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小説「風の華」

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窓をあければ華は空を飛べるように思う癖があった。ずいぶん幼い日の思い出だった。小学生になったばかりの小さな記憶が・・・
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#小説

小説「風の華」第一章(1)

小説「風の華」第一章(1)

 ぼんやりとした雲が、青空を覆っていた。
 華は、翠と長い坂道を登っていた。
 潤の住んでいるマンションは、丘の上にあるらしかった。九月の風が、どこか秋の近づくのを感じさせる。
「え、潤と翠さんが、親戚?」
 翠が潤のいとこであることを、彼女から伝えられた時、華は驚いた。
さらに、驚いたのは、潤が自分の家族のことで、かなり悩んでいる、と聞かされたことだ。
「潤君のお母さん、病気なんだって。一人で介

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小説「風の華」序章(4)

小説「風の華」序章(4)

 校舎の裏庭は静かだ。たまに園芸部の生徒たちが来て、小さな畑を耕したり、苗を植えたりしているのを見るくらいだ。
 華は、潤が来るのを待っていた。
「人の口に戸は立てられぬぞ」
 そんなセリフをどこかで聞いた気がする。
 潤と翠が二人きりで歩いていたという話は、一日であっという間にクラスメイトたちに広がってしまった。
 この際、二人のことなどどうでもいい。
(なんで、わたしまで巻き込まれなければなら

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小説「風の華」序章(2)

小説「風の華」序章(2)

 制服の男女は、あきらかに潤と翠だった。
(どうしてふたりで歩いているんだろう)
 華は、その出来事を、まるで別の世界を眺めているような気持ちでいた。けれども、心の中では、もう一人の華が、どこか途方に暮れた姿で立ち尽くしていた。
(いやだな)
 華は、自分のなかに、明らかな嫌悪感が生まれつつあるのを感じた。嫌悪感は、制服の男女に対してなのか、華自身の心の惑いに対してなのかわからなかった。
 はっき

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小説「風の華」序章(1)

小説「風の華」序章(1)

 いろいろあった夏休みだった。一階の教室で水泳部の男子生徒たちがミーティングをしていると聞いたので、華はいつものように潤を待つことはせずに下校したのだった。それからまっすぐに家に帰ればよかったのだが、ふと足を止めて、マックに入ったのがまずかった。
 思いのほか店内はすいていて、華は一番好きな2階の窓側のカウンターへ腰かけた。窓から見える街は、すでに夕暮れだったので、華はどこか落ち着いたうっとりした

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