【ロッテ】突然の補強があまりにも“ガチ”すぎる件について
7月のDL(デッドライン)も終わりを迎え、ここからシーズン後半戦のラストスパートかというタイミングでまさかの補強情報が入ってきました。
それは、千葉ロッテマリーンズが『ダラス・カイケル』を獲得というもの。
またまた偽記者アカウントの飛ばしかと思っていましたが、球団からも正式にリリース。
経歴なども考えればお目にかかることはないだろうという選手でしたが、まさかまさかの贔屓に入団となりました。
正直、いまだに信じられないというのが本音ですが、今回は『ダラス・カイケル』について見ていきたいと思います。
1.これまでの経歴
カイケルのこれまでの実績で最も目を引くのは、やはり“サイ・ヤング賞”を獲得したことでしょう。
というわけで、彼がMLBでサイ・ヤング賞を獲得する前後のキャリアを振り返っていきます。
カイケルは、2009年のドラフト7巡目、全体221番目でHOUから指名されプロ入りを果たすと、2012年6月17日の敵地でのTEX戦でプロ初登板。
その後、2012年は16試合に先発登板を果たすも防御率5.27、FIP5.74、WHIP1.547、FANGRAPHS算出のWARも-0.5と、先発投手としてはなかなか苦しいMLBルーキーイヤーとなりました。
ただ、MLBでの3年目となる2014年には29先発で200イニングを投げ防御率2.93、FIP3.21、WHIP1.175の好成績を残し、自身初となるGG賞を獲得。
ついにMLBのタイトルホルダーとして仲間入りを果たしています。
そして翌年、昨年を上回る先発33登板で232イニングと強度を増しているにもかかわらず、防御率2.48、FIP2.91、WHIP1.017とキャリアハイの成績を納め、彼はALのサイ・ヤング賞を獲得することとなりました。
また、打球速度の速さが重視されるMLBレベルの打者に対して、MLB全投手の中での被打球速度は上位5%にまで抑制しており、打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増加に貢献したのかを示す「WOBA」もMLB投手上位10%にまで抑制しています。
それだけカイケルは打球管理に優れていた投手であったのです。
しかし2015年のキャリアハイ以降、特に2021年以降はXBAやXSLG, XOBAなどの対戦打者に対しての打撃成績の期待値は低迷を続け、K%は下降傾向に陥り、それに伴いWHIPも悪化の一途をたどり始めました。
それどころか、「打球速度」と「打球角度」の相関から安打性(特に長打)の打球を生みやすい「Barrel zone」に打球がどれだけ入ったかを示すBarrel%も、2015年は3.3%であったのが年々悪化傾向に。
また、HardHit%(打球速度95Mph以上の打球割合)も、2015年は28.0%であったのに対して、その後はいずれも30%をゆうに超えています。
そして、最大の転機となったのが2021年。
これまでは防御率1点台後半~4点台中盤を行き来していましたが、この年はなんと5.28にまで悪化。XERA(防御率の期待値)も驚異の6.15となってしまい、彼のキャリアでの最大のダウンイヤーとなってしまいました。
また、この時期を境に各種スタッツも下り坂となってしまい、2022年にはとうとうキャリア初となるDFAを通告されてしまいます。
カイケルは打球管理に優れていたことで「サイ・ヤング賞クラス」にまで昇りつめたにも関わらず、その根幹が揺るぎ始めてしまったのでした。
2.今季のカイケルの投球内容
カイケルは平均88マイル(約142Km)のシンカー、81マイル(約130Km)のチェンジ、85マイル(約137Km)のカッター、79マイル(約127Km)のスライダーを扱う左腕投手。
ただ、今季の投球割合のうち約60%がシンカーであり、対してスライダーは1%にも満たないため、実際はシンカー、チェンジ、カッターの3球種で抑えていく投手という認識でよさそうです。
また、このシンカーが多くスライダーが少ないという傾向は2019年以降続いているため、来日後もこの傾向が続くことが想定されます。
その中でも、今季の投球の6割ほどを占めるシンカーは、BA(被打率).422、SLG(被長打率).667 とキャリアワースト、それに伴ってXBA(被打率の期待値)やXSLG(被長打率の期待値)なども悪化しています。
しかし、HardHit%(打球速度95Mph以上の打球割合)やXWOBA(1打席あたりの被得点期待値)、Whiff%(空振り率)はここ2-3年通りでもあるため、今年に限っては不運な打球が多かったとも言えるでしょうか。
ただ、このシンカーは彼が成績不振に陥った2021年以降から急激にPitch Valueが悪化しているため、悪い中で安定しているというのが現状です。
いずれにせよ、シンカーという球種がMLBレベルで通用しなくなっているという事実は忘れてはいけません。
これに対してチェンジアップは、BAとSLGがともに.059とキャリアハイ、特にWhiff%もサイ・ヤング賞を獲得した2015年に近い35.3%を記録、K%も昨年の3倍である26.3%の成績を残しており、MLBレベルの打者に対しても十分通用するボールであることを証明していました。
ちなみにカッターはWhiif%こそキャリアワーストですが、HardHit%はキャリハイであるため、こちらも不運な打球が多かっただけとも言えるでしょう。(対戦打者数が少ないためサンプル不足ですが…)
といったわけで、今季のカイケルはダウンイヤーが続くシンカー、マネーピッチとなったチェンジ、サンプル不足のカッターを扱う投手であったということになります。
個人的にはチェンジ主体にスイッチすればいいような気もするのですが、まあ素人意見なので悪しからず。
3.チーム状況と彼に期待すること
(1)先発6枚目としてローテ入り
現在、チーム内の先発ローテーションは5枚目までは盤石です。
もちろん調子の波はありますが、それでも揺らぐことのない先発5本柱を固められていることは事実です。
※佐々木朗希に打球が直撃しました、勘弁してください。
しかし問題は6枚目で、石川・美馬はスタッツが非常に厳しいという懸念点があり、対する田中・中森はPO圏内を争う場面での先発経験が乏しいという懸念要素があります。
ただ1人、唐川のみがマリーンズ先発陣の残された希望でした。
そのため、戦力面でも元サイ・ヤング賞投手であるカイケルの加入というのは大きいでしょう。いくらキャリアイヤーを過ぎているからとはいえ、MLBで培った投球術が日本で通用しないというわけではありません。
ここで彼がチームの苦しい台所事情を救う最後のピースとなれば、残りのシーズンやPOを戦う際には心強い存在となります。
また、日本で活躍して再度MLBへ戻るというのもなかなか考えづらい年齢でもあるため、来季以降の契約延長(できれば単年契約)というのもそこまでハードルが高くなさそうでもあります。
「いまさらベテラン先発を増やしてどうするんだ」という声も散見されますが、チームが若手先発陣への世代交代を余儀なくされている中、その過渡期を支える投手の存在は欠かせません。
それが彼レベルの実績を持っている投手であれば、これ以上ないのは間違いないでしょう。
今年限りではなく来年以降も含めた”戦力”として躍動することは、向こう5年の先発陣入れ替えを潤滑に進めるという意味でも間違いなく必要な要素の1つだと言えます。
(2)伸び盛りの投手への手本
先ほども述べた通り、チームはだんだんと若手投手への移行期を迎えています。となれば1軍経験が乏しい投手が増えてくるのも自然な流れですが、その際に必要な要素の1つであるのが”経験”を伝えるということです。
どれだけ将来性が豊かな投手でも、ベテランや経験豊富な投手とコミュニケーションをとることでしか得られない情報や知識に頼る場面は存在します。
しかし、これまでのチームにはその”経験”を伝えることのできる”左腕投手”が全くいませんでした。これがチーム内の左腕先発不足を招いている1要因であると考えることもできるでしょう。
さらに言えば、チームのエースになるべく歩みを進めている小島にとっては、これ以上ない生きた教材になる可能性があります。
むしろこちらの意味合いの方が、彼を獲得した理由に近いのではないかとも思ってしまうほどです。
兎角、中森や田中などをはじめとした1軍定着が期待されている選手からしてみれば、お手本となる存在であることは間違いないです。
あのMLBの大舞台を投げ抜いてきた経験を、これからの日本球界を担うであろう若武者たちに還元してもらいたいものです。
というわけで、今回はここまで。
フォロー等もしていただければ幸いです。
お相手は【ふじ】でした。
Photos⇩
https://th.bing.com/th/id/OIP.tXi5S_z_Cgdc-LGEc0W0agHKHg?rs=1&pid=ImgDetMain
https://www.nikkansports.com/baseball/news/img/202407300001782-w1300_0.jpg