狩りガールの存在論的転回(前編)|民族誌を読む#4|Quiz
このシリーズ、字数は多いわ小難しいわと不評でして、どげんかせんといかん!と東国原英夫は思うたとです。あと個人的には、執筆に時間がかかりすぎることをなんとかしたかったとです。
で、字数が多い問題は2回に分けることで、小難しい問題は小分けしたり多くを伝えすぎないことで改善しよう、と。クイズ形式にしてるってことは、なるべく読んでもらって関心持ってもらうというサプライヤー志向があるわけでして、ならば変わらなきゃ!
今回取り上げる民族誌は、『ソウル・ハンターズ―シベリア・ユカギールのアニミズムの人類学』って本(2018年、亜紀書房 )。コロナの頃に読んで、いま涼を求めて再読するのだ。
書いたのはレーン・ウィラースレフって文化人類学者で、現在、国立デンマーク博物館の館長なのだ。
フィールドはシベリアのコリマ川上流域、対象となったのはユカギールという人々。
ユカギールって誰?
Wikipedia「ユカギール人」の項より部分的に引用しよう。
彼らのシャーマニズムについて『文化人類学事典』から補足するよ。
本書によると、〈ユカギール〉とはどうやら強固な民族意識に根ざした先天的アイデンティティではなく、政治経済的な状況に応じて操作される選択的アイデンティティであるらしい。
どんな本か教えて!
ユカギールは狩猟を通じて動物の魂と対話し、自然界とのバランスを保つ独自の世界観を持っている。だから著者は、自分もハンターとなり狩猟民の生活に深く関わりながら、アニミズムの意義を再評価するんだ。
ひとつキーになるのが「パースペクティヴィズム」という概念だよ。これは、人間、動物、霊など異なる存在がそれぞれ独自の視点や現実を持つとする考え方なんだ。これには、〈人間/自然〉という西洋的二元論の見直しを狙う含意もあるんだよ。
狩猟や儀礼において動物や霊と対話し、彼らの視点を理解し関係を深めようとするユカギールの行動様式を著者は重視する。狩猟を行う際に、「獲物に半分同化しながらも、しかし完全に同化しきることがない」という危ういバランスを保つことが、狩りの成功に必須だと語られるんだ。
このこと、すなわち自他の境界はどこか? それははたして存在するのか?を突き詰めた本だともいえる。でもこの議題を哲学的に掘り下げるのはやめようと思う。下に貼ったnoteで詳しく解説されているからね(オススメ!)。
注目されている理由
アフターコロナの昨今、キャンプだの釣りだのジビエだのが注目されてきたけど、狩猟生活って狩って食うだけの単純なもんじゃねえぞ、というのがわかるからかな。
ユカギールにとって狩猟は、単なる生計手段ではなく、精神生活の中核にあるのさ。狩猟は霊との対話を含む儀礼的行為であり、自然界との深い関係を象徴している。人間と動物、さらには無生物に至るまで霊魂が宿ると考え、それらと交流し尊重する。エルク(ヘラジカ)になりきるための儀礼をとおして、狩猟の成功や自然界との調和を祈るんだ。
このアプローチは、マルチスピーシーズが扱う異種間の共生やコミュニケーションの例ともなるだろうね。人間と他の種との持続可能な関係が語られているから、SDGsの実践にも模範を示してくれている。
ではクイズです。
解答は次回!
まだ第5章だけど、すでに解答がすごいボリュームになってるから、いったんここで区切ろう。第6章以降はいつか別の形でまとめようと思う。バイバイキーン!