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どんな文章を書きたい?

星野源著『いのちの車窓から』を読んだ。
前から星野源さんは歌手としても俳優としても好きだったけれど、文章を読んでもっと好きになった。
最近、さくらももこさんのエッセイを読んだ時に感じたこととリンクするような一文があった。
下記に引用する。

伝達欲というものが人間にはあり、その欲の中にはいろんな要素が含まれます。こと文章においては「これを伝えることによって、こう思われたい」という自己承認欲求に基づいたエゴやナルシシズムが生まれやすく、音楽もそうですが、表現や伝えたいという想いには不純物が付きまといます。
中略
作家のキャリアに関係なく、文章力を自分の欲望の発散のために使うのではなく、エゴやナルシシズムを削ぎ落とすために使っている人。それが僕の思う「文章のうまい人」です。

いのちの車窓から 星野源

さくらももこ著『ももこのトンデモ大冒険』の中で、さくらももこさんと編集者数名でアメリカ西海岸まで、怪しげな博士に会いに行く話があり、その日の終わりを振り返り、さくらももこさん本人は

ホテルに戻ってから、私達は今日見たことをひとつひとつ取り上げ、笑い転げた。
中略
夜遅くまでみんなで笑った。

ももこのトンデモ大冒険 さくらももこ著

と書いているのに対し、その場にいた編集者の石井さんは

それはドクター.ベル博士を訪ねてのアメリカ西海岸でのこと。取材をおえて、翌日の打ち合わせのためスタッフ一同がさくらさんのお部屋に集合したときのこと。突然さくらさんの独演会がスタートしたのだ。それはまるでちびまる子ちゃんが実在して目の前にいるかのような、そんな錯覚さえおぼえた出来事だった。手ぶり見ぶりをまじえてのさくらさんのトークに、集まった一同は抱腹絶倒!私は生まれて初めてというくらい、文字通り「腹がよじれるほど」夜通し笑った。

ももこのトンデモ大冒険 さくらももこ著

と語っている。

さくらももこさん本人は、今日面白いと思ったことを皆で話して、皆で笑ったと書いているのに対し、石井さんは、さくらさんの独演会のごとく、さくらさんに笑わせてもらったという表現をしているのだ。

さくらももこさんのエッセイは、まさに星野源さんが言う様な自己承認欲求やナルシシズムのない、ただただ自分が面白いと思ったことをみんなに共有したいというだけの文章なのだと思った。

こんな風に書けたらなぁなんて、おこがましすぎるけれど、思うだけならタダだ。

書きたいことはたくさんあるのに、微妙にニュアンスが違ってしまったり、説教くさい文章になってしまったかな?なんて思ったり、自分が思ったことをありのまま書けたら...と思うけれど、それがとっても難しい。

noteという現実の私を誰も知らない世界の中で、見栄をはる必要もなければ、どんな自分に見られたいかなんて考える必要はない。
それなのに、ふと気がつくと少しかっこよく見せようとしてしまっている自分がいるのはなぜなんだろう?

いつか、本当にぜーんぶありのままの自分をさらけ出して、それを思い通り言葉に出来る力もつけることができたらいいなぁ。

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