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最強のラテン音楽を求めて|恋してカリビアン編|Liner-note

カリブ海に面した地域でこれまで話題にしたのは、主にはキューバ、プエルトリコ、ドミニカ共和国など大アンティル諸島だったね。でも、このあたりは植民地時代の名残で言語的に多様で、音楽も種々雑多。いくつかピックアップしてお届けすることを今日の課題としよう。

まずはガリフナの音楽プンタ/Puntaから。
ガリフナは主に中米のホンジュラス、ベリーズ、グアテマラ、わずかながらニカラグアのカリブ海沿岸に居住する少数民族。奴隷として連れてこられたアフリカ系と小アンティル諸島のアラワク族を祖先に持つ人々の総称なのだ。

彼らは太鼓とマラカスで伴奏するさまざまな音楽ジャンルを持っている。太鼓は丸太をくり抜き、アンテロープの獣皮を張る。ガリフナ音楽ではセグンダと呼ばれるバスドラムが主役なんだって。

なかでもプンタは、本来は死者を弔う儀礼音楽だったんだけど、商業化され世界的に注目されるようになった。そうした新しいプンタは〈プンタ・ロック〉と呼ばれている。

紹介するバンダ・ブランカはそのプンタ・ロックの旗手で、1971年に結成され現在も活動しているが、主に1980~90年代に活躍したんだ。ロックというよりメレンゲと混交したダンサブルな曲が多く、下のYouTube映像もそのひとつ。プンタの要素は打楽器のリズムとわかりやすくフィーチャーされた間奏に見出すことができる。

もし興味があるなら、「Sopa de Caracol」「Muevete y Sacudete」「Fiesta」「Lengon」あたりをYouTubeで検索してみて!

彼らはホンジュラス出身のメスティーソ中心のバンドで、ラテンマーケットに向けてスペイン語で歌うが、これとは別に、ガリフナ人自らが演奏しピジン語で歌い、聞くのも主にガリフナ人のプンタ・ロックがあって、音楽的にはかなり違う。こちらのアーティストはベリーズ系が多く、ペン・カイエタノ、アンディ・パラシオらがいる(聞いたことがない)。また、米国のロサンゼルス、マイアミ、ニューヨークなど都市部に、ガリフナ・コミュニティが存在し、そこからHIP-HOP色の強い新ジャンルが生まれている(ほぼ聞いたことがない)。

Banda Blanca “Oye Este Canto” (1992)


次はトリニダード&トバゴ(以下T&T)のカリプソ/Calypsoだ。
英語なんでラテン音楽とは言えないけど、堪忍ね〜

T&Tのエスニック構成の最大は黒人系住民で、1833年の奴隷制廃止後にサトウキビ・プランテーションの契約労働者としてカリブ各地やアフリカからやってきた。同じ時期に同じ目的で集まったインド系の人もこの国には多い。ジャマイカと同じ1962年にイギリスから独立。

で、カリプソはカーニバルで発達した音楽だとされているんだ。T&Tのカーニバルは、ブラジルのリオ、イタリアのヴェネツィアとともに、世界の三大カーニバルに数えられているよ。第二次世界大戦終了後、T&T人はイギリスに出稼ぎに向かったんだけど、ここでカリプソがブレイクした。最もよく知られているカリプソの曲は「バナナ・ボート」で、ジャマイカ系のハリー・ベラフォンテの歌で知られる。

他にも人口に膾炙したカリプソニアンとして、グレナダ出身のマイティ・スパロウがいる。彼のソウルフルな歌声で、カリプソはよりダンサブルな傾向を増したと言われている。「Congo Man」でのクレイジーな絶叫ボーカルは、一度耳にすれば絶対に忘れないと確約するよ。

でも、ここで紹介するカリプソシンガーはデヴィッド・ラダーだ。1953年生まれの彼のほうが、吾輩のラテン音楽ムーブメントのピーク時に近い。1986年に所属していたチャーリーズ・ルーツから離れてソロとなると、すぐに「The Hammer」と「Bahia Girl」という2大ヒット曲が生まれた。艶と勢いのあるボーカルとか、ソウルっぽい〈ソカ〉その他にも寄り添う柔軟な音づくりとかを評価しているんだ。

David Rudder “One More Officer” (1989)


最後はズーク/Zoukで。
フレンチカリブ(フランス領アンティル諸島)のマルティニークやグアドループで生まれた音楽。1980年代にムーブメントを起こし、世界中に飛び火したが、その後はパッとしない。吾輩は実はあまり知らなくて、カッサヴやマラヴォワ、ズークマシンなんかが入ったコンピ盤しか持ってない💦

ズークという語にはパーティ及び祭りという意味があるそうで、歌の多くはアンティル&フランス語系のクレオールで歌われる。道理で歌詞を眺めてもチンプンカンプンなわけだ。

打ち込みを多用した電子的な音感がズークの特徴で、一聴すると軽くて耳ざわりはいい。全般的に明るくハイテンポなイメージを持ってるんだけど、ゆったりしたテンポの曲は〈ズーク・ラヴ〉と呼ばれ、男女のダンス・ミュージックとして定番だ。カリブ界隈のフランス語圏の音楽と影響し合っていて、ハイチの〈コンパ〉、同じマルティニークの〈ビギン〉なんかとは特に親和性が高い。

やっぱり紹介するのはカッサヴということになるんだろうな。名前の意味はキャッサバ(タピオカ)のこと。1979年に結成され、1984年に「Zouk La Sé Sel Médicaman Nou Ni」をヒットさせた。メンバーはフレキシブルに出入りし、現在も人気を保っている。ジャズの帝王マイルス・デイヴィスもカッサヴの影響を大いに受けたとコメントしている。

Kassav' “Mwen Di'w Awa” (1984)


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