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古本屋コアラ
さびれた何もない村
こどもの唯一の楽しみ
漫画だけの古本屋
コアラ
毎週火曜日に軽トラがやってきて
新刊が運ばれる
村のこどもは目をキラキラさせて
コアラに自転車で行く
古本だけれど
こどもにとっては全ての本が新しい
蔦が絡んだおばあさんの家
ピンポンを押すと
はぁいと声がして
奥の和室で
こたつでみかんを食べながら
テレビを見ていた
おばあさんが出てきてくれる
コアラの店長だ
すべての本が100円
5冊買ったらおまけでもう1冊ついてくる
大きくてかっこいいから
大友克洋という人のAKIRAを買った
500円で全巻揃った
絵が凄くうまくて
おもしろかったので
短編集も全部買った
毎月のお小遣いはコアラに使う
お兄ちゃんは少年漫画担当
私は少女漫画担当
交換して読んでいた
私の家に行けば
たくさん漫画があると
友達が遊びに来てくれた
風邪をひいたらお母さんが
コアラで漫画を買ってきてくれた
サザエさんだった
もっと新しいのがいいと我儘を言った
店長のおばあさんは漫画を買うと
これはとてもいい本だから
お父さんとお母さんに渡してねと
いつも難しい本をくれた
大人になってわかったこと
漫画目当てで遊びに来てるのじゃないのかと
親に言われた友達も
大人になってもずっと友達でいてくれたこと
サザエさんは大人になって読むと
こどもの頃にはわからなかった
ブラックジョークがきいていて
面白いということ
難しい本は新興宗教の勧誘の本だったこと
村を出てずいぶん経ち
大人になって
懐かしくなりまた訪れたら
そこは廃屋になっていた
古本屋コアラ
廃屋には
蔦がぼうぼうに絡まり
庭は雑草だらけ
コアラのかわいい絵が描いてある看板が
残されたまま