映画と本はちょっと背伸びするのが良い
これまでの経験から映画と本は、ちょっと背伸びして触れるのが良いと思っています。その背伸びこそが思いがけない世界を教えてくれることがあるからです。
◆フランスの監督、フランソワ・トリュフォーの「終電車」との出会い
フランソワ・トリュフォーというフランスの監督がいます。どっちかというとこの監督は苦手なのですが、多分友人に誘われたのでしょう。今でも忘れられないのが1980年公開の「終電車」です。20代前半、ひょっとしたら高校生の時に観ました。今思うと、随分と背伸びした選択でした。
作品の劇中劇という作りや、現実と虚構をひっくり返されるようなラスト、主演のカトリーヌ・ドヌーブが美しいだけでなく自分の生き方のある女性を演じてたこと、これら全てが当時の私には新鮮な驚きでした。
でも何より衝撃だったのは主演の男性、ジェラール・ドパルドゥーがいわゆる「美男子」とは程遠い風貌の役者だったことです。
なんでこんな醜男が美の代名詞みたいなカトリーヌ・ドヌーブの相手役なんだ??
若かった私はその理由を知りたくて、ジェラール・ドパルドゥーの映画を観まくりました。
◆「かっこいい」とはこういうことか
そして「シラノ・ド・ベルジュラック」で知性と思慮深さと剣の腕を兼ね備えたシラノを演ずる彼に男の本当のかっこよさを感じられるようになり
「カミーユ・クローデル」でこれまた美の代名詞、イザベル・アジャーニが演ずるカミーユを惹き付けてやまない男、ロダンを演ずる彼に男の身勝手さの魅力をまざまざと教えてもらい
「グリーン・カード」で完璧ではないが愛情深い男の素敵さを観せてもらいました。
◆本も映画も背伸びは人生の地固め
背伸びした結果の「終電車」という一本の映画との出会いが、若造だった私に映画も人間も一筋縄でいかない広くて奥深いものだということを教えてくれました。
人生の地固めみたいなこういう出会いは、若い時に経験するに限る!心底そう思っています。