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ショートショート、短編小説 創作集

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メンバーによるとってもステキな作品集をまとめてみました。 不思議な体験談、短編小説、ショートショート、イラストに物語つけてみた! などなど、盛りだくさんです。 ぜひご一読ください。
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#小説

文芸社×TOKYO FMのラジオドラマ賞を受賞作「こまちねず」をラジオドラマ化!

10代から20代に変わる頃の混濁した「あの感じ」をどうぞ(全文掲載) こまちねず 「東京に降る雪はどんなかね」 あれから3年が経ったが、 東京にはまだ雪が降らない。 このままずっと 東京には雪が降らないんじゃないかと思っていた。 雪が降らなければ、 僕は美浜に連絡する用が無い。 美浜も同じだ。 ニュースで東京に大雪が降ったと知れば、 きっと連絡してきてくれるだろう。 今日も僕の隣には知らない女の子が裸で寝ている。 僕の布団は裸で寝られるほど、温かいのに、 外は随分

【ショートストーリー】イラスト+BGMに、2人の作家がそれぞれ異なる物語を書く!? 3⃣ファンタジー

【イラストに物語つけてみた!】(第一弾)のラストは『ファンタジー』をテーマに、 【しょう】 【OHAGI】 の2名が物語をつけた作品。 ファンタジーという題材ですが、抽象的なイラストが多く、難しかったと思います。 二人の作家がどのように物語をつくったのか、楽しんでください!! それでは、まずは一作目 【しょう】による「エンドロール」です。 エンドロール 【画像①】 タイトル「エンドロール」 【画像②】 すべてが、過去になる。 剥がれ落ちてく意識の中で それだけ

「鍵の閉まる音」/都心で暮らす女性の細やかな感情の機微と、その切ない想いを綴った作品。

鍵の閉まる音 「ねえ、私たち付き合ってるのかな?」 このアパートで一人暮らしを始めてから この言葉を何度言っただろう。 だいたいこちらが期待している答えは返ってこない。 こちらが質問したのに質問で返ってくる。 「付き合うって何?」 「そう言うこと気にするタイプ?」 ああ、聞くんじゃなかった。 そして、いつもよりよそよそしくなって そんなに早く出かける用事もないくせに 「俺先出るわ」 さりげなく玄関先に鍵を置いて行ってしまった。 もう二度とこのアパートには戻

【ショートストーリー】世界中の人々が滅亡とループを自覚した世界を描いた短編

終末は週末に 死のう。 死んで全てを終わらせよう。 夜にかけるとか、生きていたんだよなとか。 とにかく死にそうな音楽をかけ、テンションを上げながら階段を昇る。 私の走馬灯は、どんなだろうか。 走馬灯って、そもそもどのタイミングでどんな尺で流れるのだろうか。 私は、これから死のうと言うのに、そんなことを考えてワクワクしていた。 ビルの屋上のフェンスを乗り越えて下を眺める。 そして ふと気が付くと逆さまの景色が、頭から足に向かって流れていった。 そうか。 私も

【短編】ちょっぴりドジだけど、心優しい吸血鬼少女の恋物語

かくしごと 私はいま、人生最大のピンチを迎えている。 彼に私の正体 〈吸血鬼であること〉 がバレそうなのだ。 天体観測が趣味の彼とは、 夜、一人で〈食料〉を探し歩いていたときに出会った。 彼の何かに惹かれたのか…… 幾度かの逢瀬の末、付き合うことになった。 ヒトと付き合うのは別に珍しいことじゃない。 私だって吸血鬼のお母さんとヒトとの間に産まれた。 吸血鬼は世間で言われているような、 血を吸った相手が吸血鬼になったり、死んだりすることはない。 吸血鬼は遺伝だ。 子

【これは運命?】学校の給水塔から聞こえる声に恋をした。

これはもう何年も前なんだけど、 俺が体験した不思議な出来事の話だ。 当時俺は入学したばかりの高校に馴染めずにいた。 学校とか人生とか なんかつまんねーなぁ って、退屈とヒマを持て余してたんだ。 クラスの連中とも馴染めないっていうか 陽キャも陰キャもそろって面倒くさいなって。 それでどっか一人になれる場所ないかって探して 屋上はどうかって思ったわけ。 屋上は鍵がかかってて入れないようになってるんだけど、 ネットでピッキングのやり方調べて試してみたら、 案外すんなり

美人のお隣さんと仲良くなったんだけど、なんか様子がおかしい件

これは俺が初めて一人暮らしを始めたころの話。 大学二年になり、ゼミが忙しくなったとか勉強に専念したいとかもっともらしい理由で親を説得し、実家を出た。 そのマンションは「ハッピーハイツ」なんてちょっとハズい名前だったけど、大学には通いやすいし、なにより家賃が手頃だった。 うるせえ親から離れ、自由気ままな新生活が始められると俺は舞い上がっていた。 彼女を呼んで(まだいないけど)あんなことやこんなこと…… 両隣くらい挨拶しときなさいよと母さんから煎餅持たされて、引越し早々

【不思議な体験談】死者婚礼「冥婚」を描いた絵馬が導く運命

年度末でバタバタしてまして、久しぶりの投稿になってしまいました😅 YouTubeの方では新しく「不思議な体験談」をまとめた動画が配信開始しましたので、紹介いたします! 〈あらすじ〉 彼女と別れてから奇妙な「そらみみ」が聞こえるようになる。 「そらみみ」に導かれた先には死者婚礼「冥婚」を描いた絵馬だった。 彼女と「そらみみ」の関連性とは……!? 〈完成版の動画〉 〈本文〉これは3年前、自分が体験した不思議な出来事です。 当時は大好きな彼女と別れたばかりで何をするにも気

【予測不能】二転三転するショートホラー

廃校決定 『廃校もしかたないね』 どこから仕入れてきた情報なのか SNSのグループラインに、そんな書き込みがあった 『あーね』 『偏差値も高くないし』 『部活動でのウリもないし』 『卒業生は、うちらみたいにパッとしないしね』 SNSでは 次々とそんな言葉が飛び交う いわゆる 卒業クラスのSNSで 定期的につぶやく何人かがいるので かろうじて消えずに残っているようなグループだ。 読んではいるけど、もう長いこと既読のみにしている。 『廃校したらどうするんだろう』 『

未来の自分? どこか見覚えのある人の助言で家族の危機を回避した話

この話、怖くはないので安心して聞いてください。 私が幼稚園生の時の出来事です。 三面鏡のあるお家の子だったらやったことがあると思うんですけど、 三面鏡の左右の鏡をいい感じの角度にすると、 無限に鏡の世界が続いていく「あれ」が大好きだったんですよ。 だいたい、お留守番の時のお楽しみが「あれ」で何時間でも鏡の前に座って どこまでも続く鏡の世界を眺めては、どこかに違う人がいたりしないかと本気で探していたんです。 すっかり日が暮れて、薄暗い中、電気もつけずに鏡を見続けていた

【ショートショート】コンビニでいつもクレームを入れてくるおじいさんの意外な正体

嫌われ松尾の一生 とにかくこの街の治安は最悪だ 俺がバイトをしているこのコンビニはその中心地だ 客のクレームも半端ない 中でも最近現れた新入りクレーマー『松尾の爺さん』は最悪だ 脈絡なくキレてくる 1ヶ月前、飲料コーナーで突然キレ始めた 「おい、誰かこっちこい! 冷蔵庫の奥で品出ししてるお前だよ!」 俺は渋々、松尾の爺さんのところに出て行った。 「何だ、この生ヌルいビールは!」 俺は松尾の爺さんが持っているビールの温度を確かめた 冷えてるじゃねーか これ以上どうしろ

セミ嫌いを克服したウソみたいな本当の話

セミの鳴き声を聞くと、15年前に死んだおじいちゃんを思い出します。 お母さんが子どもの頃はきびしかったそうですが、 私にとってはとにかく陽気でやさしいおじいちゃんでした。 おじいちゃんと私は誕生日が同じで、毎年夏になると一緒に祝ってもらったのをよく覚えています。 私もおじいちゃんもすいかとアイスが大好物で、遊びに行くと好きなだけ食べさせてくれました。そのおかげで何度もお腹を壊したことも今となればなつかしい思い出です。 そんな大好きなおじいちゃんですが、おてんばで虫

息子が彼女を家に連れてきたら75歳のおばあちゃんだった!

オレのカノジョは後期高齢者 おいおい、そんな話しドラマの中だけだって。 「界人くん、本当なんだってば…… 信じて、私は亜湖なんだって」 いやいや、そんな小首かしげられても。 信じられるわけないでしょ…… 目の前で俺の彼女の名を連呼している白髪のおばあちゃんが、 ミスこんにゃく小町の亜湖だなんて。 「私も訳わかんないよ。 突然おちゃんと入れ替わっちゃうなんて」 亜湖だと言い張るおばあちゃんは 泣き出してしまった。 「じゃあさ、証拠を見せてよ……亜湖だっていう」

訪問販売の人を家にあげたらとんでもない展開に!!〈Part2〉

時計が午後3時半を指し、私はあの男(ひと)を待っている マスク生活でしまい込んだままの紅なんか差して バカみたい・・・どうせマスクで見えやしないのに 出会う前とはがらりと変わったこの部屋 カーテンもカーペットも、クッションも、履いているスリッパも、 みんなあの男の色に変わった 今日変わるものは、もうあれしかない 初めてあの男が来たのは、3月3日の午後3時33分 ピンポーン♪ ピンポーン♪ ピンポーン♪ 誰よ、こんな時に 片頭痛がひどくて、やっとの思いで玄関までいくと、