞きたかった質問をサクっとしてくれた。

女性は凛としたキメ顔で
「大盛りでいいです!」
と返答。

ばぁさん・・・。何の大会だよこれ・・・。

店員は
「チャーハンは、半チャーハンのセットがございますが。。。」

「二人で食べるから大盛りをひとつで!」

どこの世界に大盛りラーメンと0.75人前のチャーハン喰らう80代がいるんだよ。育ち盛りか。

 息子がトイレから帰ってきて、当然婆さんの発注した内容を咎めるかと思いきや、息子は何を注文したのかすら聞かない。

 僕はといえばiPhoneでやっている4人麻雀が手につかなくなってしまい、ガッツリ東二局で親ッパネを直撃された。

 そんな折、女子高生が3人来店し、隣の4人席に座った。

僕→親子→JK という布陣。

さらにテンションがあがる。

 女子高生はギャルではないが、今どきの感じでワイワイ楽しそうにメニューを選ぶ。しかし残念なことに、親子が邪魔でJKがヨクミエナイ。

「オッサンが邪魔でみえねーよ。」

 と思っておっさんを見ると、なんとオレ以上にJKをガン見していた。それはもはやガン見というレベルではない。普通であればそれなりにJKに気付かれないようにしたり、たまには目をそらしたりするものだが、おっさんは完全に凝視。子供が道で見つけたアリの行列に釘付けになるくらいの集中力で完全に両眼がホールドされている。
 誰か何とかして・・・。と思っていると、親子の元に大量のラーメンとチャーハンが届く。息子はそれを見ても何も言わず。当たり前のように食べ始める。それから遅れること数分。店員がもう一度親子のテーブルに餃子を持って現れ、息子が、「餃子も注文したの?」と母に聞く。母は、「食べるからいいの」と強がりを言うが、さっきから大盛りのラーメンがまったく減っていない。息子はそれをどうするわけでもなく、「いつもはチャーハンか餃子のどっちかなのにね」と返す。
 なるほど、毎回二人は同じメニューを食べているのか。
 と、そんな親子の会話の最中でもおっさんは5秒JKを見たら一口ラーメンをすするという筋トレで言うところの“サーキット”みたいな行動を何セットも繰り返していて、僕が少し前からおっさんに対して薄々感じていた、「あぁ・・・。ちょっとアレな人なのかな」という疑念が確信に変わる。

 JKは、確実に視線に気付いているだろうが、「チョットおっさんチョーキモいんですけどぉ」的な台詞を言うほどギャルではなく、暗黙の了解で「無視」という方向性が議決されたようだ。
 くどいようだがその間、婆さんのラーメンはまったく減っているようには見えない。麺が延びてむしろ増えているようにすら見える。
 その隣で僕はスタミナ定食を半分残すというスタミナをつけたいのかつけなくないのかわからないような所業でその光景を見つめていたが、そうこうしていると別の女子高生2人組が来店し、一連の騒動の間にいつの間にか空席になっていた逆隣の4人席に座った。
 期間限定でやっている、生ビールが半額になるという趣旨のキャンペーンポスターをその女子高生が見て、

「・・・ナマ祭りだって・・・」

と、知ってか知らずか意味深に聞こえる声のトーンで言ったのでその時点でいろんな意味でお腹いっぱいになった僕は、婆さんの完食を見届けずに店を出た。

#眠れない夜に

いいなと思ったら応援しよう!