納豆と男の子
“近くのコンビニを探しても見つからない。いつもそばにあるのが当たり前過ぎて、いつの間にか失っていたことにすら気付かない。切なくて、悲しくて、僕はこぼれる涙を眩しすぎるコンビニの蛍光灯のせいにした。”
…納豆の話です…。
無性に食べたくなって、先日、ご飯を炊いてからいざコンビニへ。
がしかし、近所にある二軒のコンビニどちらも品切れ・・・。
凹みますよね・・・。自宅でふっくら炊き上がっているであろう長野県産コシヒカリになんて詫びればいいのか。
仕方がないのでお惣菜を物色していると、お世辞にも上品とは言えない、小汚いばぁさんに話かけられた。
ババァ「男の子見なかった?」
僕「・・・・・・?」
僕「・・・・・・?」
僕「・・・・・・?」
僕「・・・・いえ・・・・」
頭の中で急激に細胞分裂の音が聞こえる。
逆かもしれない、脳細胞が壊死していく音かもしれない。
つまりはちょっとしたパニック状態で、今の気持ちを表情に出すこともできず無表情で突っ立っていると、
「あらそう。来たら捕まえといて。」
と言って去っていった。
パニック過ぎて脳細胞が総入れ替えした気がした。
「男の子」って誰だよ。特徴も何も告げず、ただ「男の子見なかった?」って・・・。
実際、僕の発した「いいえ」は、上記の質問に対しての正確な回答とは言えない。仮に20歳以下を「男の子」とするのなら、そのとき店内には少なくとも3~4人は「男の子」がいた。このコンビニに来る道中も数人「男の子」を見た。
ババァはレジの兄ちゃんにも僕にした質問とまったく同じことを問い、その兄ちゃんは無視していた。多分、この質問をされたのは一回や二回ではないのだろう。
そして、「男の子を見つけたら捕まえておけ」という強烈に曖昧且つ壮大なミッションを託し、ババァは隣のガソリンスタンドに入っていった。
多分同じミッションを課すためだろう。