「プーチンのロシア」に侵略され戦争中であるウクライナ原発関連の懸念(後編の続編)
【断わり】 「本稿(後編の続編)」は以下の前編と後編を受けた記述であるので,できればこちらをさきに読んでもらえると好都合である。
「本稿(前編)」 https://note.com/brainy_turntable/n/n63060771ce35
「本稿(後編)」 https://note.com/brainy_turntable/n/nffac8fc66d06
※-1 21世紀自民党政治の大失策,小泉純一郎から安倍晋三,岸田文雄などがこの国をますます駄目にしてきた「原発政策」に固有の「負の実績」
21世紀になって日本の首相を務めた小泉純一郎は,新自由主義の旗幟をかかげて以来,その手先に竹中平蔵を用いてこの日本の政治と経済をボロボロにさせる基因を提供した。
そしてつづいては,2010年代に首相になった安倍晋三が,この日本の「政治と経済」を「衰退途上(下降)国」へと向かわせるための決定的な貢献をした。
アベノミクスやアベノポリティックスの真価,換言するとそのダメさ加減は,2011年の「3・11」に発生した東日本大震災と東電福島第1原発事故を契機に,いよいよ,よりいっそう歴然となっていった。
安倍晋三の日本国破壊行為のための出立点を準備したのが小泉純一郎であった。ところが,この元首相がいまごろになって,つぎのように殊勝な言動をしていた。
a)「『原発再稼働は不要』と原自連が提言 エネルギー価格高騰でも『今こそ冷静に』 顧問の小泉元首相も訴え」『東京新聞』2022年6月2日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/180937
小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」は,ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰への対策として,原発再稼働を求める自民党内の議論に対し「再稼働は不要」と反論する提言をまとめた。
小泉氏は本紙の取材に「原発は自国に向けた核兵器と同じだ」と強調し,脱原発と自然エネルギーの活用拡大を急ぐ必要性を訴えた。
小泉純一郎元首相は「原発は国民に向けた核兵器」だと断言した。この『東京新聞』のインタビュー記事は「岸田首相の原発対応には『期待できない』」と自信をもって語っていた。(前略,中略)をしたあとから,つぎの段落を引用する。
--価格高騰への当面の対策としては,高効率の火力発電を活用し,太陽光や風力,水力,地熱,潮力など自然エネルギーによる発電の拡充で補っていくよう提言。住宅の断熱化や省エネ化も進めるよう求めた。
原自連は2017年,各地で活動する脱原発や自然エネルギー推進団体の連携をめざす全国組織として発足。会長は吉原 毅・城南信用金庫名誉顧問で,細川護熙元首相らも名を連ねている。
b) NPO法人・原子力資料情報室の懸念:「ロシア軍のザポリージャ原発攻撃に関するコメント」2022/03/04,https://cnic.jp/41571 から
2022年3月4日未明(現地時間3月3日夕方ごろ),ロシア軍がウクライナ南東部に位置するザポリージャ原発を攻撃した。ザポリージャ原発を保有・管理するウクライナ原子力公社エネルゴアトム,ウクライナ緊急事態庁などの情報によれば〔同上の時点における〕現地の状況は以下のとおり〔で合った忌避。
ザポリージャ原発の6基ある原子炉のうち,稼働中だったのは2・3・4号機。攻撃を受けて2・3号機を停止,現在稼働しているのは4号機のみ。これは攻撃から一番遠い稼働中原子炉だったためである。2月27日に停止させた1号機に攻撃が当たった。また,訓練棟で火災が発生。現在は鎮火している。
補注)なお,原発施設そのものが損壊されるその攻撃ではなかった。
管理棟および検問所はロシア軍の支配下にある。基本的にサイトはロシア軍の支配下にあるとみられる。攻撃によって,原発の守備隊に死傷者が発生した。原発の作業員らは現在,原発の管理業務に従事しているものの,疲労している。
原発から17kmの地点にある空間放射線量モニタリングポストの数値に変化はみられない。
この原子力資料情報室の意見に関連しては,ちょうど今日,2023年10月26日の『日本経済新聞』朝刊につぎの記事が出ていた。紹介しておきたい。
c) 戦争となればただちに,相手国(敵国)の社会基盤(インフラ)も徹底的に破壊することが,戦略・戦術として重要な作戦の内容となる。
もっとも,核兵器を戦略的な目的をもって戦争じたいのために使用することは,非常にむずかしい判断を要求される時代になっているゆえ,核兵器の所有国が戦争に挑んでそう簡単に使用できるわけではない。
いちおう比較の材料になる話題を出して議論しておきたい。たとえば,朝鮮戦争(1950年6月25日~1953年7月27日)の最中であったが,日本が1937年から1944にかけて中国(旧満州地域)に建設した「水豊ダム」が,連合国軍(米軍)の攻撃目標になっていた。
水豊ダムは,1937年に着工し,1941年に完成した。日本の統治時代,鴨緑江を国境線として「右岸に中国,左岸に北朝鮮の国境」を跨いで建設された水力発電用ダムである。当時においては「重力式コンクリートダム」として建設された世界最大級の規模であった。
この水豊ダムで発電された電力は,大日本帝国の植民地「朝鮮」およびカイライ「満州国」送電され使用された。1941年に水力発電を10万kWの発電を開始したさせ,完成後は最大出力70万kWの出力となった。1945年終戦時の出力は60万kWであった。
敗戦後,1950年6月25日,北朝鮮が韓国に侵略を開始し,朝鮮戦争が勃発した。そして,1952年6月23日,この水豊ダムは国連軍(米軍)の攻撃目標になった。米軍機がつぎつぎに空爆を試みたが,その時に使用された武器・弾薬では決壊させえなかった。
しかし,それから半世紀以上が経過した現在では,水力発電所の破壊を戦争目的として軍事的に決行するのと同じ具合に,原子力発電所を破壊しようとする行為は,その攻撃をしかけようとする国側にとっても自爆行為になりかねない。
ウクライナではザポリージャ原発の敷地は現在もまだ,ロシア軍が支配・占拠している状態にあるが,この原発そのものを破壊する行為までは手出しできないでいる。その意味がどこにあるかは,説明するまでもない。
以上の話,そのとっかかりは小泉純一郎が首相を辞めてから「3・11」を実際に体験したのちにかかげだした「反原発・非核の立場」は,以上に紹介した2022年6月2日時点での意見よりも以前から「小泉純一郎の時論」になっていた。
つぎにやはり『東京新聞』から引用・紹介する記事は,これをよく聞けば分かるように実は,この日本という国家がいかに原発中毒慢性症になっているかを教示してくれる。
※-2「全電源,自然エネルギーにできる 小泉純一郎元首相インタビュー」『東京新聞』2018年5月13日 08時47分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/236083
この小泉純一郎に対する『東京新聞』のインタービュー記事の場合は,いまから5年半も前のものであった。まず,この元首相はこう断わっていた。ただし文章そのものは『東京新聞』の記者がまとめ,かかげた全文である。
小泉純一郎元首相(76歳)が本紙のインタビューに応じ,原発事故後も原発稼働を前提とする安倍政権のエネルギー政策を「反省がない」と批判するとともに,「原発支援のカネを自然エネルギーに向ければ,
原発が〔2011年3月11の東電福島第1原発事故現場以前は〕供給していた30%程度の電力は10年〔間の期限内〕で自然エネルギーで供給でき,将来,全電源を自然エネルギーでできる国になる」と,原発稼働をただちちにやめ,自然エネルギーへの転換を促進すべきだとの考えを強調した。
そして,このインターネットは大きく〈3つの段落〉に分けられて報道されていた。それは,
▲-1 安倍首相〔当時〕では原発やめられない
▲-2 世界2040年に再生エネ66%予測(この段落からはとくに以下の段落を画像資料で紹介しておく)
▲-3 【解説】事故後も依存,社会への警鐘
〔さて,エネルギー〕政策転換には政治の強いリーダーシップが必要だが,小泉氏の声に耳を傾ける現職政治家は,安倍首相を含め,政権を担う自民党にはほとんど見当たらない。小泉氏が原発ゼロに向けた国民運動に取り組むのも世論の覚醒を促し,政治家に決断を迫る狙いがあるのだろう。
結局,原発の在り方を決めるのは主権者たる国民自身であり,私たち1人ひとりが,原発に固執することのマイナスを真剣にみつめることが必要だ。小泉氏の一連の発言は,そう語りかけている。(引用終り)
ところが,今日は2023年10月26日になっている。前段のようにこの小泉純一郎の発言からすでに5年半が経った。その間,2022年8月下旬における発言であったが,現首相の岸田文雄は「原発の再稼働と新増設」という方向性を,しかも経済産業省(資源エネルギー庁 )の意向を鵜呑みにし,オウム返しの要領で決めていた。
この首相のオツムのなかをのぞいたら,やはり「カラッポだった総理大臣だ」という評判が,このごろになると,すでに完全に定着した。この「世襲3代目の政治屋」は,日本のエネルギー政策を21世紀のこの先に向けてどのように舵取りするべきか,自身の考え方をなんらもちあわせていなかった。
つぎの意見は少し内容的に古くなってはいるが,だいたいにおいて通用するので,引用しておく価値ありとみなし,引用しておきたい。
以上までは主に,本日(2023年10月26日)に補述した内容であった。ここからが,本日記述「後編の続編」における「本筋の議論」を展開することとなる。
※-3 原発事業ほど危険で採算のとれない商売はない,いまではなによりも再生エネ産業が一番,この分かりきった事実をすなおに認めない日本政府:経済産業省資源エネルギー庁の頑迷固陋は「原子力村の基本姿勢」
a) 原発事業という重荷に苦労してきた日本企業(東芝がその代表)の金儲け算段が大前提になっていたけれども,ともかく再生可能エネルギーに向かわざるをえない日本の産業全般は,その先進国である主要諸国に比べてみるに,何周回も遅れたまま実に “みっともないかっこう” で,自然が恵んでくれるエネルギーの営利的な利用にとりくんでいる。
経済産業省・資源エネルギー庁は,2030年における電源構成比率のうち原子力を「20~22%」としていた看板を,いまもまだ取り下げられないままでいられるらしいが,本心では本当にそれでいいのか自信がなく,ただオロオロしているのではないか? 原子力村的な虚栄心はいったいに,再生可能エネルギー問題の評価を棚上げしたまま,原発,原発,原発とだけ,まるで南無阿弥陀仏の呪文と同じに唱える仕事が,最近では日課になっている。
しかし,つぎに紹介する関連の図表は,いかにも原発推進向けの下心だけを感じさせ作図であった。その点は「原子力22~10%程度」と水色で記入されている項目に関して表現されていた。この点にこだわって,以下の記述をおこないたい。
2030年の電源構成において原子力(原発)の比率を,ともかくなんでもかんでもいいから,無理やり拡大させていきたいのが,経済産業省資源エネルギー庁の立場であった。
しかし,「3・11」以降,原発ゼロの時期を2年近く実際に経てきたが,日本のエネルギー事情に関して,「なにか格別というべき致命的な影響」が生じることは,なにもなかった。
しかも,上のこの図表は2030年の「総発電電力量」を,意図してなのだが過大に見積もっている。現在(2023年中)における実際の原発(原子力)が占める電力供給量は,全体の10%未満である。
それゆえ,2030年における電力需要が仮に1割減となる予測となれば,原発の稼働は完全に不要というか,原発を電源から除外:追放できる。
b) 自然エネルギー財団の報告書『2030年における電力需給バランスとコストの検証』2021年2月,https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_2030DemandAnalysis.pdf は,すでにつぎのように指摘していた。はじめは画像資料で参照し,つぎは文字を拾って引用する。
この自然エネルギー財団の報告書『2030年における電力需給バランスとコストの検証』2021年2月は,2018年から2030年への「電源構成比率」の行方を原子力については「ゼロ:0%」に置いて議論し,その間における電力需要に応える体制を議論していた。
ところが,対するに,前掲した「経済産業省資源エネルギー庁の電源構成」は,原子力を「22~20%」にまで増やすものとした「その目標値」を置きながら,なおかつ,その総発電電力量が減少するとは予測しないで,1兆512億kW時⇒1兆650kW時とみなし,むしろ若干,いくぶんか増加させる予測値を措定していた。
日本における電力需給量の経過については,経済産業省資源エネルギー庁からも関連する統計が公表されている。その実際は,基本的に減少する傾向にあっても,今後に向けて増大する今後はありえない。そう判断するのが,しごくまっとうな観方である。
にもかかわらず,経産省の同庁は「原発(原子力)の比率〔とその電力供給量〕」だけは絶対に減らしたくない気分を満載したごとき『作文』を,それこそ鉛筆を舐めナメしながら創作していた。
経済産業省資源エネルギー庁が公表している日本の電力需給量や電力生産量関連の統計が,2010年を境にして電力の生産と消費「全体:総量」が確実に減少傾向にある事実は承知のうえで,そのように「現実を無視する」未来予測を平然をおこなってきた。
c) ここで,自然エネルギー財団の報告書『2030年における電力需給バランスとコストの検証』2021年2月に戻り,さらにその主張を聞きたい。
2050年のカーボンニュートラル実現は,いまや政府の定めた日本の目標となった。この目標達成のためには,現在の2030年自然エネルギー電力目標22~24%を,多くの企業や自治体も求めるように,その2倍以程度に引きあげることが必要である。自然エネルギー財団の2020年8月の提案と今回の報告は,こうした引き上げが技術的にも経済的にも可能と考えられることを示した。
2030年は電源開発,電源システムの転換という視点からは,すぐそこにある未来である。2011年3月の東日本大震災と原発事故からの10年,日本の自然エネルギー開発は進展し,エネルギー転換は進んできたが,2030年に向けて,変革の速度を2倍,3倍にも高め,持続可能なエネルギーミックスの実現をめざす必要がある。
原子力発電と石炭火力に固執した旧来のエネルギー政策は,根本からみなおされなければならない。そしてそれが,深刻な気候危機を回避する世界の取組みに,日本が真摯に貢献する証となる選択である。
※-4「独,再生エネ発電が逆転 昨年46% 化石燃料上回る」『日本経済新聞』2020年1月4日夕刊3面「総合」
【フランクフルト = 深尾幸生】 ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率が2019年に初めて化石燃料を逆転した。太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは2018年から5.4ポイント上昇し,46%に達した。石炭などの化石燃料は約40%だった。
英国でも原子力を含めた二酸化炭素(CO2)排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り,欧州の脱炭素を裏付ける結果となった。
補注)なおドイツは当時,風力発電が24.6%であり,電源別発電量で一番多い点は,以下に関説がある。
独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所(ISE)が〔1月〕2日,ドイツの2019年の純発電量をまとめた。企業の自家発電は含まない。
1年間の発電量5155億6千万キロワット時(515.56テラワット時)のうち24.6%%を風力が占め,最大の電源となった。発電量は2020年比16%増え,シェアは4.2ポイント上昇した。
太陽光のシェアは0.6ポイント上がり9.0%だった。バイオマスと水力もそれぞれシェアを伸ばし,再生エネ全体で237テラワット時となり,化石燃料の207テラワット時を上回った。
化石燃料では品質の悪い褐炭が4.4ポイント減,石炭が4.5ポイント減とそれぞれ大きくシェアを落とした。発電量でもそれぞれ22.3%,32.8%減った。天然ガスはシェアが3.1ポイント上昇し,10.5%,2022年までに運転をすべて停止する原子力は0.5ポイント増の13.8%だった。
フラウンホーファーISEは,再生エネの逆転の理由について「発電費用の安い再生エネの拡大で,欧州排出量取引制度(EU-ETS)の排出枠価格が上昇し,CO2排出の多い褐炭などの発電では利益が出なくなっている」と指摘する。
英米ナショナル・グリッドによると,英国では2019年に風力・太陽光・水力・原子力を合わせたCO2 排出ゼロの発電量シェアが48.5%となり,化石燃料の43.0%を初めて上回った。
欧州連合(EU)は2019年12月,2050年に域内のCO2 の純排出をゼロにする目標で合意した。自動車などの電動化が柱のひとつで,動力となる電気を生み出す発電の脱炭素が実現のカギを握っている。(引用終わり)
ところで,それでは,ドイツなど再生エネ産業を積極的に推進してきた諸国における電力事情,とくにその電源別構成比率はさておき,日本の場合では,現在までどうなっていたのか?
◉「2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」『経済産業省・資源エネルギー庁』2019-08-13,https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2019.html が関連の事情を解説していた。
この経済産業省・資源エネルギー庁の解説は,エネルギーの自給率などももちろんとりあげていたが(2012年以降はまだ10%未満に留まっていた),なぜか,原子力に関する言及は明説した言及がなくなっている(消えて〔?〕いた)。
往事は,原子力の電源構成比率を50%以上にまでもいっていくと計画していた同省・同庁の展望が,いまでは完全に不可能な(その期待はどこかへすっ飛んでしまった)情勢に変質した。
この ① の記述として紹介した記事は,核心となる問題に関しては,「英国でも原子力を含めた二酸化炭素(CO2 )排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り,欧州の脱炭素を裏付ける結果となった」と,冒頭で説明していた。
しかし,それは迷説・珍論であって,原子力というエネルギーを「二酸化炭素排出ゼロ」に直結する(させうる)かのように,それもいまどきにもなって,間違えてでも人びとに幻想させたいかのような記事は,そもそも問題があり過ぎた。
政府や電力会社側のいいぶんだけでは,原子力発電が排出している炭酸ガスの問題は判明させえず,むしろ,その理解については「逆に騙される」といったほうが「正解」であった。
※-5 大阪府本部/自治労大阪府職員関係労働組合・環境農林水産支部・末田 一秀稿「知られざる原子力からのCO2 排出実態『発電時にCO2 を出さない』は虚偽だった」
なお,同上稿の出所は『第33回愛知自治研集会 第13分科会 温暖化ガス25%削減 地域での可能性を模索する』2015年7月3日 9:41:53 更新,http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/13/1322_ron/index.htm である。
この自治労の意見は,「原子力発電は炭酸ガスを排出しない」のだ,とくに “発電時の過程においてはそうだ” と強調したがる,その「基本的な論旨じたい」に含まれていた「固有の誤謬」に関して,参考になる説明を与えている。
この指摘は,正しい意見・分析である。労組関係者が披露した評価であるが,すでに原子力問題の専門研究者たちが以前から指摘・批判・主張してきた核心と,同一の論点が説明されている。この※-4の原文の全体は引用できないので,一部分の段落を適宜に選択し,紹介する。
a) 本当に原発は温暖化対策に役立つのか? 原発の電気はCO2 排出が少ないといわれているが,文献レビューや温対法にもとづく報告データの解析により,実際には多量のCO2 を排出している実態が記録されている。
b) 「間接排出による集計」(発電所での発電時のCO2 排出を電力の最終消費部門に割り振って算定する方法)は,日本に特有の方式である。気候ネットワークは「石炭火力の増設により発電におけるCO2 排出がいちじるしく増加してきたが,『間接排出』方式によってその結果がみえなくなっていた。発電所における排出を『直接排出』方式でとらえ,その排出削減対策をとっていくことが,不可欠である」と提言している。
c) 各種電源別のCO2 排出量というグラフが示され,排出係数は石炭火力 975g,石油火力 742g,太陽光 53g,風力 29g,原子力 22gなどとされ,太陽光や風力よりも原発のCO2 排出量が少ないとアピールするものになっている。
だが,「遅延による機会排出」では,立地計画から操業までに時間がかかる原発の値が大きくなっている。結局,原発のCO2 排出係数は,火力発電を上回ることはないものの,太陽光や風力よりも劣るというのが実態と考えられる。
その排出量のうち,「発電所等配分前」は,間接排出で計算するために割り振る前の,発電に伴い実際に排出した量に当たる。ほとんどの沸騰水型原発でこの排出量が報告されているのは,沸騰水型炉の主要設備である補助ボイラーによるものと思われる。
沸騰水型炉では,タービン軸封部(タービン車軸とケーシングの隙間)から放射能を帯びた蒸気が漏れることを防止するため,原子炉の起動・停止時には補助ボイラーで発生させた蒸気でシールしている。この補助ボイラーは廃棄物処理や屋外タンクの加温,建物の暖房等にも利用するため,原子炉の起動・停止時に限らず常時動いている。
d) その燃料は重油か電気で,福島第2原発の補助ボイラーはすべて電気なので報告対象に上がってこない。沸騰水型原発は重油を補助ボイラーの燃料として常時燃やしてCO2 を排出している。「発電時にCO2 を出さない原発」という宣伝は虚偽といえる。
しかも,通常,火力発電所であれば「発電所等配分前」が大きな値になり,間接排出計算に伴う消費側への配分によって「エネルギー起源」の値のほうが小さくなる。
ところが,女川原発の事例などで明らかなように,発電に伴う排出であるにもかかわらず,「発電時にCO2 を出さない原発」というために,消費側に配分せずにそのまま発電所での排出量としている。
e) 地球温暖化対策を名目に推進されている原子力であるが,温暖化対策に逆行するCO2 排出の実態は明らかである。原子力偏重の政策では自然エネルギー開発に十分な予算がまわらないなど,これまでも多くの問題が指摘されてきた。一刻も早く,脱原子力へ政策転換を図る必要がある。
※-6 原発廃絶論
a) まず,つぎの画像にして紹介するのは,槌田 敦『石油と原子力に未来はあるか-資源物理の考えかた-』亜紀書房,1978年(178-179頁)からのものである。
この45年も前の書物に書いてあった事実(真実)が,いままでもなお,ごまかしつつ騙しておこうする対象(立場)にされていた。しかしながら,そのウソは,もはや完全にといっていいほど打ち消されていた。
2011年「3・11」の東電福島第1原発事故が発生した直後,槌田 敦『原子力に未来はなかった』亜紀書房,2011年5月という本が,『石油と原子力に未来はあるか-資源物理の考えかた-』亜紀書房,1978年の「増訂・新版」として刊行された事情に関して,こういうふうに説明がなされていた。
2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災によって惹起させられた東電福島第1原発事故は,人類の歴史に特筆されるべき大事件となっていた。だがその後も,日本の原子力村:マフィアは,原発利益共同体の立場を執心することのみにこだわってきた。
その後も,原発の全基が停止状態になる時期は,2013年9月15日から2014年8月11日まで,2年間近く体験しえた。にもかかわらず,同村の関係者たちは,原発の再稼働に向けて必死の形相になって取り組んできた。
だが,現在の段階になって世界次元のエネルギー事情をまみわすとき,いまどき原発に執心している先進国は,一部の原発依存症になってしまっているフランスや韓国をのぞけば,またこれからも原発を大いに増設しようとする中国やロシアのように,軍事面の配慮がのぞけるいくつかの国々しかない。
補注)韓国は文 在寅政権の時期(2017年5月10日~2022年5月9日)は,原発を減少させる方針を立てていたが,尹 錫悦政権(2022年5月10日発足)になってからは後戻りした。
それぞれの国々がエネルギー事情をめぐり固有に抱えている個別の事情はさておき,再生可能エネルギーの分野を積極的に展開していない国家は,すでにエネルギーの後進国と呼ばれて当然である。
前出の槌田 敦『原子力に未来はなかった』亜紀書房,2011年5月は,「3・11」の発生を受けてだが,再度はっきりとこう断言していた。
「原子力は石油の2次製品」である,と。
前掲した槌田の著作から複写した画像資料については,図解の部分だけを再掲しておきたい。
現在まで,「3・11」から早,12年と7ヶ月以上の時間が経過してきた。
電力会社は膨大な設備投資を要し,かつまた,当初は「地域独占・総括原価方式・配給電設備支配」といった企業経営の管理体制が,国家によって手厚く「保障」されていた経済環境条件のもと,原発を電源に利用して電力供給に充てて充てるほど,それだけで思う存分に儲けが上がる仕組を享受できていた。
しかし,2011年「3・11」の原発大災害事故は,「スリーマイル島原発事故(1979年3月)」から「チェルノブイリ原発事故(1986年4月)」へとつづいた,まさに地球環境破壊の大事故としては決定打を意味した。それは,人類・人間の歴史にとって「死活問題」をも意味する危機をもたらしたことになる。
b)『日本経済新聞』2020年1月1日「社説」は,同社が堅持したきたはずの「以前までの原発維持・推進路線」を,いまさらのように,あいまいにごまかして済ます修正の発言をしていた。この同年元日の日経・社説「論題」は「次世代に持続可能な国を引き継ごう」と名づけられていた。これからはエネルギー問題に関した段落のみ引用しておく。
『日本経済新聞』の「こうした課題」に関する「いままでの姿勢」は,政府・財界側のいうままに沿ってきた原発「観」を背負ってきただけのものに過ぎなかった。
政府(経済産業省・資源エネルギー庁)の「原発維持体制」,つまり「2030年のベースロード電源の比率を原発20~22%」という水準は「きわめて厳しい」どころか,むしろただちに廃棄すべき問題でしかありえない。
ところで,安倍晋三が首相の立場からの発言としては,2020東京オリンピックを招致するために,IOC総会の場(2013年9月)で演説した「福島第1原発事故においては事態はアンダーコントロール」といった『完璧なる虚言』が記録されていた。
【参考記事】「安倍首相7年8カ月の “迷言集” をまとめたら,『やってる感』と『ごまかし』のオンパレードだった 」『文春オンライン』2020年9月7日,https://bunshun.jp/articles/-/40114 から。
〔2020年〕8月28日,安倍晋三首相が突然の辞意を表明した。原因は持病の潰瘍性大腸炎。お気の毒だと思うし,快癒を願うが,それはそれとして安倍首相の7年8カ月の発言を振り返っておき……〔ともかく,原発に関係するつぎの段落を紹介しておく〕。
ここでは,IOC総会での “アンダーコントロール” 発言が問題となる。
さて,この〔第2次政権の〕7年8カ月の間,安倍首相はどのような言葉を残していたのだろうか?〔原発関係からのみひとつ紹介しよう〕
この「処理された水」の実体は,本当は「核・汚染水」である本質をなにも変えられないまま,有害な「各種の核種」を完全に除去できないまま,太平洋に「薄めれば問題あるまい」という勝手ないいぶんでもって,最近,ぶちまけはじめた。また,トリチウムが完全に無害だという俗説は,なんら科学的な言説になっていない。その専門家にいわしめれば,悪質な宣伝に過ぎない。
『文春オンライン』のこの記事での指摘・批判されている点は,さらにつぎの※-7で関連する題材をとりあげ,具体的に紹介してみたい。こちらからは,2006年の国会において放たれた「安倍晋三という首相」のデタラメ一途の発言がよく確認できる。
なかんずく,現時点になってもまだ,前段のごとき「2030年のベースロード電源として〔主要なあるいは重要な〕原発の比率を22~20%」といったごとき想定は,いまとなっては「砂上の楼閣」どころか,原発を病因とした麻薬中毒患者の幻覚症状に似た発想であった。いってみれば,そこから発生した戯れ言:狂言としか形容できなかった。
※-7「2006年12月13日『参議院における吉井英勝議員と安倍首相の原発事故防止関連の質疑応答』」
ここに登場する吉井英勝議員(日本共産党)は,京都大学工学部原子核工学科卒の国会議員である。福島第1原発が事故が発生する5年前に,このやりとりが国会内で交わされていた。当時の自民党政権時代において,もっと真剣に対策をとっていれば,「3・11」の原発事故は防げた可能性が高い。
以下にその質疑応答を引用する。
このように安倍晋三総理大臣(当時,第1次安倍政権)は,こと,原発問題に関していえば「万死に値する」「世襲政治屋」でしかありなかった,それも国会におけるその正式の発言が記録されていた。 とりわけ,この「木で鼻をくくった」ごとき答弁は傲岸不遜そのものであった。
ちなみに,『日本経済新聞』の2019年12月29日「社説」は,東電福島第1原発事故においては「時間切れ迫る『処理水』の処分」という論題をかかげていた。けれども,そのころにおいても当然,事故現場における地下流水などの汚染水の問題が,まもとには解決できる見通しはもてていなかった。
つまり,2011年「3・11」原発事故のその後は,廃炉工程につなげられるような事態の進展は,実質的に,現在までなにも展望できていなかった。
補注)その汚染水(処理水)の問題について現在の自民党政府は,太平洋沿岸に排出(放出)することを決めた。福島県沿岸の漁業従事者に対する態度も不遜・高慢の一辺倒であった。そのやり方で核・汚染水の問題も始末をつけようとしている。
被災民の立場を切り捨てた政府の方針変更(変節)は,結局「国民の立場」よりも「原子力ムラ住民」の利害しか考慮しない専断によって,いいかえれば,原発政策の歴史的な大失敗から派生した害悪のひとつを,ひたすら糊塗して済まそうとする態度を意味した。
※-8 原発が商売にならねば,さっさとおさらばする「経済界の現金さ」
したがって,原発事業が儲けにはなりえない商売になったという「冷厳なる事実」に直面させられた日本企業の側では,たとえば,原発事業そのものには直接かかわりをもたない三井物産社長・安永竜夫が,エネルギー産業に関した「自社の儲け筋の話題」を,つぎのように語っていた。これは,記者の質問「低炭素化の潮流で事業見直しも必要では」に答えての文句であった。
「当社の保有する発電容量の比率は再生エネが16%だ。2030年にこれを30%まで高め,石炭火力を置きかえていく。資産の入れ替えはつねに検討している。再生エネはインドで太陽光,台湾で洋上風力を手がけている。液化天然ガス(LNG)は生産地を広げ,グローバルに取引をしていく」。
いまでも,あいもかわらず「2030年のベースロード電源の比率を原発22~20%」という表看板を出した状態のまま,これを引き下ろせないでいる「日本政府・経済産業省・資源エネルギー庁の時代錯誤」は,原発事業の「非経済性,反営利性の問題」をしらない「無知さ加減」を暴露するばかりでなく,地球環境に与える甚大なその悪影響さえ,無視・黙認しようとする構えであった。
それでも,原発体制を維持する強い動機となれば,あとは核兵器保有(自国での製造)にかける期待しか残らない。
なかんずく,中西宏明は原発はもう儲からないから「止めた」といっていたに過ぎなかった。国民反対云々は,あくまでも後知恵的についでに追加してみた「原発よ,サラバ!」のための理屈(かっこう)づけに過ぎない。現に,原発事業で金儲けを追求していた時期の日立の企業行動が “どうであったか” を思いだしておけばいい。
補注)「プーチンのロシア」によるウクライナ侵略戦争が開始された直後は,日本の庶民のなかで原発容認をする意見が4割台,その反対の意見も4割台となり,ほぼ拮抗した状況になっていた。
もっとも,庶民の原発認識においていかほどにまで,その本質的な問題が理解されていたかという論点はさて置き,仮にそうだ(庶民が原発を容認する意見が多数派だ)としたら,財界側の人士はなんというか。すなわち,原発が儲からなくても製造・販売する気があるか,とまで聞いておく価値があったはずである。
要するに中西裕章は,日本経団連の代表として「金儲けにならない原発事業は捨てる」といっていた。すなわち,資本制企業の本性・利害・立場を正直にかつ当然に吐露したのである。この点は「3・11」の災害発生や原発事故などに関するもろもろのことがらとは,ある意味で全然 “別世界における話法” を披瀝していたといえる。
最後に,以上の議論については「日本公害史の勉強」が,原発の討論にためには並行してなされる必要を感じると付言し,本日の記述を終わりにしたい。
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