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#28 お仕事しなさいしなさい

今年は少し自分を大切にして、気力が戻る様に、特に仕事へのパッションが戻る様にしたいと考えているのだが…

例えば午後に一度店を閉めて休息を取る案など、妻が色々考えてくれている様だが正直、実現は難しい案ばかりで、やはり大きな変更は難しいのかなと思う。

今の店を開業する時に事業計画書を作りながら考えていた開業動機。
“この地域のインフラみたいなパン屋になりたい”

フランスはパリで働いた店は、その地域の食料インフラと言って良い存在だった。
ご近所さんが朝から何度もやって来て店主と会話を交わしながらパンを買って行く。
買いだめはせず、必要な時に必要な分だけ買って行くのがフランス流だと思っている。
石を投げればパン屋に当たるパリならではなのかもしれないけど。

近くに違うパン屋さんも沢山あるのでお客さん達はそれぞれにお気に入りの店を持つが、それでも老若男女、金持ちもホームレスも同じ様にパンを買って行く。
自分で炊く日本のお米と決定的に違うのが、その公平さだと思う。
そりゃ高いパン安いパン、違いはあるが、基本的にパンの前では人は平等なのだ。

地域の食生活を支える存在、そんな大切な場所で外国人の私が働けるのが心底嬉しかったし、誇らしかった。
日本のパン屋で働いていた時は技術を覚える、仕事だからやる、という認識でしかなかったがフランスで私にとってパンを作る事が、楽しくて幸せな事だと知る事ができた。
だから自分の店もそういう存在を目標にするのは自然な事だった。

もちろん日本で夕食のテーブルに日々パンが上るほど、日本人にとってパンが身近な存在ではない事は判っているので、食べ方や保存の仕方や、色々発信してパンについて知ってもらう活動を行った。
毎日休み無く18時間は作業してヘトヘトになりながらパソコンに向かう。
座った瞬間、気を失ってなかなか進まない。
いや、パソコンどころかトイレで座った時にも一瞬で意識が無くなって、気がついた時には用を足したかどうかも分からない…

そんな中で何とか発信した情報をちゃんと受け止めてくれる人がいた時は嬉しかったが、でもそのうち引っ越して行かれたりして…
そして新たに引越して来られた人達にまた一からパンについて説明する、なんて事がよくあった。
地域性なのだと思うが、そんなに引越しっていっぱいあるんだ!と驚かされる。
そんな状況では発信する情報のターゲットを誰に設定すればいいのか分からないし、何度もご破算にされて、賽の河原で正直ちょっと疲れちゃった。

お客さんから以前に作っていたメニューをリクエストされる事があり、嬉しくは思うが簡単には応えられないので“気が向いたらやる”といつもツレなく答えるが、やっぱりどこか頭に引っ掛かって、気がつくと無理して作ってしまっている事がよくある。
期待して貰えるのは嬉しいし、喜んでくれる顔を見るのも嬉しい。
でも頑張って作った時に限ってリクエストしてくれた人は来てくれなかったりするんだけどね…

もちろん、製造スタッフを増員すれば私の負担は減る。
でもいくら募集をかけても来てくれないので諦めて、数年前に改装した際に売り場を広げて厨房を縮小してしまったので、狭くて二人では作業し辛くて逆に効率が落ちる。
今は一人でやる方がベターなのだ。

私が楽をするという事は、お客さんが買い辛くなる、スタッフの負担が増える、売り上げが減って業績が落ちるという背反を生む。
だから図に乗って楽したらバチが当たるんぞ!
という意識は常にある。

それに私なんて働いてなけりゃタダのゴミに戻ってしまう。
日々無為に過ごしてマスばっかりかいてた頃のゴミみたいな自分が嫌い。
面白い話なんて出来ないし、コミュニケーションが上手なわけでもないし、趣味も全て捨ててしまった面白味も何もない空っぽな自分を改めて自覚するなんてイヤ。
お客さんが“手ぇ抜きやがって!”と離れて行ってしまうのは怖い。

とか考えてしまうワーカホリック。
いつもどこか自分を痛めつけてなきゃ不安になるのかな?
サボるのは怖いし、でも追い込み過ぎたら続かないし、難しいものだね。


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