なぜブランディングが必要か?-人・空間・時間軸からの考察【前編】
市場においてブランディングを必要とする企業や個人が、なぜ増えてきているのでしょうか?
前回はブランドの「らしさ」をつくるブランドアイデンティティ(BI)が何かを大まかに解説しました。
今日は企業や商品・サービスに「らしさ」と言う個性が求められる社会背景に何があるのかを考察していきます。 ただ、あくまで推論ベースとなるため奥野のただの感想とでも留めていただいて構いません。
「人」「空間」「時間」という3つの観点から紐解いていきたいと思います。
■ サービス飽和によるニーズの深化 (視点:人)
高度経済成長を遂げた失われた30年として日本は成長こそ鈍化したと言われつつも、あらゆる商品・サービスのクオリティは90年代以前と比べてもはるかに向上しています。供給する商品・サービスがこれだけ進化すると言うことは逆を返せば、需要側が進化していると見れます。市場においてサービスを受け取る側に選択肢が増えていけば、当然供給側の市場シェアの競争は激化し、商品・サービスやブランディングを革新していかないと、経営は進化も継続もむずかしくなっています。
そしてこの進化というのは、「深化」という言葉の方が適当かもしれません。つまり変革は横への広がりというよりは、下、あるいは上への縦方向の変化があらゆる商品・サービスで起きてきているというのが私の認識でして、これにより同類サービス上で機能や見た目、あるいは購入体験などの違いを生み出す必要が高まってきているというのが、アイデンティティ構築の一つの理由と言えるのではないかと思います。
ちなみに横への変革というのは、誰も見向きもしなかった、あるいは事前に意識さえできなかった潜在的ニーズを満たし、新たな市場を生み出す破壊的イノベーションを言っています。つまりみんな横への動きをしたいのに、それが見つけられずに縦への深化に終始してしまっている。レッドオーシャンの中でブルーとして目立とうとはするけど、隣のブルーオーシャンには行かない、行けない、行きかたを模索しているといったところではないでしょうか。
■ 機能から感情的価値への世代シフト (視点:人)
最近、MACbookproを買ったのですがappleインテリジェンスが入っているそうですがほぼ使っていません。印象としてはSiriの精度が上がったのかな、くらいなのですが、相変わらず端末としての私の使い方は以前の愛機macbook12インチ(2017)年から全く変わってません。何が言いたいのかというと、これ以上の機能のレベルアップいります?ってことでして、言い方を変えれば、機能のレベルアップがニーズをすでに大きく超えてしまっている。というのが、PC市場に限らずあらゆる分野で起き始めているのではないでしょうか? そのapple製品に限って言えば、バッテリー寿命なんてもうどうでもいいというか。予備バを買えば済みますし、電源に差し込めばいいわけです。家に帰えり充電すれば事足るわけです。
だから、「機能」から「感情」へのシフトがあらゆる分野で起きてきているがゆえに「体験」や「共感」が以前より求められていると考えられる気がします。これに主要な購買世代のミレニアルとZ特有の共感へ傾倒する価値観も助けているのかもしれません。
例えば、商品・サービスにおけるブランドストーリーにおいても、別に機能が充実していたら特段いらないわけです。しかしあらゆるブランド、メーカーから出されるプロダクトの機能が同じレベルで充実してくる時、比較対象の「機能」は使えない。だから「感情」に訴求できるかどうかが問題になってきている。というのが私見です。そして、この市場や人の感情を読み解くのがブランディングです。
■ メディアの多様化と情報過多社会 (視点:空間)
SNSとインターネットは売り方というものを根本から変えてしまったわけですが、この影響はかなりデカいですよね。
4マス時代のテレビ、新聞、ラジオ、雑誌に代わったものが何かを見ていきましょう。
テレビ→ youtubeや動画配信などのNetflix、アマプラなどに。
新聞→ 新聞社のデジタル媒体かSmartNews、NewsPicksなどのニュースアプリへ。あとは各社のオンラインメディアもあります。
ラジオ→ Spotify、Apple運営のポッドキャストが主流でしょうか。Voicyなどのリアルタイムでのコミュニケーションを図れるものに。
雑誌→ 各社はデジタルデバイスでサブスク化する流れが主流でしょうか。このあたりは私はよくわかりませんが、専門の編集が介入する情報源としては依然ニーズは強いと思いますが、見られ方は確実に変わりました。紙は確実に売れ残り委託先から返品対象の印象しかありません。以前はコンビニでよく見かけた立ち読み群も、最近は全く見かけません。
あとはSNSやブログに情報源が流れていることは無視できませんね。
はっきり言って何マスと言えばいいのかわからないくらい多様化、複雑化したメディアにおいて、各媒体でのブランドアイデンティティの見せ方、PRの仕方はより高度なスキルとその媒体毎の視聴者に応じたアジャストが必要になっています。これがブランディングがより求められるようになってきている主要因の一つです。つまりメーカーの広報担当がなんとかできるレベルの範疇を超えた知識とノウハウが必要になってきており、マス広告枠を抑えておけば販促は安心できる時代は確実に終焉を迎えたというところでしょうか。こうした媒体に応じた見せ方をプランニング、実施することや、各媒体でのユーザーの情報ニーズを汲み取るのもブランディングの一環です。
次回は、引き続き以下の3つの項目について考察していきます。
⚪︎口コミと比較サイトが誘発する競争激化 (視点:空間)
⚪︎商圏のグローバル化による競合網の拡大 (視点:空間)
⚪︎AIというトレンド (視点:時間)