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障害の社会モデル

注釈


障害者の権利に関する条約

2006年に国連総会において、「障害者の権利に関する条約」が採択され、日本は、2014年にこの条約の締約国となりました。

条約は、国際的な取決めで、憲法が、条約の締結に おける誠実な遵守を求めていることから、条約は国の法律よりも優先されます。

この条約は、すべての障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進する目的で制定されています。

また、その社会の促進のために、法律の整備や行政の措置を含めたより具体的な社会モデル作りが求められています。


障害の社会モデル

障害者の権利に関する条約で求められている「障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進する」社会のあり方とはどのような社会でしょうか。

障害者の権利に関する条約おいて、「障害」は、障害者にあるのではなく、社会にあると定義されています。この社会的な障害は、「社会的障壁」(しゃかいてきしょうへき) と呼ばれています。

障害者にとって、社会に障害ができてしまうのは、社会が、障害者の障害に沿った社会ではなく、障害のない多数を占める方々の事情に合わせて作られた社会になっているからです。このため、社会は、障害者とって、さまざまな面で、生きづらい環境になっている場合があります。

また、「障害は発展する概念である」と定義されていて、社会との相互関係において、変わるものと見做されています。

障害者権利条約に定められているこのような障害と社会のあり方は、「障害の社会モデル」と呼ばれています。

4つの社会的障壁

社会的障壁は、4つの要素があると言われています。物理的な障壁、制度的な障壁、文化情報面での障壁、意識上の障壁です。この4つは厳密に分かれているわけではなく、重複することもあります。

物理的な障壁

社会において物理的に生じる障壁です。
階段、段差、隙間、狭い通路、 手の届かない設置物、通行の邪魔になる路上の放置自転車など


文化情報の障壁

文化活動の機会が得られない、新聞が読めない、信号がわからない、テレビの内容がわからない、点字や手話の配備がないなど、総じて情報を得られないなど


制度の障壁

社会の制度によって生じる障壁です。
障害の困難さを理由に入学試験、資格試験が受けられない、学校の入学や労働の機会を制限するなどです。

意識上の障壁

障害に対する偏見や差別、障害を受け入れない無理解、無関心など、心のバリアとも言われています。


障害者の多様性

障害者、障害、とひとことで言っても、障害者が社会に感じている障害は、障害の種類や程度、文化や社会的背景によっても、それぞれ異なります。

障害者の権利に関する条約では、このような障害者の多様性が認められています。障害者が個人として、人権及び基本的自由の享有、固有の尊厳の尊重権利を主張することができます。

EqualityとEquity

障害者の権利に関する条約の定義する社会の実現において、欧米で論じられているのが、Equality(平等)とEquity(公平)です。

Equality (平等)は、全ての人が同じ条件を同じように受けるという概念です。個人の障害に関わらず、全ての人にひとつずつの箱を渡します。箱に乗る能力のない障害者は壁の向こうのスポーツ観戦を観られません。箱を使えても壁が障壁になって、壁の向こうが見えないこともあります。

障害者にとっての社会的な障害は、下記のような目に見える障害だけに限りませんが、わかりやすく例えると障害者にとって、障害のある社会というのは、このような社会になります。

Equity (公平)は、誰もがスポーツを観戦できるように、各々に必要な条件を受けとります。この場合、社会的な障害のない人は、必要な人に箱を渡し、障害者は、車椅子で乗れるスロープが渡されています。
スポーツ観戦するという目的において、公平な分配になります。


障害の社会モデルの課題

障害者の権利に関する条約の定義する障害の社会モデルは、障害のある人もない人も、共に生きる「共生社会」をつくることを目指しています。

障害者の権利に関する条約の掲げる障害の社会モデルの実現には、社会の部分的改良ではなく、社会に根差す考え方自体が、条約に沿うような形で変化、促進していかなければなりません。

今日の日本の社会は、障害者が、社会に出ていくことはまだまだ難しい社会です。

高齢化社会も伴い、誰もが、障害者になり得る社会です。自分自身だけではなく、家族や友人が障害者となった時にも、人として、障害のない時と同じように生きられる社会になればといいなと思います。

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