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第2章#25 子ども全員を全職員で見よう

もくじRemake『ホワイトな学校へ』

(約2900字)

校務分掌を校長が決めることは、「#9 いよいよ会議を減らす」で述べたとおり。

学級担任然り。
例えば、a学級の担任になったA先生は、A先生にa学級を任せたいという、校長の意向です。
しかしながら、相性とかちょっとしたボタンの掛け違いとかで、子供たちが落ちつかないことはよくあること。
前回述べたように、A先生が通常の努力(一人一人をよく見る、ほめほめ作戦など)をしているにもかかわらず、うまく行かないときは、遠慮なく助けを求めればよいのです。
一人で抱え込んではいけません。



管理職は常に状況を把握しておく

新学年がスタートしたら、管理職は、特に最初の1週間、毎日のように各学級を見て回り、担任と子供、子供同士の相性を確認する。
気になることがあったら、すぐにアドバイスする。
若手であれば、アドバイスの内容を学年主任にも伝える。
大変そうな兆しが見えたら、重点的に見るようにして、大変になる前に、担任に個別に方法を助言するなど手を打っていくと、だいたいの学級は、落ち着いてくる。
しかし、うまくいかない学級が毎年一つはある。
毎年決まった学級、学年というわけではないのだが、全学級問題なしということはまずない。
特に、学級編制替えを行った学年は、子供同士で思わぬ化学反応が起きることがある。

子供のわがままなのか、特別支援が必要なのか、担任の指導の問題か、問題の根源を見極め、それによって対応を考えていく。
対応はケースバイケースなので、一概にこれがベストとは言えないが、おおよその方針は以下のとおり。


授業妨害をする子がいる場合

授業妨害は、子供の「自分を見て」のサインである場合が多い。
例の、ほめほめ作戦で、多くの子は落ち着いてくる。

残った数名は、個別に対応する。
本人と話をして原因を考える。
学年が上がって勉強がわからないとか、担任の先生に構ってほしいとか、根源にはいろいろあるのだと思うが、落ち着かない理由が明確にわかることはあまりない。
自分の思いや考えがうまく伝えられる子は、きちんと伝えて解決していける。
そうでないから、もやもやして落ち着けないわけだ。
でも、先生に個別に話を聞いてもらうことで、多くの場合、心が安定し、改善につながる。
事実を親に連絡し、状況を伝えることで改善することもある。

それでも改善せず、授業が進めにくい場合は、全校体制で取り組む。
授業を進めにくい一部の授業、または全部の授業に補助が入り、担任が授業を進められるようにする。
補助に入った人の対応方法は統一する。
一部の子だけが落ち着かない場合は、その子たちが授業を妨げないように対応する。
授業をがんばろうとしている子の気持ちが萎え、学級全体に閉塞感が漂う場合は、がんばろうとしている子を褒めるなど。

授業が成り立ってくると、担任の力が蓄えられてくるので、担任一人でも大丈夫になったら、体制を解除していく。


教室から出ていってしまう場合

授業妨害の場合と同様、親に事実を話すことや、実際に様子を見てもらうことで改善する場合もある。

それでも改善しない場合は、まずは子供と約束する。
出ていくのであれば、居場所は担任の目が届く教室の前など、何分間、何をする等ルールを決め、それを守れる子であれば、担任で対応する。
保健室と決めて、保健室で静かに過ごせる場合は、保健室で対応することもある。
しかし、多くはルールを守れないと思うので、担任の目が届かなくなった場合は、ヘルプを頼む。手の空いている人や空き時間の先生に急遽対応してもらうことになるが、頻繁に逃げ出す場合は、予め分担し、補助の体制を組んでおく。

そして、対応方法は統一する。
対応する人は、その子が教室に戻るための支援をすること。
つまり、特別扱いはしない。基本見守るだけ。
その子が固まっているなら、そばで他の仕事をしていてよい。
逃げ回る場合は、追いかけると鬼ごっこ気分で楽しませてしまうので、目の端で確認し、近付かない。
特別扱いすると、いつまでも同じ行動が続くようになる。
校長も同様、校長室では預からない。
人手が足りなく、校長が見守る必要がある場合は、その場に出向き、見守る。(戻れる方法を話し合うことはある。)

その子自身が「逃げ出してもつまらない」「教室にいた方がいいな」と思えるようになるとよい。
対応している間に、理由を聞き出せるとさらによい。

そして、戻ることができたら、すかさず評価する。


特別支援が必要な場合

以上のような言動の原因が、発達障害に起因する場合は、さらに対応が必要である。
発達障害のある子供の場合は、環境が変わることにより、行動の変化が顕著なことがある。
今までは大丈夫だったことが、担任が変わったり、友達関係が変わったりしたとたん、大丈夫でなくなる。
その原因は、分かりにくく、相性と言ってしまえばそれまでだが、世の中自分と相性のいい人ばかりではなく、その度にうまくいかなくなったのでは、生活していけない。
だから、その子自身は、人との関わり方を身に付けていく必要がある。
そして、周りもその子の個性として受け入れ、その子との関わり方を身に付ける必要がある。

発達障害のある子は、周りがその言動に困らせられるかもしれないが、実は、一番困っているのは本人なのである。

その子の特性に合わせて人との関わり方などを教えてくれるのが、特別支援教室(巡回指導)。

原則発達障害の診断があり、保護者が希望すれば、その子にあった支援が受けられる。
特別支援教室の先生(巡回指導教員)、特別支援教室専門員、巡回心理士、スクールカウンセラーなど、いろいろな人が関わって、特別支援委員会(学校によって名称が決められていると思う)を開き、方針を決める。
保護者の協力を得たり、必要に応じて介助員をつけたりすることもある。
方針や、対応方法は、全職員で共有して、皆が同じ対応ができるように努める。


子供の居場所は、教室

こうやって対応していたら、人がいくらいても足りないのでは?と思われるかもしれないが、実際、私が勤務していた学校ではなんとか足りていた。
その理由の一つは、特別支援教室専門員などの特別支援に関わる職種の方々がよく対応してくれるという、人に恵まれていたこと(詳しくは次回に)。

もう一つの理由は、子供が教室で過ごせるようにすることを目指しているから。
全職員の協力体制をもって同じ方針で対応していると、一進一退はあるものの、目に見えて成果が表れてくる。

Y先生が言うには、管理職が明確で具体的な方針を示すことで、先生方がそれを拠り所にぶれずに対応できるから、成果につながるとのこと。

担任としては、うまく行かない時期は辛いと思います。
でも、そんなときは、他の人の力を借りながらでもなんとか乗りきることで、自身の力をつけてほしいです。


先程来、特別支援に関わる職種の名称が出てきました。
特別支援教室の制度については以下のとおりです。

https://note.com/api/v2/attachments/download/7df0442bf53bce89c85a153de7ef0e0e


このように、学校には、先生方を助けてくれる方々がいるのです。


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