Momotaro ロマンス〜Bye Bye ルーティン|#スピンオフ
(ヘッダーは、大橋ちよ様にプレゼントして頂きました。厚く御礼申し上げます。)
Momotaroロマンス
〜Bye Bye ルーティン〜
也哉子は、生活するのに飽き飽きしていた。
毎朝、何らかのゴミ出しをする。
満員電車に立ちっぱなしで揺られ、後ろからせっつかれるように、人の波に紛れて移動する。
出社したら朝礼。ラジオ体操。席に着いて大量のメールチェック。
仕事が終わればまた電車に乗り、いつも似たような惣菜を買って、帰宅する。
春も夏も秋も冬も、そんなことの繰り返しで、自分は毎日時間を浪費しているだけではないか、と思うのだった。
(―――もう、アラサーだよ・・・)
出会いなんて無い。ほとんど会社にいるから、顔ぶれは変わらない。
(どうなっちゃうんだろうな、私・・・)
―――年末年始の帰省には、また親たちから、結婚について訊かれるだろう。
―――いい加減に答えて、いつものように炬燵で蜜柑を剥くのだろう。
土曜日が来て、也哉子は久し振りに街へ出てみた。ぐるぐる巻いたマフラーに顔を半分埋めて、ウィンドウディスプレイを眺めて歩いた。
キラキラした中に、フューシャピンクやフォレストグリーン、アメジストカラーの服や小物、プレゼントボックスなどが展示されている。
(まあ、クリスマスだもんね・・・)
所在なくぶらぶらするうち、一つのウィンドウに、北欧を感じる見事な装飾があって、立ち止まってじっと見惚れた。
(あのコート、良いな)
そこでは、恋人たちがプレゼントを交換するシーンを再現していた。
レディースのマネキンは、柔らかく暖かそうなオフホワイトのコートを纏っていた。
(あんなコートを着たら、気分が上がりそう・・・)
「―――Cela vous plaît-il ?」
突然後ろから声をかけられ、どきんとして胸を押さえて振り返った。
背の高い、優しそうな瞳をした若い男性が、微笑んで立っていた。
「Je l'ai exposée.」
(日本人じゃなくて、ハーフなの?)
何を言っているか分からなかった。ただ、ディスプレイをしたショップの関係者だろうということだけは見当がついた。
「excusez-moi・・・」
ハイネックにベストを着た彼は、手を伸ばして也哉子のマフラーを丁寧に巻き直してくれた。
「あなたには、エレガントな巻き方が似合う。
勝手に触って、ごめんね・・・」
今度は彼は日本語で言って、また吸い込まれるような笑顔を見せた。日本語になると、急に若返ったようだった。
ウインドウの奥に設置された大きな鏡に映った也哉子は、スタイルまで良く見えるほど姿が変わっていた。
(巻き方ひとつで、こんなに変わるんだ・・・)
「あなたって、一体・・・?」
「僕ですか?―――僕は、Momotaroと言います」
前髪をさらりとかき分けて、【Momotaro】は白い歯を見せて笑った。
【continue】
▶Que Song
クリスマスソング/back number
こちらの小説は、以前に執筆した【Momotaro ロマンス】のスピンオフで書いたものです。
✨️🎄Momotaroロマンス本篇🎄✨️
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