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僕の家には本がなかった

僕が生まれた家には本が一冊もありませんでした。新聞とカレンダーはありましたが、僕が生まれる前に本を読む家族は誰ひとりいませんでした。

僕が生まれてから、もらってきたお古の絵本は増えましたが、新しく本を買ってもらった記憶はほとんどありません。

まあ、家にお金がなかったんですね。クリスマスにサンタさんから缶ジュース(しかも250mlの細い缶)をもらったことがあるくらいですから。
と言っても、昔のことなんで、お金がない家は近所にたくさんありました。家に本がなかったのは、家族に本を読む習慣がなかったからです。

それなのに、自分がどうして本を読むようになったのか。学校の図書室で本を借りて読んだ記憶があります。サトウハチローさんの「あべこべ物語」を読んで面白かったのを覚えています。

自宅に本がないのが普通だと思っていたのですが、小説家になった人のエピソードを読むと、親が学校の先生だったとか、小さい頃から本に囲まれて育ったとか、自分の境遇との違いに愕然としました。
本がない家に育って、よく小説が好きになったなと思います。

別に貧乏自慢したいわけじゃなく、言いたいのは環境の差が絶対ではないということです。自宅に本がなくても、なにかのきっかけで本を読むようになったり、なにかのきっかけで小説を書くようになったりするわけです。

なにがきっかけになるかわからないので、子供にはできるだけたくさんの「きっかけ」のネタを提供したいと思っています。


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