チキンのカイトさん
カイトさんは気が強いほうだ。
気が強いというよりも、負けず嫌いかもしれない。
お昼休みのチャイムが鳴ったら、
一番先にレンジを使いたいし、
駅のホームで明らかに乗車を追い越そうとしている人には眼光鋭く、鉄壁のディフェンスで阻止する。
気が強いというよりも、
負けず嫌いというよりも、
ふところが小さいのかもしれない。
カイトさんはそれを認めない。
たまに「社内No1、2のイケズ」と笑いながら同僚に冗談を言われるカイトさんだが、めちゃくちゃチキンなところがある。
それは、自分の体(潜在意識のことではなく、機能する実態としての体)。
こと、体調に関しては、かなりの臆病者だ。
カイトさんは、昨年はじめて、
健康診断で、血圧が130をやや超えた。
若い頃、低血圧で、いつも100を切るところにかよわい女子感を感じて、
けだるい感じで自慢をしていた。
「不健康自慢」
それが、
やはり年齢を重ねるとともに、体重と血圧は無言で徐々に蓄積していって、いよいよ高血圧予備軍になったのだ。
そして、一年後の健康診断。
カイトさんは一週間前からそわそわしている。
どきどきする。
落ち着かない。
プレッシャーがスゴイ。
「129がよくて130は悪い、なんて、
数字にこだわるところはわたしの悪い癖。NESの先生にも指摘された」
わかっていてもリトルにすべて委ねることができず、
健康診断当日。
ダサイ診察着に着替えたカイトさん。
椅子に座って戦っている。
何と?
弱い自分と。
ひーちゃんの手のひらセラピー(YouTube)でおぼえたツボを押しまくったり、
グラウディングしたり、
マインドフルネスしたり、
緊張を味わうワークしたり、
いっぺんにいろいろやったのが悪かったのか、
いざ測定をしたら、
心臓バックバクで、口から何か出てくるかな!?と思うほど鼓動が早く、
なんと!
はじめて見る数字「160」をカイトさんはたたきだしてしまった。
カイトさんは泣き崩れそうになりながら、
内診のおじいちゃん先生に、
「ひゃくろくじゅうが、ひゃくろくじゅうが」
と、動転してなだれ込んだ。
おじいちゃん先生は、
「気になるところはありますか?」
と、無表情にカイトさんに聞く。
カイトさんは、
「動悸がします!」
と、切り札を出したかのようによどみなく答える。
「動悸・・・、いつからですか?」
「5日前からです!!」
「・・・」
明らかに、健康診断を意識しはじめた頃。
「脈拍が、通常の倍以上になっていますね。
このデーターは、まったく参考にならない」
そう言って、
再測定の段取りをとってくれ、
血圧をはかる前の深呼吸や、
姿勢を、おじいちゃん先生はカイトさんに伝授してくれた。
そして再測定。
初回はまたしても緊張して160をたたき出すカイトさんだったが、
スタッフのおばちゃんが朗らかだったこと、
3回目あたりから測定に飽きて、
別のことを考え始めたところで落ち着きを取り戻し、
昨年の130台まで戻れたのだった。
健康診断が終われば動悸もなくなり、
あの体調不良はいったい
と、カイトさんは自分のチキンっぷりに苦笑いを浮かべるのだった。
そして先日の金曜日。
どきどきの結果データーがカイトさんに送られてきた。
(130の血圧以外)オールA!
血圧も昨年とほぼ変わらずのデータに、
もうただただ安堵と、感謝を深く感じるカイトさんだった。
カイトさんは、急に、「お疲れさま会」がしたくなった。
誰に?
もちろん自分もこの二週間そわそわして落ち着かなかったけれど、
(健康診断の他に、会社の辞令もあった)、
リトルカイトとわたしに!
というわけで、
翌日の土曜日、急に淡路の洲本に向かって「セルフ慰労会」をおこなったのでした。
来年の健康診断も思いやられるな、
とカイトさん。
カイトさん、チキンハートを少し克服できたらいいね、、、。
きっと、リトルとあーちゃんが応援しているね。
笑
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。